朝鮮半島における動乱を現代に伝えるソウル市「戦争記念館」

朝鮮半島における動乱を現代に伝えるソウル市「戦争記念館」

更新日:2019/06/13 10:50

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
古代以来、朝鮮半島は数々の動乱に巻き込まれてきました。そして、朝鮮戦争によって決定づけられた南北分断の悲劇は21世紀を迎えた今日もなお続いています。そういった朝鮮半島において繰り返された「戦争」を題材とした博物館がソウル市内にあります。「戦争記念館」です。戦争記念館で朝鮮半島における戦争の悲劇を学んでみてはいかがでしょうか。

繰り返される朝鮮半島の悲劇を学ぶ!ソウル市「戦争記念館」

繰り返される朝鮮半島の悲劇を学ぶ!ソウル市「戦争記念館」

写真:乾口 達司

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「戦争記念館」はソウル特別市にある軍事専門の博物館。1994年、かつて陸軍本部のあった地に開館しました。その名のとおり、古代から近現代にいたるまで、朝鮮半島で繰り返された「戦争」を題材としています。入館は無料。外国人の入館も認められています。

繰り返される朝鮮半島の悲劇を学ぶ!ソウル市「戦争記念館」

写真:乾口 達司

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館内では、百済・新羅・高句麗が争った三国時代以来、朝鮮半島を舞台にして繰り広げられた数々の戦争の歴史が紹介されています。

とりわけ、日本との直接的なかかわりという点では、豊臣秀吉の指示によって日本軍が朝鮮半島へ侵攻した「文禄・慶長の役(ぶんろく・けいちょうのえき)」に言及しないわけにはいきません。韓国側では文禄の役を「壬辰倭乱」、慶長の役を「丁酉倭乱」と呼んでいますが、写真の展示物はその「倭乱」の際、日本軍と戦った朝鮮側の「亀甲船(きっこうせん)」を復元したもの。亀甲船は日本軍を大いに苦しめたといわれています。

繰り返される朝鮮半島の悲劇を学ぶ!ソウル市「戦争記念館」

写真:乾口 達司

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1910年から1945年までの35年間、日本が朝鮮半島を植民地として支配した歴史も私たちは忘れてはなりません。朝鮮総督府の統治下、朝鮮半島ではいわゆる皇民化政策が推し進められ、日本からの独立を目指した「三・一運動」(1919年)が弾圧されるなど、半島に暮らす朝鮮人の多くが苦難の日々を過ごすことになりました。

当然、抗日闘争も各地で起こっています。戦争記念館では、そういった抗日闘争の歴史も紹介されています。

南北分断の悲劇としての朝鮮戦争コーナー

南北分断の悲劇としての朝鮮戦争コーナー

写真:乾口 達司

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第二次世界大戦の終結により、朝鮮半島は日本の植民地支配から解放されます。しかし、アメリカとソビエト連邦の後押しにより、韓国(大韓民国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)がそれぞれ成立。

アメリカとソ連の対立の激化にともなって両国も対立し、1950年6月25日午前4時、半島の主権獲得を目指して、朝鮮民主主義人民共和国の軍隊「朝鮮人民軍」が韓国領内へと侵攻しました。朝鮮戦争です。韓国に駐留していたアメリカ軍主体の国連軍は釜山付近まで追い詰められた後、仁川上陸作戦を契機に反転攻勢に出ますが、今度は中国軍が共和国側として参戦。戦況は一進一退を繰り返し、勝敗がつかないまま、1953年、休戦協定が結ばれました。

朝鮮戦争を紹介したコーナーは2階分の広さがあり、戦争の経緯を時系列に即して学ぶことができます。解説では等身大の人形をジオラマ仕立てで活用しており、日々変化する当時の戦況が詳しく紹介されています。

南北分断の悲劇としての朝鮮戦争コーナー

写真:乾口 達司

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アメリカ軍は空からも朝鮮人民軍を空爆しました。そのときの様子を再現したジオラマも見られます。

南北分断の悲劇としての朝鮮戦争コーナー

写真:乾口 達司

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ガラスの床の下には、当時の戦場の一部が保存されています。銃弾などが散乱している様子が生々しく、朝鮮戦争によって半島がどれほど甚大な被害を受けたか、推察できるでしょう。

展示されている両軍の兵器

展示されている両軍の兵器

写真:乾口 達司

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実際に戦場で活躍した兵器も多数展示されています。韓国軍やアメリカ軍の兵器はもちろん、朝鮮人民軍やソ連軍から接収した兵器も見られます。

展示されている両軍の兵器

写真:乾口 達司

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見逃せないのが、入口の横に設置された戦死者検索機。こういったものを目にすると、朝鮮半島において、戦争は決して遠い過去の出来事ではないことを認識させられます。

展示されている両軍の兵器

写真:乾口 達司

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たくさんある展示品のなかでも、こちらの太極旗に感銘を受ける方も多いのではないでしょうか。同じ民族がいまなお二つの国家によって分断されている状況を踏まえると、「南北統一」という文言が単なるスローガンなどではなく、彼らの切なる思いを表したものであることがうかがえますね。

屋外に展示された兵器の数々

屋外に展示された兵器の数々

写真:乾口 達司

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ご覧の戦車など、屋外にも多数の兵器が展示されています。その多くが朝鮮戦争やベトナム戦争で活躍したものです。

屋外に展示された兵器の数々

写真:乾口 達司

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こちらはミサイルです。

屋外に展示された兵器の数々

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朝鮮戦争以来、アメリカ軍が国内に駐留していることもあり、アメリカ軍の兵器も展示されています。こちらはアメリカ空軍の軍用機です。

屋外のモニュメントの数々

屋外のモニュメントの数々

写真:乾口 達司

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屋外には、兵器のほかにも「戦争」に題材をとったモニュメントも複数建立されています。

とりわけ目をひくのは、こちらの「兄弟の像」。朝鮮戦争のさなか、韓国軍の将校として参戦した兄と朝鮮人民軍側の兵士として参戦した弟とが戦闘のさなかに再会したという実話にもとづいて制作されたもの。まさしく南北分断の悲劇を象徴するモニュメントですね。

屋外のモニュメントの数々

写真:乾口 達司

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そうであるからこそ、正面玄関の前にはめ込まれたこちらのプレートが大きな意味を持ってきます。戦争記念館がまさしく「IF YOU WANT PEACE,REMEMBER WAR」という理念にもとづいて建立されていることがわかります。

いかがでしたか?戦争記念館が韓国においていかに重要な施設であるか、おわかりいただけたでしょうか。戦争記念館を訪れて、朝鮮半島の苦難の道のりをご理解ください。

戦争記念館の基本情報

住所:大韓民国ソウル特別市竜山区竜山洞1街8番地
電話番号:010-82-2-709-3139
アクセス:ソウル交通公社4号線・6号線「三角地駅」より徒歩約5分
入館料:無料
開館時間:午前9時30分〜午後6時
休館日:毎週月曜日(月曜日が連休に含まれる場合は連休の翌日に休館)

2019年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2019/03/29 訪問

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