彼の旅とは?奈良県立美術館「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」

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彼の旅とは?奈良県立美術館「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」

彼の旅とは?奈良県立美術館「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」

更新日:2019/05/21 12:59

いずみ ゆかのプロフィール写真 いずみ ゆか ライター
『旅する版画家』と呼ばれるヨルク・シュマイサー。実は、奈良と深い縁がある版画家です。奈良県立美術館では、2012年の逝去後、初の本格的な回顧展「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」を2019年6月2日まで開催中。シュマイサーは、1942年、ポメラニア(現・ポーランド)生まれ。ドイツと京都で学んだ後、オーストラリアを拠点に制作活動を行い、世界各地を旅しました。彼の旅とは?そして彼の奈良とは?
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“旅する版画家”ヨルク・シュマイサーと奈良

“旅する版画家”ヨルク・シュマイサーと奈良

写真:いずみ ゆか

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1942年、ポメラニア(現・ポーランド)で生まれたヨルク・シュマイサー。ハンブルク造形美術大学、京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)で学び、オーストラリアのキャンベラを拠点に制作活動を行った銅版画家です。欧米やアジア、そして中東の発掘調査や南極調査にも参加し、世界各地を旅したことから“旅する版画家”と呼ばれています。

※写真は、2002年東大寺でスケッチをしているヨルク・シュマイサー(撮影:中塚康)

“旅する版画家”ヨルク・シュマイサーと奈良

写真:いずみ ゆか

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本展来会の開催地・奈良は、妻であるシュマイサー・敬子さんの故郷。シュマイサーは、奈良の寺社建築に親しみ、多くの作品を残しています。また、奈良県高取町の版画工房「車木工房」で銅版画技術指導を行うなど、奈良は、彼の人生に深く関わりのあった地でした。

他にも、活動拠点であったオーストラリアのキャンベラ市と奈良市が姉妹友好都市という繋がりもあります。

本展担当の深谷聡学芸員は、「この展覧会がひとつの旅になるように」と企画。ヨルク・シュマイサーの作品や人生を通じて、世界を、そして奈良を旅してみましょう。

●『奈良、東大寺』(1998年/個人蔵)

敬子夫人が持参したヨルクさんのスケッチブック

敬子夫人が持参したヨルクさんのスケッチブック

写真:いずみ ゆか

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夫を「ヨルクさん」と呼んでいた敬子夫人。奈良の西ノ京エリアにご実家があり、特に唐招提寺が大好きで、早朝にスケッチをして帰ってくるのが日課だったのだとか。

これらのスケッチをもとに1977年に『奈良のスケッチ』を制作。また、1998年に大作の『奈良、東大寺』や連作『奈良拾遺』を制作しました。

2002年には「東大寺大仏開眼1250年慶讃大法要」で、東大寺より散華のデザイン依頼を受けます。この時、東大寺でスケッチするシュマイサーを撮影した中塚康氏の写真(1枚目の写真)に写っているスケッチブックについて、こんな逸話があります。

「どこにあるのだろうと、ずっと気になっていたスケッチブックがひょこっと出てきました。ヨルクさんが今回の展覧会にあわせてくれたのではと思います。きっと何かの縁なのでは」と敬子さん。

このスケッチブックは、散華とともに本展で展示されています。本展ならではの見所と言えるので、お見逃しなく。

※写真は、第3展示室に展示されている2002年「東大寺大仏開眼1250年慶讃大法要」で、東大寺から依頼を受け制作された散華デザイン。

『長い旅になりますように 冒険と教えにあふれますように』

『長い旅になりますように 冒険と教えにあふれますように』

写真:いずみ ゆか

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初期から晩年まで、代表作を網羅した約185作品は、5つのテーマで展示されています。
T「変化へのまなざし」
U「旅」
V「日記と小さなもの」
W「連作 変化を追う」
X「変化を創る」

本展のキーワードは、「旅」と「変化」。これは、シュマイサー作品に通底しています。
「変化」の代表作としてあげられる『彼女は老いていく』(1967−68/個人蔵)は、5点の連作。基本になっている版を造り変えていくことで、“彼女”の姿は徐々に老いていき、背景や私達に与えるイメージも変化していきます。

『長い旅になりますように 冒険と教えにあふれますように』

写真:いずみ ゆか

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会場には、『長い旅になりますように 冒険と教えにあふれますように』という言葉が掲げられています。ギリシアの詩人の言葉ですが、“旅する版画家”シュマイサーが特に気に入っていた言葉。

