自然あふれる東京・羽村堰で鳥と花に出合うのんびり散策

自然あふれる東京・羽村堰で鳥と花に出合うのんびり散策

更新日:2020/11/23 09:29

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
羽村市は東京都の西側に位置し、多摩川の中〜上流域に接するのどかな市です。今回紹介するのは、巨大水門「羽村堰」を有する多摩川の河川敷周辺。親水公園のように広々とした河川敷には、晩秋、北国よりたくさんの冬鳥が飛来。水面に浮かぶカモ達や、枯れた芦に掴まる小鳥たち……河川敷は鳥の楽園になります。また、春にはチューリップや桜などの花々が咲き誇り、夏には濃緑に染まった多摩の山々の下、潤いある水景を楽しめます。

広い河川敷と清らかな流れが描く水景

広い河川敷と清らかな流れが描く水景

写真:鷹野 圭

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東京都といえば山手線沿線を軸とした高層ビル群を中心に「都会」のイメージが強いかもしれませんが、実際にはその面積の半分以上は森林で占められています。予想はつくかもしれませんが、東京都の東部が都会、西部が森林と大きく分かれていることは地図で見てみると一目瞭然。ここ羽村堰の存在する羽村市は、その中間地点よりやや西側に位置しています。

同時に多摩川の中〜上流に位置することになりますが、広い川幅、人の手により改修された河川を見ていると、あまりそうしたイメージは湧いてこないかもしれません。実はこの羽村堰は玉川上水の取水口(水源)であり、その歴史は遠く江戸時代にまで遡ります。その後いくつもの時代を経て形を変え、今も水を供給し、水害を防ぐ役割を担っているのです。

広い河川敷と清らかな流れが描く水景

写真:鷹野 圭

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羽村堰を俯瞰で見ると、上流方面に大きな山が連なっているのがわかります。晴天時には御岳山や奥多摩の山々も望めるかもしれません。一方で下流方面には大きな山もなく、開けた環境が。ここが都市部と山岳域の中間に位置していることがよくわかります。

江戸時代と違いコンクリート製となった現在の羽村堰ですが、堰を中心として下流を守るべく長年かけて改修されてきた河川のデザインは、背景に見える山の風景に不思議とマッチします。ぜひ、お好きな角度を探して撮影してみてください。

広い河川敷と清らかな流れが描く水景

写真:鷹野 圭

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河川敷を見渡せる堤防は、散歩やランニングのコースとして地元の皆さんに愛されています。堤防沿いには数多くのサクラが植えられ、春の満開期はまさに圧巻。冬場は少々殺風景ですが、時折メジロやジョウビタキなどの小鳥が枝にとまり、かわいらしい姿を見せてくれます。

また、堤防から河川敷を見てみると、生い茂る葦(アシ)の草原から時折鳥の鳴き声が聞こえてきます。運がよければオオタカを始めとした猛禽類や、タヌキなどの哺乳類に会えるかも?

水面に注目! 晩秋〜早春の羽村堰周辺は水鳥の楽園です

水面に注目! 晩秋〜早春の羽村堰周辺は水鳥の楽園です

写真:鷹野 圭

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流れが比較的穏やかで川幅の広い羽村堰周辺では、本来池や沼などの止水域を好むカモ達が多く飛来します。晩秋〜春と長期間観察できますが、その中でも特に人気なのが写真のヨシガモ(オス)。メタリックグリーンの頭部に、燕尾服を思わせるお洒落な尾の飾り羽。首都圏に飛来する冬のカモの中では、オシドリと並ぶ美しい種です。よく集団で行動していて、サイズも大きいので見つけやすいはず。決して珍しいカモというわけではないですが、つい何度も写真に撮りたくなってしまう1羽です。

水面に注目! 晩秋〜早春の羽村堰周辺は水鳥の楽園です

写真:鷹野 圭

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美しい水辺の鳥といえば、やはりカワセミは外せません。最近では首都圏でも割と簡単に会えるようになりましたが、羽村堰も例外ではありません。水に飛び込んで魚を捕まえるカワセミは、水中の獲物を見つけられるような水辺の構造物や、水面にせり出した枝先などを足場として利用します。運がいいと堰に止まってジッとしていることもありますので、ぜひ探してみましょう! 青色で目立ちやすいので、小さい鳥でありながら結構見つけやすいはずです。

水面に注目! 晩秋〜早春の羽村堰周辺は水鳥の楽園です

写真:鷹野 圭

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写真はコチドリ。羽村堰周辺は水深が浅いので、こうした小さい鳥が川の中をウロウロしていることも多々あります。彼らは水中に生息する小さな昆虫などを食べて暮らしており、同様の行動をする小鳥としてハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイなども観察できます。

奥まった野山と違って河川敷は視界が開けているため、小さな鳥も見つけやすいはず。ただ、鳥までの距離が若干遠いこともありますので、ズームできるデジタルカメラや双眼鏡などがあると便利です。

