「養浩館」は、江戸時代には「御泉水屋敷(おせんすいやしき)」と呼ばれていました。その名の通り、約9500平方メートルの敷地一杯に配された2300平方メートルの池は、もはや池と言うより湖のようです。
水際は、砂利や巨石などで複雑に変化がつけられ、池の周りを散歩しながら景色の変化を楽しめるようになっています。これは、回遊式林泉庭園(かいゆうしきりんせんていえん)という江戸時代初期から中期の代表的な様式です。
養浩館という名前は明治に入り、松平春嶽より名付けられました。そこには「大らかな心持ち」という意味が込められています。1945年の福井空襲で屋敷や樹木は焼失しましたが、残された庭は1982年に国の名勝に指定され、1993年に庭の修復と屋敷の復元を経て一般公開されました。
まずは石に注目です!通常、水際の堰き止めには岩を使用しますが、ここでは砂利を使用し優美な雰囲気を醸し出しています。これは平安時代から用いられた手法で、日本で現存している庭はここだけなんですよ!
また、巨石を橋として使用したり、屋根を支える礎石にも天然の巨岩を使用したりと、景色と建物が自然に繋がる工夫はそのまま芸術的な景色となっています。
写真:成瀬 康子
地図を見るそして次に注目すべきは、なんと言ってもこの豊かな水!屋敷の部屋のほとんどが水面に接し、池の一部は建物の下に入り込んでいるので、建物全体が池に浮かんでいるように見えます。
また、日本庭園では珍しく池に中島を配していないので、水面に視界を遮るものが無く、広々としています。水が豊富な福井を象徴するかのような美しい庭園ですね。
屋敷は数寄屋造りで、発掘された遺構の上に直接建てられているのが特徴です。ですから部屋から眺める庭の景色は当時のまま!殿様気分を味わえますよ。
殿様気分と言えばこちら、池に張り出した「櫛形の御間」。跳ね上げ式雨戸を屋根に見立てると、まるで屋形船から見ている風情になります。当時は1メートル70センチもの深さがあるこの池で船遊びもしていたそうなので、屋敷をそのまま船に見立ててしまうなんてなんとも風流ですね。
写真:成瀬 康子
地図を見る風流と言えばこちら、月を愛でる為に作られた「御月見ノ間」も見事です。こちらの部屋は、昇る月から沈む月までを楽しめるように東・南・西、3箇所に開口部があります。
そして西側には雲形に繰り抜かれたケヤキの一枚板がはめ込まれており、その雲を通して池に映った月を楽しめる趣向になっています。昇った月だけでなく、池に映った月までをも愛でるとは!なんと風流な楽しみ方なのでしょう。
その他にも別邸だからこそ設けられた贅沢な空間として、お風呂も注目に値します。写真の一番奥が洗い場「御湯殿」で、湯船「蒸風呂」からお風呂上がりに寛ぐ「御上がり場」まで、お風呂に関するスペースは、建物の約半分をも占めます。
更にどの部屋からも庭の景色を楽しめるように作られているという贅沢さ!こちらは実用というより、むしろその時間を楽しむ為に作られた空間と言えるでしょう。
写真:成瀬 康子
地図を見る庭は屋敷から眺めるだけでなく、池の周りを散歩すると石組みによって作られた小山、岬などその複雑な変化も楽しめます。また屋敷の向かいには小亭「清廉」があり、そこから見える景色も見事です。
そして夏場はなんと朝6時から開園しているので、屋敷には入れませんが庭のみなら無料で散歩出来ますよ!
時間に余裕があれば、隣の「福井市立郷土歴史博物館」に立ち寄ると松平家伝来のお宝や資料にも触れられます。更に駅方向に約400メートルのところに、現在は福井県庁となっている福井城跡もあり、こちらにも立ち寄ると更に充実した旅になるでしょう。
住所:福井県福井市宝永3丁目11-36
電話番号:0776-20-5367
アクセス:JR福井駅から徒歩15分
2020年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/3/19更新)
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