本展は、まさにこの言葉のとおり、彼の作品と人生を通じ、私達が新たな学びや冒険を味わうような構成。各展示室で彼の「旅」を追体験してみましょう。

中でも、縁が深い日本を描いた作品は印象的です。木版画を学ぶため、京都に留学したシュマイサーですが、木版画を教えるコースが無かったため、日本の職人たちと交流し技術を身に付けました。英訳の『古事記』を読み、博物館で土偶や銅鏡のスケッチを重ね、作品に表現しています。

『長い旅になりますように 冒険と教えにあふれますように』

写真:いずみ ゆか

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シュマイサーが愛した奈良。12点の連作である『奈良拾遺』(1998年)では、私達がよく知る寺社建築の意匠が描かれています。深谷学芸員は、実際に現地を歩いて描かれたものを確認したのだとか。唐招提寺金堂の鴟尾(しび)や薬師寺の回廊にある獅子など、本展観覧後、実際に奈良を歩いて探してみるのも一興かもしれません。

ちなみに、写真右にある拓本風の作品は、奈良市のマンホールの蓋です。

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シュマイサー作品の特徴「日記」「色」「卓越した技法」

シュマイサー作品の特徴「日記」「色」「卓越した技法」

写真:いずみ ゆか

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シュマイサー作品は、画面の中に文字が登場する点が特徴。これは、日常の小さな気付きや日々感じた日記が英語やドイツ語で書き込まれています。銅版画作品なので、文字をあえて逆に彫り、作品に加えているという手の込みようです。

●『日記と貝』(1978年/個人蔵)

シュマイサー作品の特徴「日記」「色」「卓越した技法」

写真:いずみ ゆか

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もう一つの特徴は、「オレンジオーカー(朱)」と「ブルーブラック(墨・万年筆のインク色)」の二色。この二色の対比や濃淡が作品の奥行に繋がっています。

●右『ニューヨーク』(1981)、左『カンポ広場、シエナ』(1983)

シュマイサー作品の特徴「日記」「色」「卓越した技法」

写真:いずみ ゆか

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その卓越した版画技法が注目を集めるシュマイサー作品。自身のイメージを思い通りに表現するために技術が必要と考えていました。代表作『変化』シリーズ3組(連作)は、本展が初めての同時展示。版を変えたり、摺りを変えたりと版画ならでは手法を駆使し、作品ごとのイメージが目まぐるしく変わります。

「Winter came early this year」南極そしてオーストラリア

「Winter came early this year」南極そしてオーストラリア

写真:いずみ ゆか

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元々は、建築物や貝殻やつぼみなどの物が対象であったシュマイサー作品。オーストラリアのシリーズ制作から、自然描写が豊かになり、南極調査に参加してからの作品は、更にスケールが大きくなります。

南極の氷山が姿を変える様子は、「ブルーブラック」の濃淡のみで水墨画の様に表現しています。

「Winter came early this year」南極そしてオーストラリア

写真:いずみ ゆか

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シュマイサーは、版画技法にドローイングや手彩色を加えることで、版画でありながら唯一無二の作品になる「ユニーク・ステート」を制作。晩年、オーストラリア南東部・ローズデールの別荘で、最後の連作『イルパラ海岸のかけら』を仕上げました。

「Winter came early this year」南極そしてオーストラリア

写真:いずみ ゆか

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「Winter came early this year」は、ヨルク・シュマイサー辞世の句(オーストラリアの冬は6月〜9月)。シュマイサーは、2012年6月1日にオーストラリアで亡くなりました。彼の人生、彼の旅とはどのようなものだったのでしょうか?

本展の開催期間は奇しくも、6月2日(逝去日翌日)まで。これを機に、奈良を愛した異国の版画家の目で奈良をみつめる旅にでませんか?

●『イルパラ海岸のかけら』より『珊瑚のかけら』(2010-11/個人蔵)

●5月26日(日)14時〜15時30分には、主任学芸員・深谷聡氏による美術講座「シュマイサーと奈良」が開催(会場:レクチャールーム/定員80名)。また、5月18日(土)、6月1日(土)にギャラリートークも行われる(各日14時〜)

●ギャラリーにて、連携展示「奈良市とキャンベラ 交流の軌跡〜未来へ」開催中(観覧無料)

「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」の基本情報

会場:奈良県立美術館
住所:奈良市登大路町10-6
開催期間:2019年4月13日(土)〜6月2日(日)
9時〜17時(入館は16時30分まで)月曜日休館
観覧料:800円(一般)大・高生600円、中小生(400円)
アクセス:近鉄奈良駅から徒歩約5分

2019年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2019/04/13 訪問

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