山頂の噴火口(大内院)は、浅間大神(あさまのおおかみ)とその本地仏・大日如来(だいにちにょらい)が鎮座する最も神聖な場所と考えられています。その深さは200メートル以上にもなり大迫力!
その火口内には、平安時代の官人・都良香(みやこのよしか)によって書かれた富士山記に「蹲(うずくま)る虎の如し」と記された「虎岩」も見ることができます。
現在では、火口のまわりを1周することを「お鉢巡り」と呼びますが、かつては大内院を囲む八神峰を巡拝していたことから「お八巡り」と呼ばれ、それが「お鉢巡り」に転化したものと考えられているそうです。
白山岳下には、小内院と呼ばれる小さな噴火口もあります。
富士山の富士宮口(表口)山頂には、富士山本宮浅間大社の奥宮が鎮座しています。
その起源は、平安時代にまで遡るというから驚きです!
平安時代の僧・末代(まつだい)上人によって山頂に大日寺が建立され、山岳信仰の拠点になったといわれています。
ご祭神は、浅間大神(木花之佐久夜毘売命)(あさまのおおかみ、このはなのさくやひめのみこと)、大山祇神(おおやまづみのかみ)、瓊々杵尊(ににぎのみこと)。
須走・吉田口の山頂には、奥宮の摂社・久須志神社があります。
こちらは、大名牟遅命(おおなむちのみこと)、少彦名命(すくなびこなのみこと)がご祭神です。
奥宮でしか授与されない貴重なお守りやお札などもあり、入手できるのは開山中の僅か2ヶ月間です!
■富士山本宮浅間大社奥宮:7月上旬〜8月末 (例年)
奥宮から剣ヶ峰へと向かうと、写真のような水溜りが見られることがあります。これは単なる水溜りではなく、古記録にも記されている「コノシロ池」という列記とした歴史ある池なのです!
これが見られたあなたはラッキー!
主には雪解けの時期に湧く池で、降雨後にも見られることもありますが、常にあるわけではありません。それゆえに、幻の池といわれているのです。
この池にはコノシロ(鮗)が棲むという伝説があり、風神に見初められた木花之佐久夜毘売命が従者にこの魚を焼かせ、自分の葬儀と思わせて、諦めさせたという伝説があるそうです。コノシロは焼くと、死人を焼いたような臭いがするといわれ、その他にも似たような逸話が残っています。
富士山頂には、神聖な泉として崇められた金明水と銀明水があります。
雪解け水が山頂の僅かな起伏によって湧くもので、金明水は白山岳の下側、銀明水は御殿場口山頂です。かつては登山者に振舞われていたこともあったようですが、環境の変化や永久凍土の縮小などにより、年々枯れてきているようです。
この湧き水には伝説があり、それは「神様が土を掘り、その土で出来たのが富士山、土を掘ったあとが琵琶湖で、この湧き水は琵琶湖からの通い水である」というもの。この伝説に因み、富士宮市と滋賀県の近江八幡市は夫婦都市の提携を結んでいます。
また、琵琶湖の水を汲み富士山頂に奉げ、山頂の霊水を持ち帰るという風習もあるのだとか。(琵琶湖は、富士講の聖地・外八海の霊場の一つでもあります)
なお、金明水と銀明水は、奥宮と久須志神社でそれぞれ授与されています。(有料)
日本最高所・剣ヶ峰のシンボルといえば、旧富士山測候所。
山頂レーダーの建設を巡る様々なドラマは、映画化もされた作家・新田次郎の小説「富士山頂」の舞台にもなりました。
測候所建設に至る背景には、1895年に野中至・千代子夫妻が富士山頂に私財を投じ、日本で最初の富士気象観測所を建設し、越冬観測を試みたことがあります。正確な気象予報をするため、厳しい自然環境のなか衰弱状態に陥りながらも真冬の観測を続け、国が恒常的観測所の建設を約束したことで下山を決意したといいます。
この偉業と危険を承知で行動を共にした夫婦愛は、同著「芙蓉の人」で小説化され、ドラマにもなったほどです。
こちらは信仰遺跡群とは少々異なりますが、日本最高所というだけでなく、数々のドラマを生んだ聖地のような場所でもあるのです。
富士山頂には、他にも様々なエピソードや歴史ある霊場が幾つもあり、とても紹介しきれるものではありません。富士登山といえば、御来光を連想する方も多いですが、御来光のみを見て、富士山を見ずに帰るのはとても勿体ない話です。
ゆとりを持ったスケジュールで、ゆっくり富士山を歩けば、きっと新たな発見がある筈です。天候に恵まれ、体力と時間に余裕があれば、是非、山頂曼荼羅を歩いてみてはいかがでしょうか?
■強風時のお鉢巡りは危険です。
■剣ヶ峰手前の馬の背は急な登りですので、不安な方は反時計回りにしてはいかがでしょうか。
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(2025/1/19更新)
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