写真:津田 泰輔
地図を見る奈良県宇陀市のある龍王ヶ渕は、額井岳の中腹に位置し、湧水を集めてできた自然の池である。アクセスは自動車でという事になるのだが、名阪国道の針テラスから室生ダム方面へ国道365号、吉野室生寺針線を経由して約15分という割と幹線道路から近い位置にある。
向渕の集落を抜けて山を上がっていけば、人里離れた静かな池が姿を現してくる。8台ほど停められる駐車場もあり、池のほとりには屋根もついた小さな展望スペースも用意されているが、トイレなどの施設もなく携帯の電波も届きにくい場所なので注意しよう。
写真:津田 泰輔
地図を見る龍王ヶ渕は北西南を山に囲まれ、東西150メートル南北100メートルほどの比較的小さな池である。池自体は何の変哲もないものなのだが、最大の特徴はその静かさにある。
山に周りを囲まれているせいか、龍王ヶ渕はほんとに自然の音しか聞こえない静かな場所である。ここだけが隔絶された世界のようで、あまりにも静かなので怖いくらいだ。時折聞こえる魚や蛙が跳ねる水音にビクッとなってしまうほど。
天気の穏やかな日は、池の波打ちもほとんどなく、水面が鏡のようになって周りの景色を映しこむ絶景も見ることができる。
写真:津田 泰輔
地図を見る池の周りはぐるっと一周できる遊歩道が整備されている。池の東側は湿原状になっていて、駐車場近くの東屋から進めば、まずはこのヨシの原の中の木道を通ることになる。
龍王ヶ渕から流れ出た水は、このようにヨシ原の湿原地帯をながれる水路を経由して下流へと流れ出ていく。水の流れは非常に緩やかで、水のせせらぎもほとんど聞こえることがない。流れが少ないからこそ、池の水面も波打つことなく静かなのだろう。
ヨシ原の切れ目から池を望む。こちらから見ても山の木々を見事に水面が反射して鏡のように見ることができる。三方を山に囲まれて風の影響を受けにくい地形であること。また水が流れ出る東側は湿原地帯で水の流れが少なく、流れ込む川の水量も少ないことから、このようなリフレクションを楽しめるうってつけの条件がそろっている場所なのである。
写真:津田 泰輔
地図を見る池の北側をぐるっと回って西側の遊歩道まで歩くと、今までの開けた雰囲気から少し幻想的な雰囲気に変わってくる。
西側は池のすぐ近くまで林が迫っていて、ところどころ水没した木や朽木が水面から顔をのぞかせている。それがまた絵になる風景を作り出しているのだ。
写真:津田 泰輔
地図を見る空を映す水面から突き出る朽木。音のない静謐な世界で、時だけは進む。
こちらから見ても池の鏡面性はまったく劣ることがない。空の青さ、対岸の木々や山々も余すことなく飲み込んで、より色濃く映し出している。
写真:津田 泰輔
地図を見る龍王ヶ渕の西側は木々が水際まで来ているので、静かな水面に溶け込むような光景を見ることができる。
水面が鏡のように反射している状態を、写真の世界ではリフレクションと呼んでいる。このリフレクションを上手く撮影できる条件は、まず第一に風がなく水面が静かで穏やかであること。
龍王ヶ渕を地形的に見れば、西側の額井岳が風を遮り、池に入り込む水も出ていく水も穏やかで水面が静かな状態が保ちやすいという、非常にリフレクションを見るのに最適な条件を満たしている。
写真:津田 泰輔
地図を見る紅葉の季節ならば水面に絵の具を落としこんだような、絵画のような景色を堪能できる。広葉樹が少ないので、紅葉を見に来る場所ではないのだが、水中の紅葉を楽しめるという貴重な場所である。
写真:津田 泰輔
地図を見る池を周回する木々の中の道を進んでいくと、最後に小さな社がある堀越神社にたどり着く。
写真:津田 泰輔
地図を見る龍王ヶ渕は古来より水源の地として信仰を集めていた場所。堀越神社には浦島太郎の乙姫のモデルになったとも言われる豊玉姫命が祀られている。海に所縁のある神様だが、地上からやってきた山幸彦と結婚するので、この龍王ヶ淵はさながら山にできた海といったところだろうか。
写真:津田 泰輔
地図を見る龍王ヶ淵で一番の眺望スポットもこの堀越神社の敷地内にある。神社の向かいの池の岸壁に少し船着場のように木の足場が組んである場所がある。ここに立てば池全体を眺めることができ、何と言っても池の中に立っているかのような感覚になれる場所なのである。
写真:津田 泰輔
地図を見る風のない日に訪れれば、まさに鏡の世界に立っているような絶景に出会える場所。少し水面に突き出た場所なので、視界全体が上下さかさまの不思議な景色の中に入り込んだような感覚になる。
写真は紅葉のシーズンのものだが、冬なら雪景色、春なら新緑のさかさまな景色が楽しめるだろう。
住所:奈良県宇陀市室生向渕(むこうぢ)
営業時間:自由
駐車場:無料・8台
お問い合わせ:農林商工部観光課
電話番号:0745-82-2457
近隣のトイレはありません。
県道から龍王ヶ渕までの道路は非常に狭いため注意してください。
2020年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
津田 泰輔
ブログを書き始めたのをきっかけに関西の秘境巡りを始めて約6年。まだまだ知られていない魅力的な絶景スポットをたくさん発見しました。今までアウトドアとは無縁だった私が手軽に行ける秘境を関西中心に紹介してい…
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