高尾山で木の上に咲くラン「セッコク」の花を探そう!

高尾山で木の上に咲くラン「セッコク」の花を探そう!

更新日:2020/05/02 18:18

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
野山に咲く自生ランは、山野草ファンの間でも一際人気の高い植物です。胡蝶蘭のような華やかさはなくとも、日陰に咲く不思議な形の花々には強く惹かれるものがあります。そんな自生ランの中でも一際不思議な生え方をするのがセッコク。なんと樹木の上に根を張って白い花を咲かせます。そんな奇妙なラン「セッコク」が、毎年初夏の高尾山で観察できるのです。同時期の高尾山の動植物や風景の魅力と一緒にご紹介いたします。

緑深まる真夏を控えた、潤いたっぷりの高尾山を歩く

緑深まる真夏を控えた、潤いたっぷりの高尾山を歩く

写真:鷹野 圭

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高尾山の山頂を目指すにあたり、ルートは大まかに分けると2つあります。1つは、ケーブルカーのある高尾山口駅から登ること。もう1つは、別の登山口からハイキングコースに入ること。上の写真は俗に「裏高尾」と呼ばれる山々から高尾山山頂を目指すルート上。高尾山口駅から登るルートよりも自然度が高く、よりナチュラルな雰囲気を体感しながら山歩きを楽しめます。山野草や昆虫などとの出合いも多いことでしょう。

毎年多くの登山客が通るルートであるため、道中にはベンチや東屋、食事もできる茶屋などが設けられています。道もそれほど急ではないため、初心者の方でも安心して楽しめるはずです。

緑深まる真夏を控えた、潤いたっぷりの高尾山を歩く

写真:鷹野 圭

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こちらは高尾山山中、4号路の途中にある吊り橋です。深い緑に包まれる谷間に位置しています。このほか高尾山の登山道はいずれも日中でもやや薄暗く、暑さが厳しくなり始める初夏において、貴重な「涼」をもたらしてくれます。

緑深まる真夏を控えた、潤いたっぷりの高尾山を歩く

写真:鷹野 圭

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これは6号路の途中にある沢。水が流れていますがれっきとした登山道で、登山客は飛石などを渡りながら登り下りします。高尾山にある登山道の中でもとりわけ自然度が高く、長いということで、ベテラン層にも人気の高い6号路。沢の途中はもちろん、道中のあちこちで多彩な山野草に出合えます。

後述するセッコクも、この6号路が最も遭遇率が高いはずです。道中の高木などを探してみましょう。

セッコクってどんな花? どこにあるの?

セッコクってどんな花? どこにあるの?

写真:鷹野 圭

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さて、今回の主役であるセッコク。「木の上に生える」とお話しましたが、俄かに信じがたいという方も多いのではないでしょうか。こればかりは図鑑ではなく実際に咲いている姿を見てみないと、本当の意味で実感はできないものと思われます。

写真をご覧ください。山間に聳える数十メートル以上の針葉樹の高木ですが、枝に白いものが付着しているのがわかりますでしょうか? これがすべてセッコクの花。植物をよく知らない方だと、針葉樹そのものの花だと勘違いしてしまうかもしれません。

セッコクってどんな花? どこにあるの?

写真:鷹野 圭

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では、セッコクをクローズアップ!
ごらんの通り、白い花が枝を覆うようにびっしりと咲いているのがわかります。セッコクは「着生ラン」といわれる植物の一種で、土に根を下ろさず、必ず木の上に根を張って花を咲かせます。

「ということは、ヤドリギのように木から水や養分を吸っているんだな」と思うかもしれませんが、そうではありません。セッコクは木の枝に根を張りつつ、空気中の水分(霧など)や雨水から水分を吸収しており、ヤドリギなどの寄生植物とは似て非なるもの。木に負荷をかけないという点が大きな違いです。

雨や霧頼りであるためか、セッコクの生える場所はじめじめしていることが多い模様。近くに小川の流れる6号路でよく見られるのは、その辺りに理由があるのかもしれません。

セッコクってどんな花? どこにあるの?

写真:鷹野 圭

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セッコクをさらにクローズアップ!
上記の通りラン科の植物ということですが、実際花の形も花屋などに並んでいるランとよく似ています。薄暗い森の中で白い花が群生する姿は、妖精を思わせる神秘さと同時に、どこか怪しさも醸し出します。

ただし、この花が咲くのは結構な高木の枝の上。写真のようにはっきりと花の形を観察したいのであれば、スマートフォンのカメラではちょっと厳しいかも? ズームできるデジカメや双眼鏡を持参しましょう。

セッコクと一緒に探してみたい、高尾山の山野草たち

セッコクと一緒に探してみたい、高尾山の山野草たち

写真:鷹野 圭

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セッコクの咲く初夏は、多くの野生の植物が花を咲かせるシーズン。高尾山でも多くの山野草が見頃を迎えるため、ハイキング中も足元へのチェックは欠かせません。

その中でも一風変わった植物といえるのが、このギンリョウソウ。「ユウレイタケ」という俗称もあり、葉緑体がなく真っ白でまるでキノコのように見えますが、れっきとした種子植物です。背丈は低いですが林の中では結構目立つため、割と見つけやすいかも?

