知られざる名僧・徳一菩薩とは?福島県立博物館「興福寺と会津」展

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知られざる名僧・徳一菩薩とは?福島県立博物館「興福寺と会津」展

知られざる名僧・徳一菩薩とは?福島県立博物館「興福寺と会津」展

更新日:2019/08/07 16:29

いずみ ゆかのプロフィール写真 いずみ ゆか ライター

この夏、東北で注目を集めている福島県立博物館の福島復興祈念展「興福寺と会津 徳一がつないだ西と東」。その人気は、7月28日(前期終了)時点で来場者が2万人を突破、3万人に迫る勢いです。全国的な知名度は低いのですが、徳一は、約1200年前に奈良から会津へ赴き、仏都会津の礎を築いた法相宗の僧侶。なぜ、奈良の興福寺と会津が一緒に展覧会を?と思った方へ、名僧・徳一を通じた奈良と会津の絆をご紹介します。

8月18日まで!なぜ奈良と会津?テーマは「復興への祈り」

8月18日まで!なぜ奈良と会津?テーマは「復興への祈り」

写真:いずみ ゆか

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福島民友新聞社をはじめ、各メディアに取り上げられ、注目度が高い福島県立博物館の「興福寺と会津 徳一がつないだ西と東」。7月30日から後期展示が始まりました。

福島県立博物館の小林めぐみ学芸員は、「この展覧会は、単なる仏教美術展では無く、徳一を通じて奈良(興福寺)と会津(磐梯町)が積み重ねてきた交流から、東日本大震災による福島復興への希望として、(興福寺の協力により、多川俊映貫首が)皆さんの祈りの受け皿になるよう企画されました」と語ります。
(写真は学芸員展示解説の様子)

※本展は撮影不可

8月18日まで!なぜ奈良と会津?テーマは「復興への祈り」

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徳一は、平安初期に活躍した法相宗の僧侶で、奈良の東大寺や興福寺で仏教を学びました。興福寺で修円という学僧から「法相唯識」の教義を学んだとされます。その徳一のご縁で、興福寺は長年、徳一創建の慧日寺(えにちじ)の跡※があり、伽藍復興を目指す福島県磐梯町と交流を重ねてきました。

また、東日本大震災後、興福寺の僧侶たちは、津波や原発事故の被災地域を訪ね、復興への祈りを捧げてきたことでも知られています。(興福寺だけでなく、同じ法相宗の薬師寺や宗派を超え、多くの僧侶が福島へ赴き、祈りを捧げている)

「復興への祈り」が込められている本展。興福寺もまた、平家の南都焼き討ちや度重なる火災で幾度も伽藍を失い、復興を成し遂げてきた歴史があります。展示には「必ず復興できる」との想いが込められているのです。令和元年8月18日までの開催なので、気になる方は急いで。

※明治の神仏分離令で廃寺になり、その後、寺号が復活する。平安時代初期からの寺院遺構は、慧日寺跡として国史跡に指定

知られざる名僧・徳一菩薩とは?

知られざる名僧・徳一菩薩とは?

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福島や茨城在住の方には馴染みがある徳一は、弘法大師・空海や伝教大師・最澄と同時代に活躍。その生涯は謎に満ちているのですが、20歳頃に奈良から東国(茨城や福島)へ赴き、各地で寺院を建立しました。多くの人々に仏の教えを広め、救済した事から「徳一菩薩」「徳一大師」と呼ばれ、今日まで親しまれています。また、最澄と論争し(三一権実諍論)、空海が書簡で「陸州徳一菩薩」と身を賭して東国に仏教を広めた事を敬い、記した事でも知られています。

●『徳一坐像』平安時代作 徳一創建の勝常寺(福島県河沼郡湯川村)所蔵

知られざる名僧・徳一菩薩とは?

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特に大同元年(806)、会津地方に甚大な被害をもたらした磐梯山大噴火は、徳一のターニングポイントになりました。噴火の翌年(大同2年)、磐梯山の麓に慧日寺を、他にも会津に多くの寺院を建立し(大同2年徳一創建の寺院が多い)、人々を救ったとされます。そして、この事により、会津の仏教文化は花開き、今日の「仏都会津」へと繋がっていくのです。

創建時の慧日寺は、磐梯山の山岳信仰(修験道)と結びつき、巨大伽藍を有していた事が発掘調査から分かっています。本展で是非、中世(室町時代)の慧日寺の伽藍の様子が分かる『慧日寺絵図』(絹本著色/慧日寺所蔵・福島県立博物館寄託)をご覧下さい。主要な堂塔や様々な神がまつられた社が描かれ、神仏習合の様子や白い雪をかぶった霊山・磐梯山が分かります。

福島県では初の公開!多川貫首自ら選んだ「興福寺の寺宝」

福島県では初の公開!多川貫首自ら選んだ「興福寺の寺宝」

写真:いずみ ゆか

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本展は、「興福寺の寺宝」と「徳一と会津」の二部構成。第一部で特筆すべきは、展示品を興福寺・多川貫首自ら選んだことです。多川貫首は、東日本大震災からの復興へ想いを込め、(平家の南都焼き討ちによる)鎌倉復興期の寺宝や徳一が生きた時代の仏像を選びました。

