白亜の鎧に紅葉の装飾!南アルプスの貴公子「甲斐駒ヶ岳」の初秋

白亜の鎧に紅葉の装飾!南アルプスの貴公子「甲斐駒ヶ岳」の初秋

更新日:2019/08/01 15:15

土庄 雄平のプロフィール写真 土庄 雄平 山岳自転車旅ライター・フォトグラファー
緯度の高い北日本、標高の高い山岳地帯から始まる日本の紅葉。本格的な秋にはまだ早い9月下旬〜10月上旬に、日本の屋根「アルプス」を訪れると、そこには下界からは想像できないほど色彩で溢れた美しい世界が広がります。その中でも、群を抜いて素晴らしいのが今回紹介する「甲斐駒ヶ岳」でしょう。"南アルプスの貴公子"と呼ばれる白亜のダイナミックな山容と鮮やかな紅葉が織りなすコントラストは、感動必至の絶景!

南アルプス林道バスで楽々標高2000mへ

南アルプス林道バスで楽々標高2000mへ

写真:土庄 雄平

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標高2000m後半が一般的な標高となる日本アルプスへ足を運ぶためには、かなり労力を要すると思われがちですが、実はロープウェイやバスを利用することで楽にアプローチできる山も多くあり、今回の「甲斐駒ヶ岳」もその一つ!長野県伊那市の「仙流荘」から「南アルプス林道バス」に乗れば、1時間弱で登山口のある北沢峠(標高約2000m)へ到着できます。

仙流荘までは車以外にバスでアクセスする方法があります。東京から直通バス(詳細は関連MEMO参照)があるので関東方面から計画を練る人は嬉しいところ。また、大阪・京都・名古屋などの都市からアクセスする場合は、伊那市バスターミナルまで電車orバスで来て、仙流荘行きのバスに乗り換えとなります。

南アルプス林道バスで楽々標高2000mへ

写真:土庄 雄平

それでは1時間弱の南アルプス林道バス旅の開始です!実は、9割の区間が舗装され、アルプスを貫く舗装峠では最高標高となっているこの道ですが、現在は一般車通行禁止となっており、このバスでしか入ることができません。しかしながら、雄大な南アルプスの懐を縫い、圧倒的なスケールの山容が広がる名道!きっと登山前から鼓動が高鳴るに違いないでしょう。

雄大な尾根に灯る紅葉!双児山から眺める初秋の甲斐駒ヶ岳

雄大な尾根に灯る紅葉!双児山から眺める初秋の甲斐駒ヶ岳

写真:土庄 雄平

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甲斐駒ヶ岳(標高は約2970m)まで、北沢峠から片道5q弱・片道歩行時間は6時間と本格的な登山ルートです。歩きやすい靴、動きやすい格好、必要に応じた登山装備(ウインドブレーカー、ストック等)を揃え、十分な水分・食糧を持参して、万全な体調で臨みましょう。なお参考ではありますが、富士山の5合目から山頂へ登るルートの8割程の距離と標高差です。

雄大な尾根に灯る紅葉!双児山から眺める初秋の甲斐駒ヶ岳

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さて、北沢峠から甲斐駒ヶ岳へ行くルートの中で最もメジャーなのが、途中に双児山を経由する縦走ルート。このルートの良さは、緩やかに標高が上がっていき、道が整っているので初心者でも登りやすいことと、その眺望の素晴らしさにあります。そして、特筆すべき時期こそ、初秋の紅葉の時期!甲斐駒ヶ岳を遠望し、双児山とその先の駒津峰に至る道沿いに紅葉が色づく景色は神秘的かつ圧巻です。

雄大な尾根に灯る紅葉!双児山から眺める初秋の甲斐駒ヶ岳

写真:土庄 雄平

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そして、鞍部を過ぎて駒津峰へ登り返すと、次第に「甲斐駒ヶ岳」が近づいてきます。近づけば近づくほど、まるで白亜の鎧を纏ったような、騎士を彷彿とさせる山容が格好良く、見惚れてしまうでしょう。そして、鋭くシャープな岩稜と紅葉とのコントラストが何とも言えない美しさ!また、雲遊ぶ佇まいも味があります。初秋こそ“南アルプスの貴公子”が一番お洒落に着飾るシーズンなのです。

山頂周辺は圧倒的スケールの紅葉の連続!

山頂周辺は圧倒的スケールの紅葉の連続!

写真:土庄 雄平

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さぁ駒津峰まで来れば、山頂まではあと少し!それでは核心部へと入って行きましょう。まず甲斐駒ヶ岳の白亜の岩稜までは、細い岩場を縦走していきます。慣れていない方は、少し高度感を怖いと感じるかもしれませんが、特に危険な箇所はなくゆっくり行けば大丈夫!

