写真:小々石 曲允子
地図を見る高鴨神社は、大阪府との県境にある金剛山の山麓に鎮座する古社。
平安時代の延喜式神名帳では特に霊験が著しいとされる名神大社のうちの一社に列し、何と紀元前5世紀〜4世紀、縄文時代最晩期から弥生時代前期頃には最初の神殿が造営され祭祀が執り行われていたとされる、国内最古の神社のひとつです。
高鴨神社が鎮座する地は、古代の豪族・鴨氏発祥の地であり、神社にはその鴨氏の氏神である阿遅志貴高日子根命(あぢしきたかひこねのみこと)=迦毛之大御神(かものおおみかみ)が主祭神として祀られています。
前書きでも述べた通り、迦毛之大御神は、天照大御神、伊邪那岐大御神と並んで三神のみの大御神の敬称を与えられた神で、このことからもその特別な御神徳と霊力の高さがうかがい知れます。
さらには、そもそも「カモ」は「カミ」の語源とも言われており、神社のみならずこの神様自体が日本でも最古あるいは最古級の奉斎の歴史を持つ御祭神である可能性もあります。
写真:小々石 曲允子
地図を見るさて、高鴨神社を創祀した豪族・鴨氏は祭祀系氏族で、ある種の霊的能力を持った一族であったと言われています。
修験道の開祖である役行者や、安倍晴明の師で陰陽道の大家であった賀茂忠行も鴨氏であり、天体観測や薬学の知識、製鉄や農耕の技術、馬術などにも長じていました。
現在、全国にカモ(加茂、賀茂、鴨等)の名がつく郡や市町村がいくつも存在しますが、それらは全て鴨氏の移住地であり、争いを好まず平和を重んじた鴨一族は、その優れた製鉄や農耕の技術を活かして各地で貢献したと伝えられます。
これらの地域では一族の社が建立されることとなり、その元宮がこちらの高鴨神社ということです。
京都の賀茂社等では別の御神名でお祀りされていますが、迦毛之大御神とは同一神とされ、日本神話では国譲りの大業にも関わり、八咫烏(やたがらす)として神武天皇を導く役目を果たした神でもあります。
写真:小々石 曲允子
地図を見るここからは、高鴨神社の境内、御祭神の御神徳等についてご紹介しましょう。
鳥居を入り左手の祓戸神社に参拝後、境内の参道を進むと突き当たりに本殿(拝殿)が見えます。現在の本殿は室町時代の再建で、国の重要文化財に指定されています。
本殿では主祭神の迦毛之大御神はじめ、事代主命、主祭神の家族神である阿治須岐速雄命や下照姫命、天稚彦命が奉斎されています。
前段でも触れたように迦毛之大御神は類稀なる高い霊験が認められた神で、往古より「復活再生、甦りの神」として信仰されてきました。
平安時代に都で疫病が蔓延した際には朝廷からの命で祈願が行われ、南北朝時代には楠木正成公が信奉し、境内にはその像が建立されています。
死した神をも甦らせることができるほどの強い霊験があるとされることから、病気平癒の祈願をされる方も多く、さらには人の歩む道を目覚めさせてくださる神様とも言われています。
人生を立て直したいと真摯に願う方に、特にお参りして頂きたい神社です!