本展最初の展示である『地蔵菩薩立像』(平安時代作)は、僧形という一番民に近い姿で衆生を救う仏様です。

「どちらの新聞か覚えていませんが、震災後、津波被災地で雪が舞い散る中、祈りを捧げるお坊様の写真が一面に掲載され、すごく印象的で。このお地蔵様の姿は、多川貫首をはじめとする興福寺のお坊様の姿と重なります。同じように奈良から福島支援のために被災地を訪れ、祈りを捧げた多くのお坊様の姿であり、更には、仏教で人々を救った徳一の姿でもある思います」と小林学芸員。

福島県では初の公開!多川貫首自ら選んだ「興福寺の寺宝」

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福島県で興福寺の寺宝が公開されるのは初めてのこと。第一部の注目展示は、本展のポスターに起用された興福寺・東金堂の四天王像のうちの2躯『多聞天』と『広目天』。どちらも徳一が生きた平安時代作のものです。

●写真は、北方の『多聞天』

福島県では初の公開!多川貫首自ら選んだ「興福寺の寺宝」

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興福寺の東金堂は5度の火災にあっていますが、四天王像の表面の彩色は、当時のままのもの。頭部から邪鬼まで、ほとんどがヒノキの一木造りで一部に奈良時代に主流であった乾漆技法が用いられています。

修学旅行時に興福寺で見たという方も多いと思いますが、本展は、ぐるっと回って間近で、普段見る事ができない後姿も拝観できる貴重な機会でもあります。

●写真は西方の『広目天』

第二部「徳一と会津」

第二部「徳一と会津」

写真:いずみ ゆか

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第二部の注目は、徳一創建の慧日寺に伝来する『白銅三鈷杵』。密教の法具である三鈷杵ですが、空海・最澄が密教をもたらすよりも古い奈良時代のものです。同形のものが正倉院と二荒山神社にも伝わっており、かつて福島民友新聞社の記事で「みちのくの正倉院」として紹介されました。徳一に関して、現存する唯一の遺品とも言われています。

第二部「徳一と会津」

写真:いずみ ゆか

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会津に仏教を広め、今も地域の人々に親しまれている徳一菩薩。その縁の寺院から貴重な仏像が本展のために特別貸し出しされています。最初にご紹介した『徳一坐像』がある勝常寺(福島県湯川村)からは、平安時代作の四天王像『増長天』(南)と『持国天』(東)も。興福寺の『多聞天』と『広目天』を併せると東西南北の四天王が揃うという、「奈良と会津の共演」を見る事ができるのです。

第二部「徳一と会津」

写真:いずみ ゆか

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他にも、明光寺(会津若松市)の『十一面観音菩薩立像』は、実際には徳一の時代まで遡ることはできませんが、「徳一が自ら彫った」と伝わる(『新編会津風土記』より)像。それほどまでに、会津で徳一が親しまれ、敬われてきた事が分かります。

仏都会津をエリアで体験しよう

仏都会津をエリアで体験しよう

写真:いずみ ゆか

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本展は、「興福寺(奈良)と会津」「徳一菩薩」だけでなく、会津の仏教文化への理解を深める展示もあります。慧日寺に伝えられた四個の印章(福島県立博物館寄託)にご注目を。四人の天皇(平城天皇・嵯峨天皇・淳和天皇・白川天皇)から下賜されたもので、徳一創建時の慧日寺が中央から重要視されていた事が分かります。

仏都会津をエリアで体験しよう

写真:いずみ ゆか

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本展最大の魅力は、徳一ゆかりの寺院と連携し、仏都会津をエリアとして楽しむ提案がなされているところ。是非、磐梯山を身近に感じ、ゆかりの寺院を巡って、会津の信仰を実際に感じてみて下さい。
ショートトリップの方は、本展とセットで史跡慧日寺跡と慧日寺資料館を訪れるのがお勧め。半券を提示すれば、100円引き、もしくはオリジナルクリアファイルのどちらかを選択できます。そして、より深く徳一菩薩を知る事ができるのです。

他にも、会津で二番目に古い寺院であり、徳一が再興した法用寺(会津美里町)では、本展開催期間にあわせ三重塔を特別公開中なので訪れてみては?

「奈良と会津」、この二つの仏都の交流は、徳一という一人の僧侶が絆となり、これからも長きに渡り続いていく事でしょう。

※本展は美術品保護の観点から、展示室を暗くしております。掲載写真は読みやすさを考慮し、明るさを調整したものであることをご了承下さい

福島県立博物館「興福寺と会津 徳一がつないだ西と東」基本情報

会場:福島県立博物館 企画展示室・部門展示室
住所:福島県会津若松市城東町1-25
開催期間:2019年7月6日(土)〜8月18日(日)9:30〜17:00(入場は16:30まで)
料金:一般・大学生1300円/高校生800円/中学生以下無料
アクセス:JR会津若松駅より車(タクシー)で約10分

2019年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2019/07/20−2019/08/20 訪問

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