東京・御茶ノ水「明治大学博物館」珍しい刑罰の展示がある!

東京・御茶ノ水「明治大学博物館」珍しい刑罰の展示がある!

更新日:2020/01/29 13:53

松縄 正彦のプロフィール写真 松縄 正彦 ビジネスコンサルタント、眼・視覚・色ブロガー、歴史旅ブロガー
東京・御茶ノ水に「明治大学博物館」があります。ここは刑罰具や法令が展示されている珍しい博物館です。また当大学には、60年以上の考古学研究の歴史があり、岩宿遺跡(日本に旧石器時代があった事を証明した遺跡)の発掘調査の成果も展示されています。日頃縁がない捕縛や拷問・刑法の歴史などを知りながら、古墳時代の甲冑を着るというちょっと変わった体験も可能です。大学の博物館ですが入場無料、敷居の低い博物館です。

刑罰に関する展示もある珍しい博物館

刑罰に関する展示もある珍しい博物館

写真:松縄 正彦

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東京・御茶ノ水、ここに明治大学博物館があります。近代的ビルの中にありますが、90年もの歴史をもっています。この博物館では、刑事・商品・考古の3部門の展示があり、重要文化財を含む2,000点が常設展示されていますが、特に刑事に関する展示が充実している事が大きな特徴です。

刑罰に関する展示もある珍しい博物館

写真:松縄 正彦

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博物館はビルの地下1階が入り口です。このフロアから写真奥の階段で地下2階に降りて下さい。そこが常設展示室(入場無料)になっています。また写真左手にあるのが特別展示室で、各種の企画展示がここで行われます。また、写真右手前にはショップもあります。

なお、地下1階エレベータ側には作詞家の阿久悠さんの博物館もあります。併せてお楽しみ下さい。

まずは商品展示から

まずは商品展示から

写真:松縄 正彦

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常設展示室では、最初に商品展示が行われています。ここでは主に日常目にする伝統工芸品が展示されています。写真は「和紙と筆の展示」で、筆やその原材料の展示です。筆の原料として馬、羊、むじな、いたち、たぬき、山鳥などの毛が使われています。

馬の毛は硬めの筆、羊は柔らかめの筆の材料として使われますが、同じ動物でも部位によって硬軟が異なるようで、複数の毛を混合した筆、兼毫(けんごう)筆も造られました。

まずは商品展示から

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また、商品展示では竹木工品の展示もあります。茶筌(ちゃせん)や花籠などの加工品が展示されていますが、直ぐ横に各種の竹が置かれています。最高級竹材と言われる“煤竹(すすたけ)”、“亀甲竹”(写真真ん中で主に床柱や花器などに使用)や“四角竹”などです。なにげなく置かれていますが、珍しい竹達です。じっくりと楽しんで下さい。

まずは商品展示から

写真:松縄 正彦

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他に染織品や漆器、陶磁器も展示されており、製造技法などを詳しく見る事ができます(写真は陶磁器の展示)。

伝統工芸は製造工程が多く、手間がかかるために高価です。展示ではバブル期に造られた豪華な製品も展示されていますが、平時での伝統工芸の保護・継承について考えさせられる展示です。価格の面ではバブルもそれなりの役目を果たしていたのかもしれません。

珍しい刑罰の展示

珍しい刑罰の展示

写真:松縄 正彦

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明治大学は、司法試験に毎年大量の合格者を出している事で有名です。このような背景からでしょうか、当博物館では他の博物館では見られない"刑罰"に関する展示があります。捜査・逮捕、裁判、刑罰について個別に展示されていますが、写真は捜査に関連するもので江戸時代の“十手”です。

左手の赤い紐がついているのが“岡っ引き(正規の役人ではありませんでした)”が渡された“目明かし十手”です。その右手にあるのが、関八州の取り締まりを行った正規役人用の“銀流し十手”でいずれも鉄製です。これら十手は警察権を行使する人間の“身分を証明する物”でした。TVの捕物帖では犯人と戦うための道具として十手が使われるシーンが出てきますが、実際は身分証明書あるいは護身用として使われたようです。

