写真:澁澤 りべか
地図を見る表参道から六本木方面へ10分あまり。根津美術館の裏手に、2019年11月「紅ミュージアム」がリニューアルオープンしました。
プロデュースしている伊勢半本店は江戸時代(文政8年/1825年)の創業。日本の伝統的な染料、化粧品である「紅(べに)」をベニバナから抽出して販売している、日本で唯一の「紅屋」です。
「紅屋」はかつては京都を中心に多く存在しましたが、伊勢半本店以外はすべて廃業。伊勢半本店は、江戸時代の女性のメイクに不可欠だった紅の製法を今に伝える貴重な存在なのです。
写真:澁澤 りべか
地図を見るミュージアムに入るとまず、本物の紅でメイク体験ができる「コミュニケーションルーム」があります。
ベニバナから抽出した紅は、江戸時代と同じようにお猪口(ちょこ)に塗り付けてあり、酸化や光の作用による退色を防ぐため伏せておかれています。
一見オレンジ色をしたベニバナの花びらに含まれる紅色の色素はわずか1パーセント。お猪口1つ分の紅を取るのに、約1000輪分の花びらが必要です。中でも良質の紅がとれるのは、山形県で栽培されている「最上紅花」。いまも山形県はベニバナの生産量日本一を誇ります。
写真:澁澤 りべか
地図を見る少量の水を含ませた紅筆でお猪口をこすると乾燥した紅が溶け出し、それを手の甲や唇に点(さ)してもらうことができます。江戸時代のメイクを体験できる貴重な機会です!
唇の色や肌の色によって紅の発色が変わるため、同じ紅を使ってもその人だけの色と質感が現れます。色の濃さは水分量と重ね塗りによって調節します。
写真:澁澤 りべか
地図を見る紅体験のあとは資料室でお勉強。常設展は2つの部屋に分かれています。
展示室1「紅を知る」では、紅がどのようにして作られ流通していたのかを、紅屋のミニチュアや実際の道具と共に解説。いくつもの工程を経て作られる紅の貴重さがよくわかります。また紅が持つ神聖なパワーについての紹介もあります。
写真:澁澤 りべか
地図を見るこの紅一色で描かれた絵は「疱瘡絵(ほうそうえ)」。疱瘡(天然痘)除けのお守りです。
赤い色は古来から魔除けに用いられてきました。赤(朱・緋・紅)は太陽、火、血の色。そして神社の鳥居、花嫁の角隠しの内側、七五三の衣装、還暦に贈るちゃんちゃんこなどの色です。
紅で描かれた鐘馗や金太郎の絵を疱瘡にかかった病人の側に飾ることで、病を退散させることができると考えられていました。
写真:澁澤 りべか
地図を見る展示室2「化粧の歩み」では、日本の化粧の歴史を、当時の化粧道具や化粧ポーチ、浮世絵、化粧の指南書などとともに大変リアルに解説しています。
江戸時代のメイクは赤、白、黒のたった三色しか使いませんでした。また赤は口紅としてだけでなく、頬紅やアイメイクに、さらには爪紅(つまべに)、つまり今でいうマニキュアとしても使用されました。
写真:澁澤 りべか
地図を見る紅の製法や歴史を学んで、ぜひとも伝統的な紅を自分のメイクに取り入れたい、と思ったあなた!
もちろんこちらで紅が買えます!
ミュージアムショップで購入できる「小町紅」は江戸時代から変わらぬ製法で「最上紅花」から抽出したもの。しかも良質な紅の証である玉虫色に輝いています。このメタリックな緑色が・・・紅筆で少量溶かすと、あら不思議!上品な紅色に変化。
江戸メイクを日常に取り入れたい自然派女子におすすめ。プレゼントにもいいですね。紅染めの雑貨など、かわいい和小物もお見逃しなく。
写真:澁澤 りべか
地図を見るお土産選びに疲れたらちょっと一服。珍しいベニバナ茶の試飲ができますので、お気軽にスタッフの方にきいてみてください。ほんのり酸味がある独特の香りが特徴。購入もできます。
タブレットや壁に設置されたプレートを使って、展示室で学んだ内容に関するクイズにもぜひチャレンジを。
紅ミュージアムでは紅や化粧にまつわる各種のイベントも頻繁に開催しています。小中高校向けの化学実験のような体験学習や出張授業も実施しており、日本古来の紅に触れるユニークな授業は、女の子だけでなく男の子も興味津々です。
住所:東京都港区南青山6-6-20 K’s南青山ビル1F
電話番号:03-5467-3735
アクセス:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」下車徒歩12分
2019年12月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
澁澤 りべか
歴史の舞台を旅しながら、日本で世界各国の歴史、文化、宗教、習慣などを教えています。これまで、のべ30カ国90件ほどの世界遺産を訪問しました。年に数回、歴史を五感で楽しんでもらうイベントを開催しています…
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