江戸時代と変わらぬ風景!津市「一身田」寺内町で国宝に感嘆

江戸時代と変わらぬ風景!津市「一身田」寺内町で国宝に感嘆

更新日:2019/10/17 10:48

湯川 カオル子のプロフィール写真 湯川 カオル子 温泉流浪人、路地裏ウォーカー
三重県津市にある一身田・寺内町は、戦火に備え、お寺を中心に堀で囲んだ防御的な自治集落。江戸時代と変わらぬ風景が今も見られる貴重な場所で、昭和の中ごろで時が止まったような路地は、観光地化されていない素の町並みが見られます。特に2017年に国宝になった専修寺の御影堂と如来堂は、スケールの大きさにビックリ。周囲には江戸期以降の古民家も残ります。そんな寺内町をガイドさんの案内で巡れば、町の魅力が倍増です!

無料のガイドツアーで戦乱の世の自治集落を歩く

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写真:湯川 カオル子

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津市郊外の一身田(いっしんでん)にある寺内町(じないちょう)は、津からひと駅のJR一身田駅すぐにある、16世紀にできた自治集落です。

寺内町とは、室町時代に主として浄土真宗の寺院や道場が自治をできる権利を得て、堀や防塁で囲んで防御力を高めた町や集落のことです。一身田には真宗高田派の本山「専修寺(せんじゅじ)」を中心に、お寺や古民家が残ります。特に寺町通りから見た専修寺の門などは、江戸時代の風景を感じさせる、とても貴重な場所なんです。

そんな一身田の魅力をより深く教えてくれるのが、町の観光ガイド「一身田寺内町ほっとガイド会」。しかも、個人のお客さんなら無料。コースは30分、60分、90分の3種類で、1週間前までに予約します。スタート地点は、寺内町内ならどこでもOKなので、予約時に指定します。写真はガイドの岡本靖弘さん。一身田特産の「伊勢木綿」のはっぴが、ガイドさんの目印です。

無料のガイドツアーで戦乱の世の自治集落を歩く

写真:湯川 カオル子

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ガイドツアーをJR一身田駅からスタートすると、寺内町の入口は「桜門」の跡に建つ赤い「安楽橋」です。桜門は、かって京都方面への出入口でした。寺内町に踏み入れると、道は黄色の舗装に変わります。東西500m×南北450mのエリアです。

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写真:湯川 カオル子

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寺内町を防御するための堀「環濠(かんごう)」が、今も町を囲みます。昔は3間幅(5mほど)ありましたが、道の整備とともに幅が狭くなりました。

浄土真宗は鎌倉時代に親鸞聖人(1173−1262)が広め、没後、弟子たちが教団として確立しました。室町時代から戦国時代にかけては一向宗とも呼ばれ、戦乱に巻き込まれます。現在は真宗十派を中心に、いくつもの宗派からなります。当初は親鸞聖人が栃木県真岡市高田に開いた道場が、後に高田派の本山となりました。

1456年に伊勢周辺の布教拠点として、一身田に無量寿院を建てたのが始まりです。ところが1526年に戦火で本山が焼失したため、1560年ごろ無量寿院を「本山専修寺」にあらため、栃木県の高田専修寺を「本寺専修寺」としました。

江戸時代になると、1645年に一身田専修寺が火事で焼失してしまいます。1658以降、数十年がかりで再建されたのが、現在の一身田専修寺の姿です。

寺内町の中心「専修寺」には、国宝・重文が盛りだくさん

寺内町の中心「専修寺」には、国宝・重文が盛りだくさん

写真:湯川 カオル子

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正面に見えるのが、「山門」と呼ばれる専修寺の総門です。手前にある左右一対の矢来(木材を粗く組み合わせた柵)が釘貫門。こうした門は町内4ヶ所にありましたが、今に残るのはここだけです。以前は釘貫門を通って山門から入るのが、専修寺の正しいお参りルート。人の世から、お寺が管理する神聖な土地へ入る入場ゲートです。

釘貫門の手前に見える石造りの反り橋は、1760年に建立されました。釘抜門と石橋は、津市の指定有形文化財。そして驚くことにこの石橋は、今では車も渡っています!

寺内町の中心「専修寺」には、国宝・重文が盛りだくさん

写真:湯川 カオル子

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1704年ごろに完成した山門は、巨大な2階建ての建物。肘木と呼ばれる組み物が軒を支え、力強さと美しさを兼ね備えます。山門の楼上には釈迦三尊像が安置され、4月8日のお釈迦さまの誕生日には、上がって参拝することができます。これも国の重要文化財です。

山門の前を通るのが寺内町のメインストリート「寺前通り」。ここでは、道の広さに注目。江戸時代の道の広さがそのまま残されています。この道に立つと、江戸期のスケールを実感。特に道から専修寺の門や塀に目をやると、300年前の風景をうかがい知ることができます。

