写真:陽月 よつか
地図を見る横山美術館は名古屋駅から東山線なら3駅・桜通り線なら4駅、名古屋市東区にある陶磁器の美術館。特に国内の現存数が少ない日本の輸出陶磁器を中心に展示している、世界的にも貴重な美術館です。館内には瀬戸焼やオールドノリタケなど美術品としても価値の高く美しい陶磁器たちが目白押し。所蔵品は3000点以上に及び、たっぷりと輸出陶磁器の魅力を味わえます。
写真:陽月 よつか
地図を見るこの横山美術館で、2019年6月1日(土)〜10月31日(木)の間開催されているのが「魅了する 煌めく薩摩」展。パリ万国博覧会で大好評を博して以来、鹿児島のみならず京都や東京・横浜など多くの産地で作られた薩摩焼、「SATSUMA」と呼ばれて世界中で愛された名品たちが約140点登場しています。
写真:陽月 よつか
地図を見る「SATSUMA」の大きな特徴は、何と言っても煌びやかな金彩にあり! 作られてから100年以上経っても色あせない金の輝きは豪華絢爛、華やぐような品格を放っています。そして同時に目をみはらずにはいられないのが、諸外国に日本の技法技術のレベルの高さを見せつけるかのような、装飾や細工の細かさ、意匠や色彩の美しさ。
写真:陽月 よつか
地図を見るまた、日本で作られた陶磁器でありながら、日本と中国のモチーフが混在しているのも特徴。壺の正面には勇ましい武者絵が描かれながら、壺の両サイドには中国風童子が愛らしい笑顔を見せるなど、「えっモチーフ間違えた?」と一瞬驚いてしまう作品も登場します。
これはもともと、西洋ではシノワズリ(中国風の美術様式)が流行っていたため。西洋の作品によくある「想像で描いたために中国風味が混じっている日本」ではなく、日本人が意図した和中混在なのです。
写真:陽月 よつか
地図を見る展示は全て薩摩焼。中でも鹿児島で作られた本家本元の「本薩摩」から、日本各地で薩摩焼生産の中心地として発展した「京薩摩」「東京・横浜薩摩」「加賀薩摩」「長崎薩摩」「名古屋薩摩」など産地別にコーナーが分かれ、薩摩焼の歴史や各地の特徴、様式などを学びながら観てまわることができるようになっています。
貴重な「SATSUMA」の地域ごとの細かな特色を実際に見てとることができるのは、約140点もの里帰り品が一堂に会するこの機会ならでは。金の輝きを重視する独自手法によりさらに金の上品な美しさが際立つ「本薩摩」や、西洋風の色彩と金彩の取り合わせが雅な「京薩摩」など、実際に見比べて趣を楽しむことができるのです。
写真:陽月 よつか
地図を見る特に面白いのが「名古屋薩摩」。鹿児島以外で唯一昭和時代後期までSATSUMAの生産を続けていた名古屋薩摩には、名古屋の上絵付け業で盛んであった「盛上(絵具を立体的に盛り上げる技法)」がふんだんに使われているのが特徴。更に「派手好き」な名古屋人の気質を反映し、なんと絵付けの輪郭に黄色の絵具を盛上げ、鮮やかに仕上げているのです。名古屋の誇る得意技、すごい!
写真:陽月 よつか
地図を見るまた「SATSUMA」の特徴として挙げられるのが、枠で囲んだ中に額装したかのように大きな絵を描く「窓絵」と、その周囲を区画して日本古来の小紋柄を描く「割文様」です。一つの陶磁器の中にいくつもの窓絵が描かれる(例えば壺の表・裏など)こともあり、片側は和風なのに反対側は中国風ということも。ぎっしりと隙間なく描き込まれながら、絵画・文様の区切りをつけることで絵画と文様が調和するのですね。
写真:陽月 よつか
地図を見る「SATSUMA」は薩摩焼から派生した「薩摩様式の焼き物」の総称。実際に鹿児島で作られた薩摩焼「本薩摩」を模倣して作られ始め、鹿児島産の陶器を運んで絵付けだけを施す業態も生まれて発展していったものです。なので「SATSUMA」には産地に関わらず、「丸に十字」の薩摩・島津家の家紋が象徴としてしょっちゅう登場。更には明治維新後・外国向け作品ということで、江戸時代までは民間使用がタブーであった三ツ葉葵の御紋(なんと徳川家の家紋)が絵柄として登場するものも。
写真:陽月 よつか
地図を見る薩摩焼の白色陶器は、薩摩領内でも限られた地域にしか産出しない貴重な白土を用いた「白薩摩」と呼ばれるもの。焼くと表面に細かなヒビ割れができますが、このヒビ割れが細かいほど上質で美しいとされています。もちろん会場に並んでいるのは名品・逸品ばかり! 細かな絵の描かれた素地の、更に細かなヒビ割れの精密さもぜひじっくり見てみて下さいね。
写真:陽月 よつか
地図を見る展示されている陶磁器の絵柄のモチーフは、武者や花魁や僧侶、中国の仙人仙女や獅子など、具体的な場所・人物像をもたない抽象的なものが殆ど。ですが中にはこんな、どこかで見かけたような絵柄のものも…。こちらは歌川広重による有名な浮世絵連作シリーズ「東海道五十三次」から、戸塚と庄野の絵柄を模したもの。金彩の輪郭も雅で優しく、「こんなお皿うちにも欲しい!」って思う方も多いのでは?
写真:陽月 よつか
地図を見るキレイだけどちょっと難しいかも…、そんな風に感じた方はVTRコーナーへどうぞ。展示解説のVTRは約13分、閲覧無料で楽しむことができますよ。展示会場内では文字での説明のみとなる「タタキ」などの成形技術の詳しい解説や、多彩な資料画像など、VTRには貴重な映像がたくさん。またVTRコーナーは同展示室内にあるため、解説を見てすぐに実物を確かめられるのも嬉しいですね。
また会期中の第1、第3土曜日の13:30からはギャラリートーク(学芸員による展示解説)もあり。事前予約不要・無料で参加できるので、来訪予定が合えばぜひおすすめです。(別途入館料が必要)
住所:愛知県名古屋市東区葵一丁目1番21号
電話番号:052-931-0006
アクセス:名古屋市営地下鉄東山線「新栄町」駅(1番出口)徒歩4分
名古屋市営地下鉄桜通線「高岳」駅(3番出口)徒歩4分
開館時間:午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:毎週月曜日(祝・休日の場合開館、翌平日休館)、8月13日〜15日
「魅了する 煌めく薩摩」
開催期間:2019年6月1日(土)〜10月31日(木)
2019年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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