提供元:北越急行
https://hokuhoku.co.jp/「北越急行ほくほく線」は新潟県魚沼地方の上越線「六日町駅」と、日本海に面した信越本線の「犀潟駅」を結ぶ59.5キロの鉄道路線。
かつては首都圏と北陸地方を結ぶ最短経路の一部として、JRの特急「はくたか」号が乗り入れる重要な路線でした。
ところが、北陸新幹線が金沢まで開通したことにより、ほくほく線を走っていた特急列車はすべて廃止となり、大きな転換期を迎えました。
写真:風祭 哲哉
地図を見る特急列車廃止により、運賃収入はなんと10分の1となり、通常であればこれで万事休す、となりそうなところですが、このほくほく線は地域に密着した鉄道として生まれ変わり、現在も元気に楽しく走っています。
もともと、北陸新幹線開通後はこうなることを想定し、地に足をつけた堅実な経営をしていたこともありますが、地域住民に愛され、域外の新たなファンを開拓するためのユニークな取り組みもその理由の一つです。
ほくほく線の人気のひとつは、列車そのもののユニークさ。まず紹介したいのは「超快速スノーラビット」。
これはその名の通り、越後湯沢駅と直江津駅の84.2 kmを最速57分で結び、表定速度(停車時間も含めた平均速度)は時速88.6 kmと、日本一早い普通列車なのです。
上越新幹線からこの列車に乗り継げば、東京駅から直江津駅までの到着時間は北陸新幹線とほぼ変わらず、なんと運賃は1000円以上お得という事実!
もちろんこれで北陸新幹線に真っ向勝負、というほど肩に力が入っているわけではなく、ほくほく線の利便性をアピールするひとつにすぎませんが、かなり攻めてますよね。
提供元:北越急行
https://hokuhoku.co.jp/このほくほく線、超快速があると思えば、超低速列車もあるのです。それはイベント列車として年に数回運行される超低速列車「スノータートル」。
こちらもその名の通り、まるでカメのような鈍足列車で、通常所要1時間程度の犀潟駅〜六日町駅間を4時間かけて走行する列車として登場し、現在は夜のトンネル探検などの体験も含めたツアーとして実施されていますが、なんとこの「ナイトタートル」ツアーが、「鉄旅オブザイヤー2019」のグランプリを受賞してしまったのです!
攻める鉄道ほくほく線、おそるべし!
提供元:北越急行
https://hokuhoku.co.jp/そしてもうひとつの名物列車は「ゆめぞら」。
トンネルの多いほくほく線の特徴を活かし、日本初のシアター・トレインとして登場したこの列車は、トンネルに入ると突然電車の天井が巨大スクリーンに変わり、コンピューター・グラフィックで作られた映像が流れます。
全部で5ヵ所のトンネルで「宇宙」「星座」「花火」など5種類の映像が楽しめる「ゆめぞら」は、毎週日曜日に運行、なんと普通運賃のみで乗車できます。
写真:風祭 哲哉
地図を見るほくほく線は駅もユニーク。
険しい山岳地帯を貫く長いトンネルをいくつも抜け、頸城平野(くびきへいや)に出ると、まるで宇宙船のような形をした不思議な駅に到着します。
写真:風祭 哲哉
地図を見る「トンネルを抜けると未知との遭遇だった」
同じ新潟でも、川端康成の「雪国」とはかなり違いますが、思わずそんな一節が思い浮かんでしまうこの駅は「くびき駅」。
これは建築家の毛綱毅曠(もずなきこう)氏が設計したもので、機能から建築を作ることを否定し、思想から建築を作り出していく、この建築家独特の作品でもあります。
写真:風祭 哲哉
地図を見るこのドームのような形態は、決して大きくない建物にボリューム感を持たせ、従来の駅にはないエネルギーを発揮させるためのもの。
駅とは本来、日常とは異なる場所への出発の場。その気持ちの変化を演出するための工夫をちりばめて、駅本来の役割を訪れる人々に感じてもらえるように設計されたものである、とされています。