川沿いの葦原も要チェック。野鳥たちの格好の隠れ家です

川沿いの葦原も要チェック。野鳥たちの格好の隠れ家です

写真:鷹野 圭

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羽村堰周辺の河川敷には、徒歩で歩けるよう切り開かれた散策路があります。背の高い葦原と細い木々が並ぶ樹林帯で構成され、冬場は草も枯れて少々寂しい雰囲気になりますが、歩いていると両サイドから鳥の鳴き声が聞こえてきます。

葉が少なくなる晩秋〜春は、枝にとまった鳥の姿もよく見えるようになります。また、いきなり散策路に出てくることもしばしば。のんびり歩きながら探してみましょう。

川沿いの葦原も要チェック。野鳥たちの格好の隠れ家です

写真:鷹野 圭

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写真の鳥はモズ。いわゆる「はやにえ」を作ることで有名で、スズメのような姿に反して結構獰猛(?)な肉食性の鳥です。主にカエルやトカゲ、昆虫などを餌としていますが、冬場は獲物も少なくなりなかなか苦労している様子。それでもこの界隈では頻繁に観察できることから、元々獲物となる生きものが多く生息している、優れた環境が保たれていることを私達に教えてくれます。

葦原のほか、木の枝でもよく見かけます。木のてっぺんにとまることが多いので、近くで鳴き声が聞こえたら要チェックです。

川沿いの葦原も要チェック。野鳥たちの格好の隠れ家です

写真:鷹野 圭

この写真には3羽の小鳥が写っています。左から順にカシラダカ、ホオジロ、シメといい、ホオジロ以外は冬場でないとまず観察できない鳥です。

カシラダカとホオジロは主に葦原を好み、よく太い茎に掴まってはくちばしで茎を齧り取り、中に隠れている虫を食べます。葦原かオパキパキと何かが折れるような音が聞こえてきたら、その場に立ち止まって要チェック。茶褐色なので葦の色に紛れて少々目立たないのですが、それだけに見つけられた時の感動もひとしおです。

ややサイズの大きいシメは、葦に掴まることは少なく、木の枝にとまったり地面を歩きながら餌を探している姿をよく見かけます。

羽村堰周辺にちりばめられた史跡から「歴史」を辿る

羽村堰周辺にちりばめられた史跡から「歴史」を辿る

写真:鷹野 圭

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堰のすぐ近くには、かつて江戸時代に幕府の命で工事を手掛けた玉川庄右衛門・清右衛門兄弟の銅像が建てられています。今なおよく知られる玉川上水の生みの親である兄弟は、その功績から当時武家にしか許されていなかった姓を名乗ることを許されたといいます。それだけ、この堰が竣工したことは幕府ひいては江戸の街にとって大きな進歩であったことが窺えます。

羽村堰周辺にちりばめられた史跡から「歴史」を辿る

写真:鷹野 圭

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堰の周辺には、江戸時代の工事に使用された工具を再現したものが展示されています。重機などもちろん存在しなかった時代に、人力と知恵を駆使して現代まで残る堰と用水路を築き上げた、その苦労と江戸への貢献は並大抵のものではなかったはず。ここの史跡を見学した後、日を改めて東京都内を流れる玉川上水を歩いてみるのも乙な楽しみ方です。

羽村堰周辺にちりばめられた史跡から「歴史」を辿る

写真:鷹野 圭

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これはJR羽村駅から羽村堰へ向かう途中にある、かつての馬の水飲み場の跡地です。自動車などもちろん存在しなかった時代、馬は荷物運びや移動のための重要な手段だったことは言うまでもありません。堰からはやや距離があるものの、これもまた工事時代の歴史を今に伝える史跡と言えるでしょう。

春は花も見所。チューリップ公園は必見です

春は花も見所。チューリップ公園は必見です

写真:鷹野 圭

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羽村堰よりほど近い「チューリップ公園」では、その名の通り、長い冬が明けた4月頃よりたくさんのチューリップが花を咲かせます。田んぼの広がる開かれた環境に色とりどりの花が咲く様は、まさしく圧巻。羽村市では「はむら花と水のまつり」と題し、前期にはサクラ、後期にはチューリップを楽しむイベントを催しており、羽村市の春の名物となっています。

春は花も見所。チューリップ公園は必見です

写真:鷹野 圭

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ここに植栽されているチューリップは実に色とりどりで、写真のように混植されているところもあれば、同じ色のものを1列に並べて植えているところもあり、結果として毎年異なるデザインが花壇に描き出されます。あまりに花壇が広すぎるので、中には遠すぎてなかなか観察できない株も……。バードウォッチングではありませんが、双眼鏡を持参すると役に立つかもしれません。

また、品種改良も盛んに行われていて、まれに「これがチューリップなの?」と目を疑ってしまうような形のものを見かけます。皆さんもぜひお気に入りの一株を探してみてください。

羽村堰の基本情報

住所:東京都羽村市羽東3-8-32
公開時間:常時
アクセス:JR「羽村駅」より徒歩10分

2020年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2019/01/19 訪問

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