写真:小々石 曲允子
地図を見るそれではまずは、内宮にある所管社の中でも最も知られた存在であると思われる「瀧祭神(たきまつりのかみ)」からご紹介してまいりましょう。
瀧祭神は五十鈴川の御手洗場近くの杜の中に鎮座し、板垣の内側に御神体の石がお祀りされるという原始的な石神(磐座)信仰の形態を今でも残す神様です。元々は、対岸となる五十鈴川の西側の川辺に鎮座していたとも言われています。
内宮の御祭神である天照大御神にお願い事を取り次いでくれる「おとりつぎさん」であるとの民間信仰が広まり、内宮で最初に参拝すべき神様としてご存知の方も多いかと思いますが、この瀧祭神が実は、神宮が造営された時には既にこの地に鎮座していたとの説もある相当に古い神様であることはあまり知られていません。
古代より、瀧祭神は氾濫が多かったとされる五十鈴川の守り神であったとされています。瀧祭神の「瀧」という字には龍の字が入っていますが、五十鈴川の龍神(水神)を鎮めるために祀られているという説もあります。
社殿を持たない磐座祭祀という形式から見てもその歴史の古さは想像に難くありませんが、いずれにせよ、所管社にも関わらず別宮に準じて祭典が奉仕されるという特殊な扱いを受けていることも、神宮創祀以前からの土着神としての歴史、その起源の古さを物語っているように思われます。
写真:小々石 曲允子
地図を見るまた、伊勢には8月の朔日(八朔)もしくは夏の土用の丑の日に五十鈴川で水を汲んで瀧祭神にお供えし、それを家に持ち帰って神棚に供えると一年間無病息災で過ごせるという古くからの言い伝え・習わしがあります。
これらの日に行かれると、地元の方が、汲んだお水を短い時間だけこちらの神前にお供えしてお参りしている光景を目にすることがありますよ。
写真:小々石 曲允子
地図を見るさて、社殿を持たない原初的な石神(磐座)祭祀の痕跡が残る所管社ということでは「四至神(みやのめぐりのかみ)」も同様です。
四至神は、神宮の神域の四方の境界を守護する神。内宮と外宮に1箇所ずつ鎮座する神様ですが、元々はそれそれの境内に数十箇所以上も存在し、それらが統合されて1箇所にまとめられたのが現在の四至神とされています。
なお、内宮の四至神の鎮座地は神楽殿・五丈殿のやや東方、忌火屋殿の程近くの白石がお祀りされた場所です。背後の石積みの上には木が群生し、小さな林のような状態になっています。
写真:小々石 曲允子
地図を見る四至神も最近ではその存在を知られるようになってきましたが、実は内宮の四至神の鎮座地には、江戸時代まで神様の依り代としての一本の桜の木=「桜大刀自神(さくらおおとじのかみ)」が祀られていたことはまだ広く知られていません。
かつてはこの場所は桜宮(さくらのみや)と呼ばれており、内宮第一の摂社であり桜の名所としても知られる朝熊神社(朝熊山)の遥拝所であったとも言われています。
さらには、桜大刀自神は木華開耶姫神(このはなさくやひめのかみ)の別名ともされていますので、現在、内宮の宮域内に鎮座する木華開耶姫神をお祀りした所管社・子安神社との関連も推測されるのですが、詳細はわかっていません。
現在はこちらには桜の御神木は存在せず、白石の石神つまり四至神のみがお祀りされた神域となっていますが、そういった歴史があったことを踏まえた上でお参りすることで、参拝する際の思いもまた違ったものになるのではないでしょうか。
四至神の背後が小さな森(杜)のような状態になっていることも、このような歴史を経ていることを知るとまた違った雰囲気に見えてきませんか?
また、四至神の前で手かざしをされている方をたまに見かけますが、神様が常時お祀りされている場所ですので、手を合わせてお参りしてくださいね!
写真:小々石 曲允子
地図を見る最後に、所管社ではありませんが、御贄調舎(みにえちょうしゃ)についてもご案内しておきましょう。
御贄調舎は、神嘗祭などで由貴大御饌(ゆきのおおみけ)という天照大御神に食事を捧げる儀式が執り行われる際、御饌都神(みけつかみ=食物神)である外宮の豊受大御神をここにお迎えし、アワビを調理する儀式が行われる場所です。
写真:小々石 曲允子
地図を見る御正宮に上がる石段の向かい側にある板葺の建物がそれで、一見これまでにご紹介してきたような磐座祭祀とは無関係に思われるのですが、実は御贄調舎の奥の方に石積みで囲われた小さな磐座があり、儀式の際にはこの磐座に外宮の豊受大御神が降臨すると言われています。
例えば、京都・下鴨神社の葵の庭の「水ごしらえ場」にも水の神、末刀社の御祭神が降臨するとされる磐座がありますが、このように特定の神事に際して神様が寄り付く依り代となるという点において、この御贄調舎の磐座もまさにそれと同じような役割を担った神座と言えるものでしょう。
なお、由貴大御饌の儀式を御贄調舎で行うようになったのは近代以降のことで、江戸時代までは五十鈴川の中州で執り行われていました。瀧祭神の存在もそうですが、五十鈴川が古くからいかにこの地で神聖視されてきたかがわかりますね。
写真:小々石 曲允子
地図を見るさて、瀧祭神、四至神、御贄調舎と、原初の神祀りの痕跡が色濃く残る伊勢神宮内宮の所管社を中心にご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
伊勢神宮というと、皇室の祖先神である天照大御神をお祀りする国内随一の格式を誇る神社。しかし実は、天照大御神を戴く今のような神社としての形式が整う以前からの歴史があり、その遥か古の時代の原始的な神祀りの形態を今でも残し続けている場所があるということも知った上で参拝していただくことで、より伊勢参拝が豊かで深みのあるものになるのではないかと思います(ちなみに、瀧祭神・四至神の創祀年代は不詳とされています。)
なお、文中でも少しだけ触れましたが、外宮にも、四至神をはじめとして内宮と同じように石神(磐座)祭祀がなされている場所や所管社がいくつかありますので、ご興味がある方はお参りされる際にチェックしてみてくださいね。
この記事の他、神宮内宮における「朔日(ついたち)参り」の特別感や楽しみ方を紹介した記事もLINEトラベルjpの旅行ガイドに掲載されていますので、そちらも是非参拝のプラン策定にお役立てください(下記「関連MEMO」のリンクを参照)!
住所:三重県伊勢市宇治館町1
参拝時間:5:00〜17:00(10〜12月)5:00〜18:00(1月〜4月・9月)
5:00〜19:00(5〜8月)
アクセス : JR・近鉄伊勢市駅もしくは近鉄宇治山田駅から「内宮前」行きバスで約15分「内宮前」下車
2019年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2025/2/10更新)
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