甲斐駒ヶ岳の山頂直下まで来ると、木々がなくなり岩場を直登するコース・岩場を迂回する巻道の二つが現れます。前者は中級者以上、後者は初心者向けとなります。駒津峰から甲斐駒ヶ岳山頂までは、往復2時間半前後です。

山頂周辺は圧倒的スケールの紅葉の連続!

写真:土庄 雄平

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そんなアドベンチャーな後半も、実は見応えのある紅葉の連続!特に、甲斐駒ヶ岳の岩稜部へと入ってすぐ、来た道を振り返ってみてください。するとそこには、駒津峰から縦走する尾根が、まるで燃え盛るように鮮やかに色づく情景が広がります。これが言葉にならない美しさ!右上にある「六方石」も良いアクセントとなっていますね。

山頂周辺は圧倒的スケールの紅葉の連続!

写真:土庄 雄平

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そして岩稜帯へと入ると木々がなくなるため、紅葉の楽しみ方が変わります。先程まで同じ目線にあった紅葉を、今度は上から俯瞰して眺めるようになるのです。特に山頂部から駒津峰を見渡せば、縦走路の両サイドからせめぎ合う大スケールの紅葉、そしてアルプスならではの山岳美を思う存分に味わうことができます。

登山口から山頂まで2時間半という決して楽ではない行程ですが、きっとこの景色を見れば、この上ない達成感と充実感を感じられることでしょう。駒津峰方向以外でも、鋸岳や北岳、鳳凰三山を見渡すパノラマは圧巻です!

南アルプスと紅葉のコラボレーションは感動必至の美しさ

南アルプスと紅葉のコラボレーションは感動必至の美しさ

写真:土庄 雄平

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これまででも十二分に素晴らしい「甲斐駒ヶ岳」の紅葉の紅葉ですが、実はまだ終わりではありません。なんと周囲に座す南アルプスの峰々と紅葉を一挙に眺めることができる点が醍醐味と言えるでしょう。特に目玉は、"南アルプスの貴公子"と対になる存在として、たおやかで登山者を包み込むような山容から"南アルプスの女王"と呼ばれる仙丈ヶ岳(標高3032m)と紅葉の駒津峰〜六方石の縦走路のコラボレーション!

錦絵のごとき鮮やかな紅葉と、どっしりとした山容。迫力と奥行きがありながら繊細。言葉にもならない美しい山岳世界へ、思わずうっとりと見惚れてしまうこと間違いなし!

南アルプスと紅葉のコラボレーションは感動必至の美しさ

写真:土庄 雄平

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また、岩稜帯の途中からは、南アルプス北部のトレードマークの一つ"オベリスク"を擁す「鳳凰三山」と、紅葉に彩られた摩利支天が目に飛び込んできます。鮮やかで迫力ある山肌から顔を覗かせる雄大な山容は見応え抜群!白亜の石灰岩とオレンジの紅葉が織りなすコントラストが際立ちますね。

南アルプスと紅葉のコラボレーションは感動必至の美しさ

写真:土庄 雄平

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なお少し難易度が上がりますが、下山だけ仙酔峠を経由するルートに変更すれば、南アルプス天然水のCMロケ地として宇多田ヒカルさんも登っていた水の山「栗沢山(標高2714m)」も眺めることができます。標高が甲斐駒ヶ岳よりやや低いので、まだ色づき始めになりますが、緑からオレンジへのグラデーションが美しく、どっしりと佇む母なる山容に、どこか心落ち着くことでしょう。

なお北沢峠から伊那市・仙流荘まで戻る最終バスは16:00発です!始発で北沢峠へアクセスすれば、登山時間は9時間以上確保できます。くれぐれもバスに乗り遅れないよう、帰りのペース配分は気をつけてくださいね。

"南アルプスの貴公子"初秋は白亜とオレンジの華麗な佇まい

"南アルプスの貴公子"初秋は白亜とオレンジの華麗な佇まい

写真:土庄 雄平

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日本百名山を選定した登山家・深田久弥も絶賛したと言われる「甲斐駒ヶ岳」の見応えのある山容。それを最も楽しめる旬の時期こそ、9月下旬から10月上旬の初秋でしょう!なぜなら、その迫力がありながら端正な佇まいに、紅葉の鮮やかな彩りが添えられることで、"南アルプスの貴公子"たる格好良さと美しさが最上級に際立つシーズンだから!決して楽ではないですが、だからこそ見られた時の感動はこの上ないアルプスの紅葉。ぜひ自分の目で見に行ってみてくださいね。

甲斐駒ヶ岳の基本情報

住所:長野県伊那市長谷黒河内
アクセス:南アルプス林道バス(仙流荘→北沢峠)で約55分、北沢峠から甲斐駒ヶ岳山頂まで往復4時間半〜6時間。双児山経由と仙酔峠経由の2ルートあり。

2019年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2018/09/30 訪問

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