紀州の古刹「道成寺」絵とき説法で聞く安珍と清姫の物語

紀州の古刹「道成寺」絵とき説法で聞く安珍と清姫の物語

更新日:2020/02/27 17:30

M Maririnのプロフィール写真 M Maririn 神社仏閣巡り人、50代からの女子旅愛好家
歌舞伎や能などで知られる安珍と清姫の物語。この恐ろしくも悲しい恋の話の舞台となったのが和歌山県日高郡日高川町にある「道成寺」です。こちらのお寺では道成寺縁起の写本を使った安珍清姫の物語「絵とき説法」を聞くことができます。

また文武天皇の夫人となりこの寺を建てた宮子姫の話も伝わっています。二人の女性の数奇な運命の舞台となった寺を訪ねてみませんか。

美しい黒髪の姫の願いで建てられた寺

美しい黒髪の姫の願いで建てられた寺

写真:M Maririn

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紀州の古刹道成寺。奈良時代の大宝元年(701年)に建てられて以来約1300年の歴史を紡いできた和歌山県最古の寺です。最初は法相宗でしたが、真言宗を経て紀州徳川家の命で天台宗になりました。

この寺には二人の女性にまつわる不思議な話が伝わっています。その一つが文武天皇の夫人となった宮子姫の物語。この寺の建立にかかわる話です。

美しい黒髪の姫の願いで建てられた寺

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奈良時代、日高川の河口の漁村に住む夫婦の娘には髪の毛が一本もありませんでした。夫婦は海から拾い上げた一寸八分の観音様を拝むうちに娘には髪が生えはじめ、やがて艶やかな黒髪の美しい娘に成長しました。

娘の噂は奈良の都にまで伝わり、噂を耳にした内大臣・藤原不比等は娘を養女としました。娘は宮子という名をいただきその美貌と聡明さから文武天皇の夫人に選ばれ、後の聖武天皇となる皇太子を授かったのです。

宮子姫は故郷の両親と観音様のために文武天皇にお願いして寺を建ててもらいました。それがこの道成寺なのです。

美しい黒髪の姫の願いで建てられた寺

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文武天皇の命を受け寺の建立にかかわりながら完成前に亡くなってしまった紀大臣道成(きのだいじんみちなり)にちなんで道成寺と名付けられたと伝えられています。

境内には重要文化財の朱塗りの仁王門と南北朝時代に再建された本堂、和歌山県指定重要文化財の三重塔などがあり歴史の重みを感じられます。

安珍清姫の話を伝える「絵とき説法」

安珍清姫の話を伝える「絵とき説法」

写真:M Maririn

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道成寺といえば思い出されるのがもう一つの有名な話、それが「安珍と清姫」の物語でしょう。

平安時代の延長六年(928年)、福島県白河市から熊野本宮大社を目指し修行の旅をしていた安珍という若い僧が真砂庄(今の田辺市)で一夜の宿を借ります。その家の娘・清姫は安珍を一目見て恋に落ち、その夜安珍に熱い思いを伝えます。しつこく言い寄る清姫に安珍は熊野の帰りに寄ると言い残し旅立ちます。

しかし待てど暮らせど戻らぬ安珍。だまされたと知った清姫は安珍を追いかけるうちに大蛇に姿を変え、道成寺の鐘に隠れていた安珍を焼き殺してしまい自身も命を絶ってしまいます。宮子姫の玉の輿のような話とは真逆の哀れな恋物語です。

安珍清姫の話を伝える「絵とき説法」

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道成寺の縁起堂では安珍と清姫の物語を室町時代に作られた絵巻物「道成寺縁起」の写本を広げて説明する「絵とき説法」を行っています。

色鮮やかな絵巻物を書見台に広げながら安珍と清姫の不思議な話とともに、お寺オリジナルの「妻宝極楽」という言葉を使って「女性がこうなるのも男の責任。奥さんは大事にしましょう」と夫婦の教訓や仏の慈悲の話などを織りこんだ絵とき説法。ご住職のユーモアを交えた軽快な語り口についつい引き込まれてしまいます。

安珍清姫の話を伝える「絵とき説法」

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不思議な魅了を放つ道成寺の伝説は能や日本舞踊、文楽、歌舞伎などに取り入れられ「道成寺物」という芸能が生まれました。それだけでなく文学や絵画、演劇など現在に至るまでに様々な芸術に影響を与えてきました。今でも「道成寺物」の公演前には成功を祈って関係者が参拝に来るそうです。