役人が捕縛時に使用する十手(捕者出役長十手といいます)はもっと長く重いもので、この実物や、刺又(さすまた)など“捕者三道具”も展示されています。

珍しい刑罰の展示

写真:松縄 正彦

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逮捕の次の段階として、拷問の展示もあります。三角の棒の上に座らせ、膝の上に大きな石をのせる石抱責(いしだきぜめ)の拷問(写真)、ムチ打ち用の“笞(ムチ)”や両腕をねじ上げ胴体を釣り上げて宙づりにする“釣責(つりぜめ)”の展示などです。

ただし江戸時代には、拷問に頼るのは役人の能力不足と見られたようで、これら拷問は容易には行われなかったといわれます。ちょっと安心する話です。

珍しい刑罰の展示

写真:松縄 正彦

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刑罰の道具としては磔柱(写真)があります。男性は横木に手と足を縛り、女性は手を横木に、足を柱に縛りつけられ、槍で刺されました。この他、火焙りの刑に使用された道具なども展示されています。
また西洋の刑罰道具として“ギロチン”の縮尺模型(刃と首枷回りは原寸)が展示されています。映画などで時々目にする機会がありますが、意外に簡単な構造をしています。

他にも中世に使われた“鉄の処女”の複製があります。扉裏の針で刺殺する刑具といわれますが、鉄製の像の中に入れて奇妙な格好をさせ、大勢の目にふれさせて恥辱を与える、“恥辱の刑罰”に使ったという説もあります。

洋の東西を問わず、刑罰を大衆の目に触れさせたという点が面白いですね。見せる事で犯罪を抑止する効果を期待したのでしょうか?
なお、この他に、刑罰に関する展示では“御成敗式目”、“武家諸法度”や“生類憐み令”などの珍しい資料展示もあります。

考古部門も展示に工夫が

考古部門も展示に工夫が

写真:松縄 正彦

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最後に考古展示を紹介しますが、その前に常設展示の入り口近くにある鎧(短甲)と冑(衝角付冑)に注目して下さい。これらは、古墳時代に遺物として出土(茨城県三昧塚古墳)した甲冑を復元したもので、ここで着用する事ができます。

鉄ではなくプラスチックで復元されていますが、着用すると重さが身体に少し堪えます。またこれらの鋲の跡にもご注目下さい。非常にデザイン性が高く、美しく造られています。

当時の状況を考えると鉄はまだ貴重品で、一般兵士ではなく豪族が使ったものと思われます。甲冑を着用して太刀を振る豪族、その姿は、一般の兵士から見ると特別な存在であったのかもしれません。

考古部門も展示に工夫が

写真:松縄 正彦

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考古展示は、他の博物館と違う展示もあります。縄文や弥生時代の展示といえば埴輪や土器・土偶を並べる事が主になるのですが、当博物館では製塩や埋葬に着目した展示がされています。

写真は弥生時代に行われた“再葬”の展示です。土抗から壺形土器が出土する事があったのですが、この壺をどう使ったのか当初不明でした。しかし、壺の中から骨が出て来た事から、この土抗が“お墓”であった事が分かりました。遺体を一度土に埋めるなどして骨だけにした後、掘り出して洗骨し骨を壺に入れたのです。土抗からは人面がついた土器(人面付土器)も出土しています。土抗からは複数の壺が出土する事から、集団の墓であったと考えられています。

このような埋葬の仕方は縄文晩期から見られるとの事ですが、縄文時代は土葬が一般的でした。埋葬についての考え方は、現在と随分違い、時代によっても違っていたのですね。

考古部門も展示に工夫が

写真:松縄 正彦

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考古展示では旧石器時代から古墳時代までの出土品が展示されていますが、特に石器の展示が多いのが特徴です。60年以上に渡る研究の一端がこの多さと関係していると思われます。

写真は、日本列島にも旧石器時代があった事を明らかにした“岩宿遺跡”からの出土品で、2万年以上前のものです。打製石器や陶器また刃器状の破片など多数が見つかっていますが、当大学で重要文化財を含むこれら出土品が保管されています。
ちなみに、この遺跡は相沢忠洋氏と明治大学によって発掘調査されました。

明治大学博物館の基本情報

住所:東京都千代田区神田駿河台1-1
※ナビゲーションアプリを利用の場合、駿河台1-3と入力
電話番号:03-3296-4448
アクセス:
JR中央線・総武線「御茶ノ水駅」下車、水道橋口から徒歩5分
東京メトロ「御茶ノ水駅」下車、徒歩8分

2020年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2020/01/08−2020/01/14 訪問

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