実は森の中で暮らす「ゴキブリ」によって種を運ばれるという奇妙な特徴があります。もちろん台所に出るアレではなく、昔から野山に暮らしている野生のゴキブリです。そのため、都心部などではまず見かけない植物。高尾山で見かけたら忘れずに写真を撮っておきましょう!

セッコクと一緒に探してみたい、高尾山の山野草たち

写真:鷹野 圭

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こちらも、緑色の葉をもたない種子植物。サイハイランといい、セッコクと同じランの仲間です。戦国大名が戦の際に使っていた「采配」によく似ていることからこの名前が付きましたが、花をクローズアップしてみると、確かにラン科らしいお洒落な形状をしていることがわかります。セッコクと違って地面から直接生えているので、見つけたら至近距離で観察・撮影できるのも嬉しいところです。

高尾山では散策路の道端に稀に見られますが、数が少ないので出遭えたらラッキー。樹木の下などの日陰を好むので、注意して探してみましょう。

セッコクと一緒に探してみたい、高尾山の山野草たち

写真:鷹野 圭

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こちらはハンショウヅル。園芸植物として人気の高いクレマチスの中まで、同じくつる性の植物です。漢字で書くと「半鐘蔓」。確かに、花が釣り鐘のような形をしていますね。

数は少ないですが、高尾山でも湿った斜面などで観察できることがあります。やや足場の悪いところに生えていますので、観察・撮影の際に無理は禁物。デジカメや双眼鏡も活用しましょう。

初夏の高尾山に現れる美しい昆虫たち

初夏の高尾山に現れる美しい昆虫たち

写真:鷹野 圭

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小川の流れる高尾山では、毎年多くの「ヤゴ」が育ち、夏になると多くのトンボが飛び交います。中でもメタリックカラーが美しく、ひらひらと林間を舞うカワトンボはまるで妖精のようで一際目を惹きます。

写真はミヤマカワトンボ。ミヤマ(深山)ということで主に山岳域に暮らすトンボで、翅はべっこう飴を思わせる褐色をしています。小川の石の上などでよく休憩しているので、探してみてください。

初夏の高尾山に現れる美しい昆虫たち

写真:鷹野 圭

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長距離を旅することで有名なアサギマダラ。ここ高尾山にもよく飛来します。ひらひらと風に乗るようにゆっくりと飛びますが、なかなか止まってくれないので撮影するにはちょっと苦労するかも? 近くに花がありましたら、食事のために止まってくれるのを待ちましょう。

初夏の高尾山に現れる美しい昆虫たち

写真:鷹野 圭

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鈍い金属光沢を放つ小さな甲虫。センチコガネといい、動物のフンを主食としています。食べるものはちょっと下品(?)かもしれませんが、見た目はキラリと美しいもの。この昆虫が暮らしているということは、高尾山には野生の哺乳類(シカやタヌキなど)が暮らしていることを意味しており、自然が豊富であることを私たちに教えてくれます。

ハイキングの一休みに! 高尾山の「味覚」を

ハイキングの一休みに! 高尾山の「味覚」を

写真:鷹野 圭

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高尾山および裏高尾には、山道の所々に茶屋が設けられています。ハイキングの中継地点であり、貴重なお食事処でもあります。山ならではの味覚が楽しめますので、休憩も兼ねて立ち寄っておきたいところ。見晴らしのいい高台に位置していることが多く、景色も楽しめることでしょう。

ハイキングの一休みに! 高尾山の「味覚」を

写真:鷹野 圭

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高尾山や裏高尾の名物として知られるのが「なめこ汁」。茶屋で提供されるなめこは、スーパーなどで見かけるものと違ってちょっと大ぶりで食べ応えがあります。安価でご賞味いただけるなめこ汁のほか、お腹が空いた時にはちょっと奮発して「なめこうどん」はいかがでしょうか?

ハイキングの一休みに! 高尾山の「味覚」を

写真:鷹野 圭

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こちらは「味覚」というには少々語弊があるかもしれませんが、モミジイチゴというキイチゴです。黄色い果実は甘みと酸味があり、食用とされることもしばしば。でも数に限りがありますので、無闇に手は出さずそっと見守ってあげたいところです。

高尾山の基本情報

住所:東京都八王子市高尾町
電話番号:042-664-7872(高尾ビジターセンター)
アクセス:京王線「高尾山口駅」より高尾山(1号路)出入口まで徒歩約5分

2020年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2018/05/20 訪問

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