写真:美里 茉奈
地図を見る「迎賓館 赤坂離宮」は、かつては紀州徳川家の江戸中屋敷があった場所に、1909年に東宮御所として誕生。日本で唯一のネオ・バロック様式の西洋宮殿です。1974年から、迎賓館として利用されるようになりました。
迎賓館の建設総指揮を取ったのは、建築家の片山東熊(とうくま)。鹿鳴館をはじめ明治政府関連の建物の設計に携わった、ジョサイア・コンドルの一番弟子にあたります。
「迎賓館 赤坂離宮」は、欧米の建築様式を取り入れた西洋宮殿ですが、随所に日本らしいモチーフが盛り込まれており、見事な融合を遂げています。その世界をより楽しむためには、音声ガイドを借りて解説付きで観覧するのがおすすめです。
写真:美里 茉奈
地図を見る海外からの賓客を最初に迎える場所である正面玄関。中に入ることはできませんので、ガラス越しに見ることになります。
床の市松模様はイタリア産の大理石「ビアンコ・カララ」、そして黒い部分は宮城県産の「玄昌石」を組み合わせています。
写真には写っていませんが、ドアの手前の床にも注目!パリのオペラ座のモザイクも手掛けたモザイク作家、ジャン・ドメニコ・ファッキーナの床モザイクを見ることができます。
写真:美里 茉奈
地図を見る大ホールに面した朝日の間の入口。1974(昭和49)年から迎賓館として使用するにあたり、改修工事が行われました。
その際に指揮を執ったのは、建築家・村野藤吾(むらの とうご)。豪華な世界観を、きりりと引き締めるかのようにかけられた一対の絵画は、洋画家・小磯良平の「音楽」と「絵画」です。
写真:美里 茉奈
地図を見る迎賓館で現在公開されている部屋は4つ。そのうちの「朝日の間」は、最も格式の高い部屋。表敬訪問や首脳会談が行われる場所です。
2019年4月に約2年にわたる改修を終えて一般公開されました。2019年9月10日までは特別展示期間となっており、改修前に使用していた緞通の上を歩くことができます。
通常展示では養生シートの上を歩くのですが、実際に使用された緞通を踏みしめることができるのは、特別展だけの特典です。
写真:美里 茉奈
地図を見る朝日の間の象徴である天井画は、迎賓館の創建当初である100年以上前に、フランスの工房で描かれたもの。今回の改修では、28名もの修復家の手により、25ヶ月の月日をかけて蘇りました。
朝日を背にした女神オーロラが、左手に月桂樹を、右手には白馬が引くチャリオットの手綱を握っています。
この絵の中で注目したいのは、周りに描かれた手すりに咲く小さな花。実はこれは桜なのです。
写真:美里 茉奈
地図を見るその桜の花びらがひらひらと舞い落ちて、この緞通のモチーフになっているという意匠。特別展の期間のみ踏みしめることのできるかつての緞通と、写真左の新しい緞通を比較すると、色褪せてはいますが、その柔らかくしなやかな風合いは健在です。
47種類の糸を使い分け、その色調の変化で桜の花びらを表現した緞通は、日本の最高技術の粋を集めた手織りのもの。
今回の改修に伴い、1271名の職人が10006時間という途方もない手間と時間をかけて作り上げました。
新しい緞通については、実際に触ることができる織地見本が展示されています。ぜひ他の間の緞通と比較して、その違いを確かめてみてくださいね。
写真:美里 茉奈
地図を見る実際に賓客を迎えた際に使用されるテーブルと椅子のセット。金色に輝いているのは、金糸で刺繍をしているためです。こちらは見るだけですが、どのような座り心地なのかとても気になりますね。
壁に飾られたグリーンの紋ビロード織は、和服の帯の製作にも使われる技法で作られ、朝日の間のカーテンとしても採用されています。
こちらも全行程2年をかけて、専門家たちが総力を結集して製作。緞通と同じく実物展示があるので、その手触りを確かめることができます。
写真:美里 茉奈
地図を見る朝日の間の壁面の絵画やレリーフは、特に興味深いものが多いのでぜひ注目してみてください。例えばこちらは、一見獅子のエンブレムですが、その中には皇室を象徴する桐の紋章が。
写真:美里 茉奈
地図を見るこちらは日本の鎧や兜、鎖をくわえたライオンの頭が描かれており、陸軍を象徴したものと言われています。そして周りを模る金の細工は藤の花。
館内には一見西洋風の中に、日本のものを取り入れて装飾を施しているものがいくつもあるので、それらを発見するのも、迎賓館の見学の楽しみポイントです。
写真:美里 茉奈
地図を見る歓迎式典や晩餐会の招待客に食前酒をふるまったり、演奏会が開かれる「羽衣(はごろも)の間」です。
オーケストラボックスも備えたこちらの広間では、舞踏会やオペラ鑑賞を想定したのでしょうか。高貴な方々が臨席するイメージが見えるようです。