寺内町の中心「専修寺」には、国宝・重文が盛りだくさん

提供元:真宗高田派本山 専修寺

http://www.senjuji.or.jp/地図を見る

2017年、建築物としては三重県初の国宝に指定された御影堂(みえいどう)と如来堂。写真右が御影堂で1666年に建立され、親鸞聖人の木像が祀られます。日光東照宮などを手がけた大工集団が6年がかりで完成させ、当時の江戸最新の建築技法や彫刻が施されました。実際に御影堂の前に立つと、驚かされるのはその巨大さ。現存する日本の木造建築物では5番目の大きさです。

写真左に建つ如来堂は1748年に建立され、御影堂と共に国宝に指定されました。屋根の下に裳階(もこし)という一重屋根がつくので2階建てに見えます。一重裳階つきの仏堂では、現存する最大の建物です。近江八幡の大工が手掛け、各柱の間には、中国の古事にもとづく龍、象、獏などの組物彫刻が施されています。

最高ランクの格式を持つお寺

最高ランクの格式を持つお寺

写真:湯川 カオル子

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ここも江戸時代の風景が見られるビューポイントです。大きな檜皮葺の屋根が美しい唐門は、如来堂の正面にある門です。皇族や皇室の遣いだけが専用に使う勅使門として1844年に棟上げされ、国の重要文化財に指定されています。

最高ランクの格式を持つお寺

写真:湯川 カオル子

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専修寺の東側にある太鼓門も国の重要文化財です。4重の櫓門(やぐらもん)で、一番上には太鼓が吊るされていました。江戸時代、寺内町に入るには、門が朝6時に開き、夕方6時に閉まる際、太鼓が時を告げました。

最高ランクの格式を持つお寺

写真:湯川 カオル子

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専修寺を取り囲む白い土塀をよく見ると、白い線が5本入ります。これは定規筋といって、線の数で格式の高さを表します。専修寺の壁は京都御所と同じ5本線で、最高ランク。そのうえ境内はもちろん、国宝の御影堂と如来堂の中も、見学は無料です。

<高田本山専修寺>
住所:三重県津市一身田町2819
電話番号:059-232-4171

昭和の風情が残る町めぐり

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写真:湯川 カオル子

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ここからは専修寺を後にして、寺内町を散策します。路地に入ると、江戸時代から昭和初期にかけての住宅が点在していて、今も商店として使われる建物も残ります。町を歩くと、時には寺内町で暮らす人々とすれちがいます。そんな日々の営みが感じられるのも、一身田の魅力です。

昭和の風情が残る町めぐり

写真:湯川 カオル子

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江戸期に建てられた商店では、出格子のついた引き戸や窓をはじめ、一階の屋根下には風雨をしのぐ板暖簾など、当時の建築様式が見られます。

昭和の風情が残る町めぐり

写真:湯川 カオル子

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家と家の間には、たいへん狭い道「せこ」が通ります。1人サイズの道幅で、今も近道をするために使われます。この道に入ると、木造の壁に囲まれて、なんだか昔にタイムスリップしたみたいな気分になりますよ。

蔵のある風景がフォトジェニック

蔵のある風景がフォトジェニック

写真:湯川 カオル子

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ここは商店の並ぶ通りから、1本奥に入った裏通り。昔は商家の蔵がこの通りに並んでいて、今も面影を残します。2軒並ぶこの蔵は、しばしば観光ポスターにも採用されるフォトジェニックなスポットです。

蔵のある風景がフォトジェニック

写真:湯川 カオル子

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専修寺の東にある「一御田(いちみた)神社」は、一身田(イチミタとも読めます)に寺内町ができる以前からある集落の鎮守です。その昔、伊勢神宮に米を収める荘園「御厨(みくり)」があり、水を司り水害を防いでいたのが一御田神社の神様と伝わります。

蔵のある風景がフォトジェニック

写真:湯川 カオル子

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寺町通りにある「一身田寺内町の館」は、町の観光案内所。寺内町の歴史を紹介するコーナーや江戸期の寺内町を復元したジオラマを展示。休憩所としても利用できます。ボランティアガイドの問い合わせはこちらです。

<一身田寺内町の館の基本情報>
住所:三重県津市一身田町758
電話番号:059-233-6666
開館時間:9:30〜16:00
休館日:月曜日
※ボランティアガイドの申し込みは1週間前まで

一身田をガイドさんと巡れば、何倍も面白くなる町歩き

専修寺を中心に形成された寺内町。今でも環濠や古い建物が残り、国宝に指定された専修寺も見ごたえ十分。ガイドさんの話を聞きながらめぐれば、小京都のような町造りをよりよく知ることができます。

特に際立つのは、寺内町と専修寺がとっても静かなこと。土産物店や観光客向けの飲食店が少なく、観光地化されていない素のままの古い町並みや、そこで日常を送る人々の息遣いを感じることができます。圧倒的な存在感をほこる専修寺と、昭和の中ごろで時間が止まってしまったようなのどかな町で、タイムトラベルを楽しめます。

2019年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2019/09/02−2019/10/02 訪問

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