写真:小々石 曲允子
地図を見るさて、拝殿前には人形(ひとがた)の紙が置かれていますが、これは氏名と生年月日を記して身体を払い、息を吹きかけて罪穢れを移し、自分に代わってお清めして頂くための形代で、6月末もしくは大晦日に行われる大祓いの儀式で祓い清められます。
前者では水(海水)、後者では御焚き上げで火による祓いが行われますが、6月の夏越の大祓では長崎県の壱岐の海まで出かけて儀式が執り行われます。
これは現在の高鴨神社の宮司家の祖先が、大祓いで奏上される祝詞「大祓詞」を飛鳥時代に作ったとされる中臣金連であり、往古に忠実に祭祀が行われているためです。
大祓いを行う神社は歴史ある古社を中心に数多くありますが、甦りや覚醒の御神力と並び、「祓い」の力においてもまさに折り紙付きの神社と言えます。
写真:小々石 曲允子
地図を見る境内の宮池には浮舞台が設けられており、5月の献花祭等の際にこちらで神楽や雅楽が奉納されます。
高鴨神社は紀元前に遡る古社中の古社ですが、平安時代〜中世を思わせるどこか幽玄で雅な景色も見所のひとつです。
写真:小々石 曲允子
地図を見る高鴨神社では、本殿を挟むような形で東西に摂社・末社が鎮座する神域が広がっています。
東側の摂社である「東神社」には、天兒屋根命、天照大御神、住吉三神がお祀りされ、末社として市杵嶋姫命神社や春日神社、神社のある葛城一帯ゆかりの神で造化三神の一柱である高木大神(高皇産霊神)をはじめとする神が祀られた西佐味神社等が鎮座しています。
写真:小々石 曲允子
地図を見るまた、この東の境内の入口近くに積まれた石垣の中に1箇所だけ、灯篭の形に見える部分があります。
この灯篭の形は偶然の造形ではなく、神社建造を担った当時の労働者が遊び心で作ったものと推測され、これにより神社建造は強制労働ではなかったのではないかとも推察されています。
昔の神社の在り方や歴史を考える上で、実は思った以上に奥の深い見所と言えるかも知れません。
写真:小々石 曲允子
地図を見る一方、西側の摂社「西神社」には、多紀理毘賣命をはじめとする迦毛之大御神の家族神がお祀りされています。
この西側の神域には、西神社へと続く杜(森)の参道沿いに神さびた風情の末社の祠が並び、古代よりの霊地の面影が色濃く残ると思われる一帯でもあります。
こちらの末社では、この地ゆかりの神で本殿でも祭祀され、鴨氏とも関係の深い事代主神(一言主神)はじめ、須佐之男命、猿田彦命、宇賀御魂命(稲荷神)、誉田別命(八幡神)等々が祀られており、東側の摂社・末社の神様と合わせると、「神様オールスターズ」とでも呼べるほどの数多の主要神がここ高鴨神社に集っておられることになります。
これだけの主要神が揃う神社というのも、ありそうで実はかなり珍しいのです。
さて、高鴨神社の神域は鉱脈の上にあるとされ、多くの「気」が放出されていることでも知られています。
いわゆるパワースポットとされる寺社が偶然か必然か鉱脈上や活断層上に鎮座していることは多々ありますが、御祭神の御神力のみならず、気に溢れた土地自体も高鴨神社の霊威の強さの源であるのかも知れませんね!
有数の古社がひしめく奈良、関西はもとより、国内でも最古級の歴史を誇る高鴨神社をご紹介して参りましたがいかがでしたか?
神社が座す山麓地域では、古くからの郷名「葛城」や迦毛之大御神に由来する「鴨神」の地名のほか、「風の森」という名称が峠や神社等において伝わります。
最寄りの「風の森」バス停からの道のり、一面に広がる稲田の只中を歩いていると、穏やかな風が谷あいを吹き渡り、ここがその名の通りの地であることを実感します。
高鴨神社からも程近い風の森神社で志那都比古神という風の神(伊勢神宮や龍田大社の風の神と同一神)が古来お祀りされていますが、風にも祓いの効果があるとされますので、この辺りを歩くだけで自然のお祓いを受けているような清々しい気持ちになるのが素晴らしい所でもあります。
ですので、車などで高鴨神社まで直行されるのも良いですが、できたら景色を味わいながら神社までの道を歩かれる方をおすすめしますよ!
写真:小々石 曲允子
地図を見るまた高鴨神社で戴ける、西陣丹後ちりめんの「王朝雅御守り」等作りがしっかりとして気の高さが感じられるお守りもおすすめです。
賀茂社総本宮ということで八咫烏のお守りや、勾玉部分に「カモ」と古代文字で刻印された神秘的な水晶の腕輪「御統」(みすまる)もあります。
住所:奈良県御所市鴨神1110
アクセス : JR・近鉄「御所駅」下車。国道24号線沿いの「近鉄御所駅」バス停より奈良交通バス「五條バスセンター」行きに乗車し、「風の森」バス停下車。徒歩約15分。
2019年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/12/3更新)
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