天上のシャンデリアをよく見ると、仮面舞踏会(マスカレード)をモチーフにした飾りや鈴がついています。羽衣の間で舞踏会が行われたら、この鈴が、開け放った窓から入るそよ風や、舞踏の足の響きに合わせて鳴るという素敵な仕掛けなのです。
写真:美里 茉奈
地図を見る「羽衣の間」の由来は、謡曲「羽衣」から来ています。天女がその身にまとったという羽衣ですが、天井画をはじめとして天女の姿は見えません。
というのも、この場に集う淑女の皆さまが、地上に降り立った「天女」という趣向だから。そんな由来を聞いたら、迎賓館を訪れる際は、ピンと背筋を伸ばして、レディとして優雅に振舞いたくなりますね。
写真:美里 茉奈
地図を見る羽衣の間には、今回の「朝日の間 特別展示」に伴い、エラール社のピアノが展示されています。かつてベートーヴェンやショパンも愛用したという、フランスを代表するエラール社のピアノ。その工房は20世紀半ばに閉鎖され、今となっては幻のピアノとなっています。
こちらは菊花紋章の装飾が施された、皇室のために作られたピアノです。「朝日の間 特別展示」の期間中だけの展示なので、ぜひこの美しいピアノにも会いに来てくださいね。
写真:美里 茉奈
地図を見る晩餐会が行われる「花鳥の間」。落ち着いた雰囲気を漂わせているのは、内装に木曽産のシオジを使っているからかもしれません。
森のような空間をイメージした花鳥の間には、四季の草花や鳥が、30枚もの七宝焼きで飾られています。そして頭上には、花鳥だけでなく、狩りで仕留めた鹿やイノシシなどのジビエを描いたフランス人画家による油彩画24枚が飾られているのです。
実はシャンデリアの中にスピーカーが内蔵されており、音楽やスピーチが頭上から聞こえるという面白い仕掛けが。実際の晩餐会に使用されるテーブルセットも展示されています。
写真:美里 茉奈
地図を見る「彩鸞(さいらん)の間」は、賓客が案内された際の控えの間です。第二客室としてもつかわれており、「朝日の間」が改修中は、こちらで首脳会談や条約調印などが行われていました。10枚の合わせ鏡により、空間に奥行きを感じさせる演出がほどこされています。
19世紀初めのフランスを中心に、ヨーロッパで流行したというアンピール様式を取り入れた「彩鸞の間」。鎧兜、剣などの戦いのモチーフが随所にみられるほか、野戦テントをイメージしたという天井は天幕を模して、そのシワまでが描かれているというこだわりもみられます。
写真:美里 茉奈
地図を見る正面からとはまた違った風情を漂わせる主庭側からの本館の風景です。
迎賓館赤坂離宮は、「美は細部に宿る」を体現した、日本の建築・美術・工芸の技術の粋を集めた結晶のような場所。見るたびに新しい発見がありますよ。
この、都心にある異空間ともいえる場所をぜひ訪問してみませんか?
住所:東京都港区元赤坂2-1-1
電話番号:03-5728-7788
アクセス:JR中央線・総武線・東京メトロ丸ノ内線・南北線「四ッ谷」駅下車 徒歩約7分
※迎賓館には駐車場及び駐輪場がありませんので、公共交通機関をご利用ください。
開催期間:2019年7月4日(木)から同年9月10日(火)
(開催期間が短縮される場合あり)※毎週水曜日は休館日
公開時間:10時〜17時(最終受付16時、庭園のみ参観は16時30分まで受付)
※8月10日(土)から12日(月)は10時〜20時(最終受付19時、庭園のみ参観は19時30分まで受付)
参観料:(朝日の間特別展の料金)
【本館・庭園】
一般2,000円、大学生1,500円、中高生500円、小学生以下 無料
※団体料金の適用はありません。
【和風別館・本館・庭園】
一般2,500円、大学生2,000円、中高生700円※小学生以下はご参観いただけません。
【庭園】 一般300円、大学生以下 無料
※現金のみ
※大学生、中高生は、生徒手帳、学生証をお持ちください。
※有効期間内の身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳又は被爆者健康手帳をお持ちの方と付添人(1名まで)は参観料金が免除となります。
ライトアップ:8月10日(土)から12日(月)は、日没後(19時目処)、ライトアップを実施します。
※日没後は主庭への入場ができません。
※入場時に金属探知器による身体検査及び手荷物検査を実施
※館内の写真撮影不可(本記事は特別に許可を得て撮影しています)
※外観の写真撮影は可ですが、業務用大型カメラ及び三脚・脚立・自撮棒等の撮影補助機材の持込は不可
2019年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2025/2/7更新)
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