最上川水系の置賜野川(おきたまのがわ)に建設された長井ダム。「ながい百秋湖」と呼ばれるこのダム湖の上流部に「三淵(みふち)」と呼ばれる深い渓谷があります。この三淵渓谷は、川幅3〜5メートルの峡谷の両側に、高さ50mを超える断崖絶壁が250メートルにもわたって続くダイナミックなもの。
水神様が生まれたとされるこの神聖な場所に陸上からアクセスする手段はなく、かつては秘境中の秘境だったのですが、数年前からここにアクセスするボートツーリングがはじまったことにより、知る人ぞ知る屈指の絶景として少しずつ注目を浴びはじめています。
三淵渓谷ボートツーリングは例年5月から11月の週末を中心に運航されています。2019年は1日4便で所要1時間。参加協力金として大人2000円、小学生以下1500円が必要です。
また、1便あたり定員24名のため、事前予約がおすすめですが、当日でも空きがあれば乗船することができます。
三淵渓谷があるのは山形県長井市。長井は山形県の南部にある盆地の町で、最上川舟運の港町として栄えた商工業都市でした。
三淵渓谷はこの長井の中心部から10数キロほど山あいに入った場所にあります。ボート乗り場までは車でアクセスできますが、車がない場合はシーズン中の週末に運行される市内循環バスでのアクセスとなります。
写真:風祭 哲哉
地図を見る循環バスが出るのは長井の玄関口として観光情報の発信や特産物の紹介などを行う観光交流センター「道の駅かわのみなと長井」。長井市街地の最上川畔にあり、山形鉄道フラワー長井線の長井駅から徒歩15分ほどの場所にあります。
循環バスは道の駅を出発すると長井駅を経由してボートツーリングの受付が行われる「野川まなび館」に立ち寄り、ボート乗り場まで運行しているため、実質的には三淵渓谷ボートツーリングへのアクセスバスと言ってもいいでしょう。2019年は1日3本の運行ですが、このバスを利用するとボートツーリングの午後の便、3便目と4便目に乗ることができます。
写真:風祭 哲哉
地図を見る循環バス「まわるん」は以前はジャンボタクシータイプでしたが、現在はレトロなボンネットタイプとなっていて、内装もゴージャス。これで運賃はなんと100円。ただし定員は9名なので、シーズン中はお早めにご乗車ください。
写真:風祭 哲哉
地図を見る三淵渓谷ボートツーリングの受付は途中の「野川まなび館」で行われます。野川まなび館は乗船場所の手前7.5キロの場所にありますが、乗船の方は必ず各便の出航30分前にここで整理券を受け取り、乗り場で乗船チケットに引き換えることになります。循環バスもここで10分間停車しますのでその間に受付することができます。
写真:風祭 哲哉
地図を見る野川まなび館は、長井ダム水源地域へのアクセス拠点であると同時に自然や環境、水に関する体験学習ができる環境学習施設。館内には展示室もありますので、ボートツーリング後にゆっくりと見学してもいいかもしれません。
提供元:特定非営利活動法人 最上川リバーツーリズムネットワーク
https://manabikan.wixsite.com/boatまた来館記念にぜひ手に入れたいのが「ながい水カード」。これは長井の水に関わる風景とその解説が書かれたカードで、来館者に1枚無料で配布されています。
写真:風祭 哲哉
地図を見る三淵渓谷ボートツーリング乗船場所は「合地沢湖面広場」と呼ばれる場所。到着するとライフジャケットが配られ、いよいよボートへの乗船となります。
ボートは1艘6名定員で合計4艘。各ボートにはそれぞれ1名の船員さんが乗っています。乗船中の解説はテープで行われますが、船員さんに質問をすればいろいろと話を聞くこともできますよ。
ボートは電動で静かに湖の上を進みます。ここはダム湖のため、風がなければ揺れることはありません。もちろんラフティングのように激しい流れもなく、船酔いも心配ありません。
むしろ風のない日は湖全体が水鏡となって素晴らしい景色が楽しめます。
写真:風祭 哲哉
地図を見るボート乗り場を出発して20分、引き込まれるようにダム湖の本流に
分け入ると次第に川幅が狭くなり森が迫ってきます。空からの明かりが木々に覆われ少しずつ影が多くなり始めると、やがて目の前に断崖絶壁に挟まれた狭い水路が現れます。
そう、それが三淵渓谷の入口です。
三淵渓谷ボートツーリングの正式名称は「三淵渓谷通り抜け参拝」。
ボートツーリングに「参拝」という文字が入っているのは、この地にまつわる伝説に由来があるのです。
三淵渓谷には「卯の花姫伝説」という若く美しい姫の悲恋の物語が残されています。 それは今から1000年ほど前、当時この地を守っていた安倍貞任の娘であった卯の花姫が、東北地方に攻め入って来た敵の源義家に恋をし、義家の甘言につられて父を戦死に追い込んでしまいます。そして自らも大軍に追われる身となり、進退窮まってこの三淵に身を投げ、龍神となり、三淵の水神様となったのだと言われています。
そのためこのボートツーリングは神聖なる場所への参拝でもあるため、三淵渓谷に入る前には、船上の全員が手を合わせて拝みます。
写真:風祭 哲哉
地図を見る三淵渓谷の中に入ると、これまでとは空気が変わります。天井を深く覆い茂った樹々や両側から迫る断崖から放たれる「冷気」は「霊気」と言い換えてもいいかもしれません。もしも現世に異界というものがあるのだとすれば、ここはそれにかなり近い場所でしょう。
船の上から見上げる断崖絶壁は、九州を代表するパワースポット、宮崎の高千穂峡のボートからの眺めにも似ています。全体的なスケールは高千穂の方が大きいかもしれませんが、三淵渓谷の方が峡谷が狭隘な分、パワーと迫力は強烈かもしれません。
三淵渓谷の一番狭い部分を通るのはほんの数分。船はゆっくりと三淵渓谷を抜けると、その先で折り返して乗船場へと戻ります。
それでは最後に動画をご覧ください。雨の日の映像ですが、水神様の棲む三淵渓谷に入ったとたん、まるで卯の花姫の悲恋の涙か、と思わせるような激しい降り方になっているのもご注目ください。
動画:風祭 哲哉
地図を見る最上川リバーツーリズムネットワーク(野川まなび館内)
住所:山形県長井市平山2743-4
電話:0238-87-0605(8:30〜17:15)
アクセス:「長井駅」から循環バス(土日祝)またはタクシー/長井市街から7キロ
※ボート乗り場は野川まなび館から7.5キロ先となります
2019年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイト、または野川まなび館までご確認ください。
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