本宮の石段脇にある樹齢1000年とされる大銀杏は、高さ30m、樹幹7mもある巨樹。時の右大臣・実朝公暗殺の際、刺客の本宮別当・公暁が潜んでいたことから隠れイチョウと呼ばれて愛されてきましたが、平成22(2010)年3月10日、雪まじりの強風により根元から倒伏してしまいました。鎌倉の歴史の生き証人・元祖パワースポットの大銀杏の蘇生を願いつつ、まずは八幡宮に詣でましょう。
【アクセス】
鎌倉駅前の二の鳥居から10分
JR横須賀線・鎌倉駅の鉄路を西に越え、閑静な今小路を北方向に10分ほどあるいたところにあるのが寿福寺。本尊を釈迦如来坐像とし、正治2(1200)年、北条政子が夫の源頼朝を弔うために栄西を招き開山の師として創建した、鎌倉五山第3位の臨済宗建長寺派の寺院です。
「壽福金剛禅寺」と書かれた石柱の立つ総門をくぐり、優に300mはあろうかと思われる仏殿までの参道は、まさに寂光土へ至る悟りの道。また、昭和41(1966)年、史跡として国の文化財に登録された境内は、木々や苔の瑞々しい森閑の極みで、じっくりと自分自身に向き合うには、うってつけの場所です。
さて、この境内裏の広大な墓域には30穴からなるやぐら群があり、北面のやぐらには政子と実朝の墓とされる五輪塔が置かれています。
悲劇の右大臣・実朝は、幼くして将軍職に祭り上げられましたが、世を覆う武家社会の中で必死に自己を全うしようとして海外渡航まで企てるも挫折、やがて暗殺されてしまいます。その彼の眠るやぐらは、牡丹・唐草が彩色されていたことから、えかきやぐらとも呼ばれています。
ここに立つと、数百年を経た今も実朝の呻吟の声が聴こえてくるようです。
寿福寺
所在地:鎌倉市扇ケ谷1-17-7
鎌倉駅西口より徒歩10分
臨済宗建長寺派の海蔵寺は、鎌倉幕府滅亡のあと足利氏満の命により、応永元(1333)年、上杉氏定が源翁禅師を開山に招き、再建された古刹です。この寺のある扇ケ谷の北のあたりは、古都の谷あいでももっとも風光明媚な地で、瀟洒な庭園は心字池を中心に自然物の「乞はんに従う」ままに作庭されており、じっくりと過ごしてほしいところ。
本尊は泣き薬師。胎内に背後の山から夜な夜な聞こえてくる泣き声に導かれ、源翁禅師が掘り当てた薬師如来の仏面を蔵しています。ここがパワースポットである所以は、薬師三尊像の胸中に収められ61年目に一度、ご開帳されてきたというこの秘仏にあります。
扇ケ谷の地を明暗で分けるとすれば、さきほどの寿福寺は暗の部分にあたるのに対し、こちらは明の部分を代表する場所と言えましょう。
建長5(1253)年、千葉の安房から鎌倉入りした日蓮は、この松葉が谷に来てはじめて草庵を開きました。やや下って文応元(1260)年、ここで『立正安国論』を著わし前執権時頼に建白したため、度重なる法難を受けたことはご存じの方も多いと思います。
この寺は、弟子の日朗が同年、その草庵の岩穴のそばに安国論窟寺を建てたことにはじまるとされます。本尊は、南無久遠実成本師釈迦牟尼仏。
この地のパワースポットは、寺の左手、額田記念病院の裏手にある駐車場奥にひっそり残された化生窟。名越を越えて鎌倉入りした日蓮が最初の一夜を過ごし、この谷戸にいた物の怪を調伏したとされる場所です。訪ねてみると、意外に深く、その奥中央部分の壁は、あきらかに石組で封じられており、不気味です。
この岩穴脇の御硯水は、日蓮が硯の水や生活水として用いた井戸とされます(現在飲むことはできません)。ただ、安国論寺境内にある法窟と同一視してこの場所を訪ねる人はきわめてまれで、パワースポット本来の鬼気迫る雰囲気を取り戻しつつあります。
源頼朝は、建久9(1199)年、12月27日相模川にかけた橋の完成祝いに出かけた帰りに稲村ケ崎で落馬、それが原因で翌、建久10年1月13日に亡くなり、大倉法華堂(現白旗神社)に葬られたとされます。しかし、鎌倉幕府の公式記録である『吾妻鏡』にはその記事は抜け落ちており、その死は謎に包まれています。現在の墓は白旗神社のすぐ脇の階段を上ったところにあり、江戸時代に島津氏が建てた五層の石塔です。鶴岡八幡宮のやや北東の山裾にあり、今なお鎌倉の町を見つめ続けています。
頼朝公墓
所在地:鎌倉市西御門
鎌倉駅より徒歩15分
柔らかい凝灰岩の岩山から成る鎌倉の谷戸は、彫りやすいことからいたるところにやぐらと呼ばれる岩窟が刻まれています。
今回ご紹介した頼朝の墓といい、実朝のそれも一見何の変哲もない石塔でしかありませんし、胎内薬師もイチョウの巨樹にしても、単なる物でしかありません。ところが、それだけではすませられない人々の思いが、伝承を生み、それぞれの事物にオーラを帯びさせるのです。パワースポットとは、正史で記録された権力側のフィクションとは正反対の、民衆の側からのもうひとつのフィクションによって無限に生み出されるものといえましょう。
鎌倉はそんな意味でも、とても興味のつきないところ。是非、足しげく訪れて自分なりの鎌倉の心に触れてみてください。
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(2023/11/28更新)
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