写真:風祭 哲哉
地図を見る六日町から犀潟方面へ2つめ、魚沼丘陵のトンネルの中にあるのが美佐島駅。
ここは駅舎が地上でホームが地下のトンネル内にある、いわゆる「モグラ駅」。上越線のモグラ駅として有名な土合駅ほど地下深くにあるわけではなく、深さは10メートルほどで階段も数十段ですが、ここにはほかの駅にない特徴があるのです。
写真:風祭 哲哉
地図を見るほくほく線には「超快速スノーラビット」をはじめとする快速列車が走っていますが、この美佐島駅には停まりません。前述のように、これらの列車はとにかくスピードが速く、トンネル内の通過時には大変な風圧が発生します。
そのためホーム入口に頑丈な扉があり普通列車が到着した時にしか出られず、乗客は地下の待合室で列車の到着を待つのです。
もちろん快速列車が通過する際は大変危険なため、ホームに出ることができないのですが、かつて最高時速160キロの特急「はくたか」が通過する際は、この待合室の前でその圧倒的な風圧を体験?するファンが多く訪れていました。
動画:風祭 哲哉
地図を見る現在の通過速度は「超快速スノーラビット」の時速110キロが最速ですが、それでもその風圧は大変なもの。
その様子を動画に納めましたので是非ご覧ください。特に列車通過後の風圧による音が恐ろしいですよ。
※現在美佐島駅のホームは十日町駅より監視されており、列車通過時には入ることができないようになっていますが、大変危険ですので、くれぐれも風圧体験は待合室側でお願いします。まあこの音を聞けば怖くて出られないですけどね(笑)
写真:風祭 哲哉
地図を見るほくほく線沿線は、3年に一度、越後妻有の里山で展開されるアートトリエンナーレ「大地の芸術祭」の主会場になる場所で、車窓からはその作品群を眺めることができます。
列車が「まつだい駅」に差し掛かると見えてくるのが、この地区の総合文化施設でありアート作品でもある「まつだい雪国農耕文化村センター 農舞台」の建物。ここは大地の芸術祭開催期間以外でも、雪国農耕文化とアートのフィールドミュージアムとして楽しむことができます。
写真:風祭 哲哉
地図を見る「まつだい農舞台」で最も有名なアートのひとつがイリヤ&エミリア・カバコフの作品である「棚田」。
展望台から望むと、伝統的な稲作の情景を詠んだテキストと対岸の棚田で農作業をする人々の彫刻が次第に溶け合っていくような感覚になってくるから不思議です。
「農舞台」にはその他のアート作品や越後妻有の滋味豊かな味が楽しめるレストラン「越後まつだい里山食堂」もあります。
<まつだい農舞台の基本情報>
住所:新潟県十日町市松代3743-1
電話番号:025-595- 6180
アクセス:まつだい駅より徒歩2分
写真:風祭 哲哉
地図を見るまつだい駅から見えるもうひとつのアート作品が草間彌生さんの「花咲ける妻有」。
草間さんならではの水玉が描かれた巨大な花のオブジェは越後妻有を代表的するアートとして人気の作品。ここもまつだい駅から徒歩1分ですが、途中下車しなくても車窓から眺めることもできます。
ご覧いただいた通り、ほくほく線、めっちゃ攻めてて面白いですよね。
でも本当の狙いは、奇をてらい、その場限りの打ち上げ花火を行うことにあるのではありません。こうしたユニークな企画を行うことで多くの人に沿線地域への興味を持ってもらい、何度も訪れてもらうことで地域全体を活性化をするのが真の目的なのだと言います。
地域を活性化し、地域と共生する、そこにこのほくほく線が大きな環境変化にも耐え、元気に生き延びている理由があるのかもしれませんね。
2020年2月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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