絵とき説法の行われる縁起堂の正面には安珍と清姫それぞれの像が祀られており、舞台で使われた道成寺の鐘や衣装、演じた役者の写真や絵画などが飾られています。

※絵とき説法は撮影不可

国宝や重要文化財の貴重な仏像

国宝や重要文化財の貴重な仏像

写真:M Maririn

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紀州随一の歴史を誇る道成寺では貴重な仏像も拝見できます。宝物殿では平安時代初期に作られたお寺全体の御本尊・千手観音菩薩、脇侍の日光菩薩、月光菩薩の3点の国宝をはじめ十一面観音菩薩像など6点の重要文化財、釈迦如来像など4点の県指定文化財に指定された仏像などを常時公開しています。

千手観音菩薩と日光菩薩の間には宮子姫の像があり、良縁や開運を願って多くの女性が参拝しています。

※宝物殿は撮影不可

国宝や重要文化財の貴重な仏像

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本堂に祀られているのは重要文化財の初代本尊千手観音菩薩。奈良時代後期に作られ日本で最初か二番目に古いといわれる千手観音菩薩です。

国宝や重要文化財の貴重な仏像

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念仏堂に祀られているアフロヘアのような髪型の五劫思惟阿弥陀如来像。五劫の劫とは天女が百年に一度舞い降りて羽衣で岩を撫で、その岩が無くなるまでの長い時間のこと。その五倍という気の遠くなるような間、衆生を救うために座禅思惟され髪の毛が伸びて渦高く螺髪を積み重ねた頭となられた様子をあらわした仏像です。

お守りや御朱印を選ぶ楽しみも!

お守りや御朱印を選ぶ楽しみも!

写真:M Maririn

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道成寺の御朱印は3種類。釣鐘や五劫思惟阿弥陀如来像の姿の入ったものもあり御朱印ファンもうれしいですね!

お守りや御朱印を選ぶ楽しみも!

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干支守りや宮子姫良縁御守、道成寺ものや宮子姫の姿が描かれた絵馬などがあります。女性に縁の深いお寺だけに華やかな雰囲気です。

お守りや御朱印を選ぶ楽しみも!

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道成寺物の場面があしらわれた一筆便や絵ハガキ。芸事上達の芸道御守もありますよ。

不思議な魅力が詰まった道成寺

不思議な魅力が詰まった道成寺

写真:M Maririn

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道成寺では寺にまつわる「道成寺の七不思議」を紹介しています。その一つが「三重塔の不思議」。この塔の屋根は一階、二階が一般的な平行垂木、三階だけ扇垂木で支えられています。

この三重塔には不思議な民話が伝わっています。大工の棟梁が塔を二階まで組み上げて休憩していると、通りかかった巡礼から扇垂木にしてはどうかと助言を受けます。三階を扇垂木にしたところ大変見栄えが良くなり「全部扇垂木にしたらよかった」と悔やんだ棟梁は三階からノミをくわえて飛び降り自殺したとか…。

不思議な魅力が詰まった道成寺

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七不思議のひとつ「鐘楼の位置」。昭和50年代の発掘調査で創建時は法隆寺を左右逆にした伽藍配置であったことが判明し、そこから推定された初代鐘楼の場所には入相桜(いりあいざくら)という銘木がありました。桜の周囲からは焼け土が出土したそうです。やはりここでは放火無理心中があったのでしょうか(たんなるたき火?)

この他にも「石段の不思議」「仁王門の不思議」「御開帳と秘仏」「娘道成寺の人気」「無き鐘ひびく道成寺」があり、境内には説明板もありますので巡ってみてはいかがでしょうか。

不思議な言い伝えや貴重な仏像群や建物などあまたの魅力が詰まったお寺「道成寺」に足を運んでみてくださいね!

道成寺の基本情報

住所:和歌山県日高郡日高川町鐘巻1738
電話番号:0738-22-0543
アクセス:
JRきのくに線「道成寺」下車、徒歩約8分。又は「御坊」駅からタクシー(約5分)
拝観時間:午前9時〜午後5時 ※年間無休(入山のみは無料)
宝仏殿・縁起堂(絵とき説法)拝観:
大人600円、子供300円(19名以下予約不要)
※午前9時から午後4時30分までに受付に拝観申し込み

2020年2月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2020/01/18 訪問

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