北海道伊達市有珠地区は地名の通り有珠山に近い海沿いの地域。有珠善光寺は北海道で最も古い歴史をもつ古寺で、平安時代前期の天長年間(824〜833)に慈覚大師円仁(えんにん)が有珠に小宇(屋根で覆った家)に阿弥陀如来像を安置したことが開基といわれています。
江戸時代前期・1613年に松前藩主・松前慶広(よししろ)が有珠を訪れ、現在の有珠地蔵堂(写真)に如来堂を再興。有珠地蔵堂は今の有珠善光寺から約1km離れた所にあります。1804年現在地に移転しました。
なお現在の有珠地蔵堂は1919年に建てられたもので、数回修理が行われた後現在に至ります。境内にお地蔵様が祀られていて、参拝するとご利益があるといわれています。
有珠山の噴火は寺の歴史に大きな影響を与えました。1822年と1853年の噴火では一時八雲町や長万部町へ移転。幸い寺の被害は少なく江戸時代の趣が残ったまま現在に至ります。
1974年には本堂(写真)などが「善光寺跡」として国の指定史跡に指定されたほか、2011年には歴史的資料を収蔵・展示する施設として「善光寺宝物館」が開館。なお宝物館の見学は事前に予約して下さい。ちなみに有珠善光寺の正式名称は「大臼山道場院 善光寺」です。
現在有珠善光寺の建物のうち公開されているのは本堂と客間(写真)。両方とも江戸時代に建設・増築されており、屋根には茅葺(かやぶき)です。周りの植物が彩りを添えており、春は桜、初夏は紫陽花、秋は紅葉できれいな場所です。
<有珠善光寺の基本情報>
住所:北海道伊達市有珠有珠町124番地
電話番号:0142-38-2007
アクセス:JR有珠駅より徒歩25分/JR洞爺駅からタクシーで約10分
有珠善光寺の境内には樹齢200年以上の桜の木が何本もあり、特に有名なのが、大きな石を割りながら成長した「石割桜(写真)」。江戸時代の2代目住職・鸞州(らいしゅう)が植えた桜で、みんなで力を合わせ、石を割るくらいの強い心を持って頑張ろうという気持ちを持って植えたと言われています。
植えた後の有珠山の噴火などにも耐えてきましたが、咲く花が減少したり、幹が古くなってきたので、2001年からボランティアで樹木の医者が石割桜の治療を開始しました。
幹を支える支柱を設置(写真右下)したり、周辺の木々を切って光を石割桜に当てる、根元に以前はなかったお地蔵様を設置して根元を荒らされない対策を実施中です。マナーを守って見て下さい。
本堂・客殿から石割桜にかけて境内の森林には三十三観音が建立。迷いの苦しみから人々を救い、悟りの世界へ導くために観音様が三十三体に姿を変えると説く教えに拠ります。三十三観音を巡ると、有珠山登山と同じご利益があるそうです。全ての観音を巡るのにゆっくり歩いても20分位で回る事が可能なのでぜひ回ってみましょう。
有珠善光寺の隣にある「有珠善光寺自然公園」は花の名所として知られており、特に春の桜が有名(写真)です。公園内の木々は江戸時代の有珠山噴火後に植えられたものが大半ですが、噴火を乗り越えて樹齢200年以上ある木々も。
また公園内には各地に巨石が点在しています。こちらは人工的なものでなく、過去の有珠山の噴火で運ばれてきたもの。巨石に根がまとわりついて生えている木が石割桜以外にもあります。特に地質好きの旅行者はぜひ有珠山や昭和新山と一緒に訪れてみて下さい。
有珠地蔵堂から約200m南側に進み、有珠観光館という旅館の前にあるのが大臼山神社(写真)。創建時期は不明ですが、江戸時代末期には弁天宮と称されてました。1875年に大臼山神社と改称。現在の社殿は1983年に建てられたものです。
境内には1937年に建てられた開村記念碑があり、前年の昭和天皇ご行幸を記念して開拓や有珠山の噴火の歴史が記されています。また社殿の左にある鳥居のすぐ先には「山神尊」があります。なお社務所は少し藩れた国道37号線北側、実行教大宮教会にありますので御朱印を依頼される旅行者は注意して下さい。
山神尊の鳥居をくぐり、約30歩山道を進むとひっそりと巨大なシナの木(写真)があります。巨石にまとわりつくように生えているシナの木から、エネルギーがもらえるというお話が広がり、パワスポとして知られるようになりました。なおシナの木の根元はかなりデコボコしているので、足元には十分注意しましょう。
<大臼山神社の基本情報>
住所:北海道伊達市有珠町39番地
電話番号:0142-38-2235
大臼山神社から約500m南に住宅街を進むと有珠山の噴石で出来た石造りの教会が見えてきます。明治時代に英国から来日したジョン・バチラー夫妻の功績を称えるために建設されたバチラー夫妻記念教会堂(写真)です。バチラーは道央・胆振日高地域の布教だけでなく、聖書のアイヌ語翻訳、アイヌのための教育施設建設など第二次世界大戦前に日英関係が悪化して追われるまで活躍しました。
教会堂は養女のバチラー八重子や地元の信者によって1937年に建てられ、現在もミサなどが行われていますので、通常は建物の外観しか見る事が出来ません。内部見学は管理者の許可が下りた時と教会堂の行事で一般開放される時のみ。なお教会堂や有珠地蔵堂のそばにはバチラー八重子の歌碑があり、現代に伝えています。
<バチラー夫妻記念教会堂の基本情報>
住所:北海道伊達市向有珠町119
電話番号:011-747-7339(札幌キリスト教会)
伊達市有珠には夏に海水浴場となる海岸があります。バチラー夫妻記念教会堂から海岸沿いに約2km進み、未舗装道路になる区間に着くと現れる砂浜は1988年7月17日、地元の北の湘南実行委員会によって「恋人海岸(写真)」と名付けられた海岸。
伊達市(大滝区は除く)は北海道でも温暖で雪が非常に少ない地域です。海水浴場があって真夏の人出が多く、北海道の湘南にふさわしいという事で名前が付きました。夏の北海道旅行で恋人と一緒の人はぜひ立ち寄りましょう。更に伊達男なら言うことなしですね。
<恋人海岸の基本情報>
住所:北海道伊達市向有珠町、南有珠町
電話番号:0142-23-3331(伊達市役所)
北海道伊達市有珠には石割桜のように、石を割る位の強い信念を持って寺を建立・維持し、布教やアイヌへの啓蒙に努めた人たちの跡があります。またパワスポや北の湘南と言われる海岸から名前が付いた場所も。有珠山の影響を受けながら歩んだ、生命力あふれる町です。すぐ隣は洞爺湖町で、観光地の洞爺湖にも近い地域。そんな有珠地区の名所に旅してみてはいかがでしょうか。
2019年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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