写真:中三川 洸太
地図を見る山形新幹線の停車する村山駅から車で15分。民家も途絶えた山奥に、鄙びた秘湯の一軒宿が建っています。こちらの湯舟沢温泉は、江戸時代の文政年間に開湯した、200年以上の歴史ある温泉。当時から皮膚病の名湯として地元で親しまれてきました。そして現在では、女性を中心に首都圏からもリピーターが訪れる、知る人ぞ知る山の宿となっています。
写真:中三川 洸太
地図を見る湯舟沢温泉旅館で目を引くのは、何と言っても合掌造りで茅葺屋根の母屋。明治8年に建てられた当時の建物を、宿泊棟として今でも大切に利用しています。当時、この宿は滞在客が薪を買い自炊をする、「木賃宿」と呼ばれる湯治宿でした。その当時の名残は、囲炉裏の煙で黒ずんだ木材など、至る所に残されています。
写真:中三川 洸太
地図を見る館内は玄関から廊下に至るまでピカピカに磨き上げられ、美しさに見ほれる程。中でも特にレトロ感満載なのが、母屋の二階です。廊下のガラス戸は、亀の甲羅のような配置でガラスが並べられていることから「亀の子戸」と呼ばれています。こちらには、現在では製造されていない、貴重な手づくりガラスが用いられています。
写真:中三川 洸太
地図を見る母屋の茅葺屋根部分にある昔ながらの客室は、全部で3部屋程。廊下とは襖戸で仕切られた、シンプルな6畳間です。古き良き風情を保ちながらも、必要な箇所には手を入れている様子がわかり、格式を感じるような雰囲気です。因みに手前のオルガンは、ご主人が骨董品市で手に入れた物。このお宿には、これ以外にも様々な骨董品がインテリアとして使われています。
写真:中三川 洸太
地図を見る母屋のお部屋の中で最も人気があるのは、角部屋です。駐車場側に窓が開けているために、他のお部屋よりも明るめです。また、木造家屋は冬の寒さが心配ですが、炬燵をはじめ暖房が完備されており、希望者には夜に湯たんぽの貸し出しなども行っているため、ご安心を。
尚、これらのお部屋にはトイレがありません。これは、建築当初のままの形を保とうという、旅館側の苦肉の策。昔のままのお部屋は、山の景色を眺めながら、風情あるお部屋でゆっくりと過ごしたい方向けです。
写真:中三川 洸太
地図を見る「いくらレトロな雰囲気が良くても、襖戸の入口やトイレなしのお部屋はちょっと・・」
そんな方も多いと思います。
しかし、ご安心ください。湯舟沢温泉の母屋の奥部分は、近年客室を大幅リニューアルしました。廊下から客室の扉を開けるとこの通り!まるでリゾートホテルの客室のようなベッドルームが広がり、さらにその奥にもう一部屋、居間が付いています。そして、もちろんトイレ付!外観とのギャップが楽しい、女性にも安心してお勧めできるプライベート空間です。
この他、母屋から渡り廊下を渡った先には、平成5年に建て替えられたピカピカの新館の客室もあります。
写真:中三川 洸太
地図を見る湯舟沢温泉旅館の自慢は、その歴史ある温泉です。浴室は小さめですが、近代的で清潔感あふれる雰囲気。そして、pH10.0と全国屈指の高アルカリ性のお湯が、湯船に満たされています。
湯面には粉のような、白い湯の華が沢山浮かんでいます。そして、お湯につかると、皮膚が溶けるのではないかと思うくらい、もうトロットロ!源泉温度が低い為、湯船のお湯自体は加温して循環していますが、湯が減ると自動的に源泉が足される仕組みになっており、加水や塩素投入はしていないので、お湯の濃さを感じます。
写真:中三川 洸太
地図を見るお風呂はデザインが異なるものが2種類あり、日によって男女が入れ替わります。そして特筆すべきは、シャワーから源泉が出ること!
こちらの施設のシャワーやカランでは、水の代わりに低温の源泉を利用しています。シャワーを捻ると浴室内に広がる硫黄の臭いに、温泉好きなら興奮すること間違いなし。
そして源泉は、お風呂のお湯以上にトロトロです。どの程度かと言えば、シャンプーを洗い流す際にトロトロすぎて、シャンプーが落ちているのかいないのか分からなくなるほどです。
メタケイ酸や炭酸水素ナトリウムなどの美肌成分をバランスよく含むこちらの源泉は、実際に化粧水に利用されています。観光施設などで販売されている湯舟沢温泉ミストは、既に在庫が足りなくなっている程の人気商品。運がよければ、お宿を訪れた際に購入できるかもしれません。
写真:中三川 洸太
地図を見る宿の前には、お風呂の源泉などがある庭園が広がっていますが、こちらの左奥の山々は、全て湯舟沢温泉の敷地となっています。そのため、春は山菜、秋はキノコなど、季節に応じて山の珍味が食卓を彩ります。また、右奥に見える林は栗林で、秋にはこちらで拾った栗を用いた、栗ご飯が食事のメインとなることも。
そして、湯舟沢温泉の名物の1つが、鯉料理です。鯉は、雪国の内陸部で、貴重なタンパク源として珍重されてきた食材の1つです。湯舟沢温泉では、現在では県内業者より鯉を購入していますが、かつては宿の前の池で、食用の鯉を飼育していました。その他、朝食夕食ともに、山形の名物を中心とした料理が味わえます。
湯舟沢温泉の新館の横に目をやると、細い道が伸びており、その道に沿って杉の木が植えられています。実は湯舟沢温泉は、江戸時代の脇街道沿いに位置しており、この道はその街道の名残なのです。現在は徒歩で1時間の距離にある、五十沢という集落まで、散策路が整備されています。
写真:中三川 洸太
地図を見るところで、数年前、先程の散策路に車道としての整備計画が立ち上がり、この数本の杉の木の奥に植えられていた、大小約40本の杉の木が切り倒されてしまいました。
そのことを残念に思った湯舟沢温泉旅館のご主人は、宿泊棟の新館を建てる際、この杉の一部を用材として用いることとしました。実際に、こちらの新館のお部屋の柱などに、歴史ある杉の木の木材が用いられています。この地の歴史と資源を大切にしたいという、経営者の想いが詰まったお部屋です。
写真:中三川 洸太
地図を見る散策路の先にある五十沢集落は、現在でも茅葺の住宅が残る趣のある地域で、車でも別ルートで訪れることができます。この先の道はかつて、現在の山形県の尾花沢市と、山を越えた、宮城県の加美町を結ぶ街道に繋がっていたとされています。折角なので、余裕を持って宿に訪れ、みちのくの歴史を噛みしめながら古道を歩いてみるのも、ロマンがあるかもしれません。
思いっきりみちのくチックな山奥にも関わらず、新幹線からのアクセスも非常によいというオマケつき。茅葺屋根の秘湯でありながら、近代的な快適さを楽しむことも出来る湯舟沢温泉ワールドを味わいに、山形へと出向いてみませんか。
住所:山形県村山市土生田2040
電話番号:0237-58-2439
アクセス:
・東北中央自動車道村山大石田ICより車5分
・JR山形新幹線村山駅よりタクシー15分、宿泊者送迎有
立ち寄り入浴時間:11:00-16:00
料金:
・入浴 大人一人500円
・昼食付入浴 3315円〜(要予約)
・一泊二食付 9500円〜
2020年2月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/9/18更新)
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