ローマ帝国が築いた人工絶景!スペイン「ラス・メドゥラス」

ローマ帝国が築いた人工絶景!スペイン「ラス・メドゥラス」

更新日:2019/11/22 14:39

木村 岳人のプロフィール写真 木村 岳人 フリーライター
スペイン北西部、カスティーリャ・イ・レオン州レオン県のポフェラーダ郊外に「ラス・メドゥラス」と呼ばれる一帯があります。

広々とした森の中に切り立った奇岩が屹立する絶景スポットなのですが、それは自然が作り出したものではなく、なんと約2000年前にローマ帝国が水の力を利用して切り崩した金山の跡。

古代の驚くべき採掘技術を今に伝える鉱山遺跡として世界遺産にもなっている、他に類を見ない人工景観です。

まずは「オレリャン展望台」からの眺めを楽しもう!

まずは「オレリャン展望台」からの眺めを楽しもう!

写真:木村 岳人

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ポンフェラーダからラス・メドゥラスまでの距離は約25km。一応バスが通っていますが本数が極端に少ないので、タクシーかレンタカーでアクセスするのが一般的です。

ラス・メドゥラスを訪れる際には、何はともあれまずは全景を一望できる「オレリャン展望台」を目指しましょう。ラス・メドゥラスの東端に位置しており、その500m手前まで車で乗り付けることが可能です。

気を付けなければならないのは、オレリャン展望台は観光の拠点である西側とは正反対に位置するということ。ラス・メドゥラスの手前で道路が分岐していますので、タクシーの場合は乗車時に「オレリャン展望台まで」と告げておきましょう。西側からでもオレリャン展望台まで行くことは可能ですが、急な上り坂を含む約2kmの距離を歩く必要があります。

まずは「オレリャン展望台」からの眺めを楽しもう!

写真:木村 岳人

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展望台からの眺めはまさに絶景そのもの。緑の森と赤色の岩肌のコントラストが素晴らしく、また峻険な奇岩が林立するそのたたずまいは美しくも少しミステリアスな雰囲気です。なお、午後は逆光になってしまいますので、この大パノラマを堪能するには午前中から正午にかけてが良いでしょう。

ダイナミックな採掘法「山崩し」で生まれた人工景観

ダイナミックな採掘法「山崩し」で生まれた人工景観

写真:木村 岳人

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切り立った奇岩が連なるラス・メドゥラスの景観は、1世紀から3世紀にかけてローマ帝国が金山の採掘を行った結果作り出されたものです。その採掘法は「山崩し」と呼ばれる極めてダイナミックなもので、なんと水の力を利用して山を破壊したのです。

元々この地には砂金を大量に含んだ金山が存在していました。その山頂付近に水を溜め、あらかじめ山の内部に巡らせておいたアリの巣状のトンネルへ一気に流し込むことで、水の圧力による衝撃で内部から斜面を崩壊させていたのです。そして下流に流れ出た土砂をさらい、砂金を採集していました。それを何度も繰り返すことで、ラス・メドゥラスは現在に見られるような姿になったのです。

ダイナミックな採掘法「山崩し」で生まれた人工景観

写真:木村 岳人

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この山崩しに使われた水は、古代ローマの水道技術を応用してより標高の高い複数の水源地から引き込んでいました。現在もラス・メドゥラスの周囲には、岩盤を掘削して築かれた水路の跡を目にすることができます。水の力で山を崩すという発想もさながら、それを実際にやってのけた古代ローマの土木技術には驚かされますね。

この地で産出された金は、ローマに送られ帝国の栄華を支えていました。一説によると、ラス・メドゥラスの金の枯渇がローマ帝国の衰退を招いたともいいます。

岩肌には無数に張り巡らされたトンネルの跡が!

岩肌には無数に張り巡らされたトンネルの跡が!

写真:木村 岳人

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剥き出しの岩肌をよく見ると、水平に刻まれた横筋が確認できます。これらはすべて水を流すために掘られたトンネルの跡。無数に見られるトンネルの痕跡が、ラス・メドゥラスで行われていた山崩しの壮大さを物語っています。

岩肌には無数に張り巡らされたトンネルの跡が!

写真:木村 岳人

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現在も山の内部には当時掘られたトンネルが残されており、そのうちオレリャン展望台の北側にあるトンネルでは内部の見学も可能です。通行できるルート以外にも横穴が複雑に分岐しており、山の中をトンネルが縦横無尽に巡らされていることが分かります。

トンネルの内部はかなり狭いのですが、断崖に面した開口部は水の力によって破壊され、大きく広がっているのが特徴的です。窮屈なトンネルから広々とした開口部のバルコニーに出ることで、身をもって水の衝撃を体感することができるでしょう。

栗の木が生い茂るラス・メドゥラスの森

栗の木が生い茂るラス・メドゥラスの森

写真:木村 岳人

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展望台からの眺めを堪能した後は、ラス・メドゥラス内を散策しましょう。金山の崩壊地を一周するように遊歩道が巡らされており、下から奇岩を見上げることができます。展望台から眺めるよりもひとつひとつの岩山が巨大に見え、また一味違った迫力です。

栗の木が生い茂るラス・メドゥラスの森

写真:木村 岳人

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ここで注目して頂きたいのが、遊歩道の周囲に茂る木々。ラス・メドゥラスを覆う森はそのほとんどが栗の木なのですが、これは鉱山労働者の食糧を賄うために古代ローマ人が植えられたものだと伝わります。中には目を見張るような古木もあって、その歴史の深さを感じさせられます。

巨大洞窟で古代ローマの叡智に思いを馳せよう

巨大洞窟で古代ローマの叡智に思いを馳せよう

写真:木村 岳人

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遊歩道の最奥には巨大な洞窟が待ち受けています。これもまた水の力によって破壊されたトンネルの跡で、横穴のみならず山の上へと続く竪穴を目にすることができます。

重機はもちろん、火薬すら存在しない時代に、このような超大規模の金採掘が行われていたのだから本当に凄まじいものです。ラス・メドゥラスを散策すればするほど、古代ローマ人の知識と技術に感服せざるを得ません。

巨大洞窟で古代ローマの叡智に思いを馳せよう

写真:木村 岳人

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このように、ラス・メドゥラスはローマ帝国による金採掘の痕跡が壮大な景観として今に残されていることから世界遺産になりました。しかもその際には「人類の創造的才能を表現する傑作」という評価基準が適用されています。一般的にこの評価基準は世界に名だたる傑作建築に適用されるもので、このような産業遺産に適用される例は極めて稀です。

まさしく、ラス・メドゥラスは自然の力を最大限に活用して築かれた、人類の叡智を示す金鉱山遺跡だといえるでしょう。

ラス・メドゥラスの基本情報

住所:Las Medulas, El Bierzo, Leon
電話番号:+34-987-42-07-08(ビジターセンター)
営業時間:11:00〜13:45, 16:00〜17:45(トンネル内部)
定休日:火曜日(トンネル内部)
アクセス:ポンフェラーダから車で約30分

2019年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。

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