王妃の愛した海の離宮〜ブルガリア「ドヴォレツァ」

王妃の愛した海の離宮〜ブルガリア「ドヴォレツァ」

更新日:2019/10/26 08:34

たぐち ひろみのプロフィール写真 たぐち ひろみ 大人の旅ソムリエ、魅力あるコスパ旅案内人
ブルガリア北東部、黒海沿岸に「バルチク」という風光明媚なリゾートがある。かつてルーマニア領だったこの町は、ルーマニアの王妃マリア・アレクサンドリナ・ヴィクトリアが晩年を過ごした地としても有名だ。深い緑に隠れるように数々のヴィラが点在する美しい離宮「ドヴォレツァ」。訪れる人を今も魅了しつづけるのには、それなりの理由がある。

黒海沿岸にある珠玉の宮殿

黒海沿岸にある珠玉の宮殿

写真:たぐち ひろみ

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第二次世界大戦前、美貌のルーマニア王妃、マリア・アレクサンドリナ・ヴィクトリア・デ・エディンブルグは、黒海沿岸の町バルチク(Balchik)の離宮でひと夏を過ごした。その際この場所をとても気に入った彼女は、周囲の土地や家屋、ワイナリーなどをあまねく買い取り、本格的な宮殿を建造する。今も残るバルチク宮殿、「ドヴォレツァ(Dvoreca)」がそれだ。

黒海沿岸にある珠玉の宮殿

写真:たぐち ひろみ

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海に臨む高台に広がる森の中に、ぽつりほつりと姿を見せる瀟洒な建物。広く「宮殿(The Palace)」として親しまれるこの場所だが、実は「離宮」または「別荘」と呼んだ方がしっくりくる佇まいだ。

1927年に建設を開始、すべてが完成したのは王妃の亡くなる前年の1937年。この美しい「ドヴォレツァ」で過ごした10年という年月は、忙しい日々を重ねてきた王妃の、自分へのご褒美だったのかもしれない。

黒海沿岸にある珠玉の宮殿

写真:たぐち ひろみ

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その後、1940年にバルチクがブルガリア領となると、新たに「バルチク植物園」が造園される。現在ソフィア大学の所有となっているこの園は、広さが6.5万平米。2000種類以上もの植物や花々が植えられて、訪問者の目を日々楽しませてくれる。

東と西がコラボする美しい建物群

東と西がコラボする美しい建物群

写真:たぐち ひろみ

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この宮殿には、合計で12のヴィラが建ち並んでいる。その築造にあたり、マリア王妃はイタリアから建築士を招へい、地元バルカンの伝統様式とオスマン・トルコ様式を併せて取り入れた優美な建物を数々造り上げた。

写真はその中でも美しさの際立つ2階建ての「ヴィラ・イズブンダ」。当時は映画館、郵便局、そして電報局が入っていた場所だ。

東と西がコラボする美しい建物群

写真:たぐち ひろみ

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こちらは「ヴィラ・スイタ」。もともと側近用の宿舎として使用されていた簡素な平屋の建物で、現在はゲストハウスとして一般に開放されている。宮殿敷地内には、これ以外にも宿泊可能なヴィラが5つ。スイート12室を含め合計41室が提供される。

王妃の居城「静かなる隠れ家」

王妃の居城「静かなる隠れ家」

写真:たぐち ひろみ

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そして、こちらが王妃の住居となっていた宮殿、正式名を「静かなる隠れ家(The Quiet Nest Villa)」という。宮殿にしては意外に質素な建物だが、そこは王妃の住まい、細部にまで上質な造作が施されている。

王妃の居城「静かなる隠れ家」

写真:たぐち ひろみ

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2階にある一番広い部屋は、王妃が日頃多くの時間を費やしたと思われる居室兼寝室。王妃が実際に使用したとされる家具や調度類が今も飾られていて、往時を思い起こさせる役目をはたしている。奥にはベッドも置かれているが、これが殊のほか小さい。マリア王妃は意外に小柄だったようだ。

写真右奥の扉の外は、この建物の唯一宮殿らしい部分、塔へと続いている。細長いらせん階段を上った先には見晴し台があるが、この部分は非公開だ。

王妃の居城「静かなる隠れ家」

写真:たぐち ひろみ

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2階のテラスからは、美しい黒海がはるかに見渡せる。イギリスの王族に生まれ、従兄ジョージ5世(後のイギリス王)との縁談をはねのけて、ルーマニア皇太子(後の王)フェルディナンドに嫁したマリア・アレクサンドリナ・ヴィクトリア。美貌への嫉妬のためか、一時はスキャンダルに巻き込まれ、中傷の的となったことも。

夫が死んだ後は世間から逃れ、ずっとこの宮殿で暮らしていたという。毎日この海を眺めながら、そんなドラマチックな自分の生涯に思いをはせていたのだろうか。

魅力は豊かな緑、そして水

魅力は豊かな緑、そして水

写真:たぐち ひろみ

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「ドヴォレツァ」の庭園はとても立体的だ。平坦な地に設けられた植物園に対し、ヴィラの周囲には、坂あり、段ありと、起伏に富んだ地形が続く。庭園の中ほどには川が流れ、水車がまわり、滝が清冽な水音を響かせる。癒しを求める人にはまさにお誂え向きな公園だ。

この「ドヴォレツァ」は、フランシス・コッポラが映画「胡蝶の夢」でロケを行った舞台でもある。失意の老人がある日突然若返り、超人的な能力を発揮するという奇想天外な物語。このしなやかな宮殿とどう結びいてくるのか、何だか想像がかき立てられる。

ドヴォレツァの基本情報

住所:State Cultural Centre "Dvoreca", Balchik 9600, Region Dobrich, Bulgaria
アクセス:ヴァルナより車で45分
開館時間:夏期 8:00〜20:00、冬期 8:30〜17:00(年中無休)
電話番号:+359 579 76849
入場料:大人 6Lv(約370円)、18才以下 2Lv(約120円)、6歳以下 無料

2019年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

取材協力:ヒストリカル・パーク

掲載内容は執筆時点のものです。 2019/09/06 訪問

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