写真:藤 華酉
地図を見るスィグルダは国立公園の一部に含まれる渓谷に位置し、緑と坂の多い町です。ラトビアのスイスとも呼ばれ、観光客は勿論の事、国内でも大自然を味わう場所として愛されています。
それだけ豊かな場所となれば、誰もが支配したいと願うもの。今でこそ穏やかな片田舎となったスィグルダですが、11世紀には町が築かれ、その後もドイツやスウェーデンと言った様々な国家の侵略を受けながら今に至ります。
多くの人々に愛され、憎まれもしたスィグルダには、妖精の国から抜け出して来たかのような逸話がいくつも残されています。
写真:藤 華酉
地図を見るトゥライダ、とは11世紀にスィグルダを建設した先住民、リーヴ族の言葉で「神の庭」、もしくは「悲しみの庭」を意味します。随分相反する意味のようですが、件のリーヴ族は13世紀にカトリックのアルベルト僧正率いる軍により城を破壊され、この地を追われてしまいますから、どちらの意味も相応しいのかも知れません。
現存するトゥライダ城は、赤レンガの美しいゴシック様式の城です。
トゥライダ城を含むエリアは「トゥライダ博物館保護区」として囲われており、一周する事で、スィグルダの長い歴史を垣間見る事が出来ます。
写真:藤 華酉
地図を見るトゥライダ博物館保護区の中でも人気のスポットが、「トゥライダの薔薇」こと、トゥライダ・ルァザの墓。16世紀に実在した女性、Majaさんのお墓です。
トゥライダの薔薇は、恋人への愛と純潔を貫いた美女の物語。心に決めた人のある身ながら、卑劣な罠により、洞窟へと誘い出されたMaja嬢。彼女は咄嗟の機転を利かせ、自らの命を犠牲にする事で身が穢される事を防いだのです。この悲劇は、Maja嬢の死因を巡って裁判が起きた為、実存する記録に残る逸話です。今でもMaja嬢のお墓には花が絶えず、新婚さんに必須のスポットなっています。
<基本情報>
住所:Turaidas iela 10, Sigulda, Siguldas pilsēta
電話番号:+371-67-971-402
開館時間:10時00分〜19時00分
入場料:6ユーロ
写真:藤 華酉
地図を見る町中の壁にめちゃくちゃに描かれた落書きを見て、腹を立てるのは万国共通、多くの国では犯罪行為です。しかし、それが500年前の落書きとなると、些か荘厳な気持ちになるのではないでしょうか。
グートゥマニャ洞穴は、ガウヤ川沿いにぽっかりと空く深さ14mの洞穴です。遥か昔から、この壁穴には、相合傘を落書きすると、恋が叶う―――なんていう伝説が残されています。何しろ庶民のパリピの噂話、今となってはいつから、どのような噂話が流れていたのかも定かではありません。しかし、確かであるのは、グートゥマニャ洞穴には古くは16世紀の恋人たちの寄せ書きが刻まれていると言う事だけです。
壁一面を埋め尽くす「落書き」「寄せ書き」は圧巻の一言。もちろん、つい最近来たばかりのカップルの寄せ書きも視界に入ってしまいます。歴史を愛する知識人として、過去の愛を眺めるに留めるか?それとも、現代を生きるパリピとして自分の名前も落書きしてしまうのか? 監視員すらも居ないグートゥマニャ洞穴は、訪れる者の理性と倫理を深く問いかけて来るでしょう。
<基本情報>
住所:Turaidas iela 4, Sigulda, Siguldas pilsēta
24時間営業
写真:藤 華酉
地図を見るグートゥマニャ洞穴から、山道を登る事20分弱。森が急に開けたならば、そこがクリムルダ城址です。僅かに石積みが残るばかりで、がらんとしたクリムルダ城址は、14世紀にリーガの大司教によって建てられ、17世紀には破壊しつくされた城址です。
対岸を臨む油断のない立地、堅牢な造りのクリムルダ城址は、スィグルダを巡る多くの争いで大活躍しました。しかしその重要さから、大北方戦争で焼かれた後には、再建される事無く今に至ります。
写真:藤 華酉
地図を見る今や森で朽ちる時を待つばかりのクリムルダ城址が多くの人々の目に留まるのは、丁度ここから対岸へ渡るロープウェイが発着する為。
眼下にガウヤ川を眺めながら向かうかつての敵城、スィグルダ城址。戦時にこんなロープウエイが出来上がっていたなら、史跡になるのはどちらだっただろう?と歴史散歩を楽しめます。
<基本情報>
住所:Krimuldas iela 2, Sigulda, Siguldas pilsēta
24時間営業
写真:藤 華酉
地図を見るとはいえロープウェイを下りた先、スィグルダ城址も廃城。トゥライダ城も多くの部分を破壊されているとなれば、この地域の争いの激しさを実感できるに違いありません。
スィグルダ城は、ラトビア/ドイツ系の人々で構成されていた、帯剣騎士団によって建築されました。教会ばかりラトビアを観光した後では意外に思うばかりですが、実はラトビア地域は、ヨーロッパの中で最後の最後までキリスト教に改宗しなかった人々の国です。
トゥライダ城のオリジナル、リーヴ人などは今となっては失われた独自の自然宗教を持ち、森の神や不運の女神などを信仰していたと伝えられています。
そこを何とかキリスト教に改宗してやろう、と攻めて来たのが北方十字軍。首都リーガで芽生えつつある信仰を更に押し進めてやろう、とここに城を建てたのが、帯剣騎士団です。
写真:藤 華酉
地図を見るしかし、同じキリスト教徒と言えども、異教徒が去れば仲良くできないのも世の定め。スィグルダ城は、大司教の城トゥライダとも、クリムルダ城とも別の支配層にあり、しかしこちらも大北方戦争で廃墟となってしまいます。
ほぼ外壁しか残されていないスィグルダ城址ですが、かつての堅牢さを伺い知る事が出来ます。今でも、優れた音響効果を評価され、夏のイベント会場としても人気です。
<基本情報>
住所:Pils iela 18, Sigulda, Siguldas pilsēta
電話番号:+371-67-971-335
開館時間:9時00分〜20時00分
入場料:2ユーロ
リーガから日帰り旅行にもピッタリの位置のあるスィグルダ。その歴史は、リーガにも負けない程の波乱万丈の物語に満ちています。騎士や僧正が織りなす争いの歴史や、美女の悲恋、今は語らざる庶民のささやかな呟きに至るまで。歴史の風を求めている方に、スィグルダは存分にその過去を語ってくれる筈です。
2019年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
藤 華酉
ドイツ、フランクフルト在住。大学では歯学と宗教学を修めた為、いつ中世ヨーロッパに飛ばされても活躍できる逸材。 訪れた国は30ヵ国以上、時の権力者に城を陥落されて北海道に逃げ延びたご先祖様の無念を晴らす…
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