南イタリア・プーリア州中部の「アルタムーラ」は、周りを小麦畑に囲まれた“パンの街”。中世から街中にはパン屋が連立し、その腕を競い合ってきたハイレベルなパン天国です。
2003年にイタリアで初めてEU(欧州連合)から特産品を保護する認証マークのうち、D.O.P(原産地名称保護)を与えられたご当地パンがあるグルメタウン。イタリア屈指のパンが食べられる美食旅の巡礼地です。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見るアルタムーラのパンの材料は、硬質小麦、天然酵母、水、塩の4つだけ。形は「鞍」(伊語でアッカバラート)と「牧師の帽子」(伊語でア・カッペロ・ディ・プレテ)の2種類。
前者は高さがあり、分厚いくちびるのような形。後者は割れ目がなく平たい丸型です。地元の人は、簡単に“高い方”(伊語でアルト)”と“低い方”(伊語でバッソ)と呼んでいます。
パンの大きさは500グラムから最大5キロまで。1キロのパンの賞味期限は1週間が目安。スーツケースに詰めて日本に持ち帰ることも可能です。
自宅で食べるときはトースターで両面をこんがり焼き、オリーブオイルをまわしかけてパクッ。うれしいことにパンの断面はハート形。味もさることながら、目でも喜ばせてくれるWハッピーなパンです。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見るパン屋激戦区のアルタムーラですが、街の見どころが集まる旧市街にパン屋は数えるほど。多くは新市街に集中しています。
観光の途中に訪れるなら、1423年創業の「フォルノ・アンティーコ・サンタキアラ」がイチオシ。世界中のガイドブックに掲載される旧市街の人気店です。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る店内に入ると、瞬く間に芳醇な小麦の香りに包まれます。大小さまざまな焼きたてパンがずらーりと並び、思わずパンに鼻を近づけずにはいられないはず。パンと同じくらい人気のフォカッチャはどれにしようか迷うほど種類豊富です。
お店では、奥ゆき3メートルを超える大きな釜でじっくり時間をかけてパンが焼かれます。ここは、旅行者にはうれしい!製造工程が見学できる1軒です。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見るこのお店の賢い利用方法は、ランチ。テラス席が設置されているので、焼きたてのパンやフォカッチャを贅沢にその場でいただけます。
さらに、野菜やチーズがのったブルスケッタやパンのサラダ(写真)など、自慢のパンを使ったご当地メニューも楽しめます。ランチで訪れる際は人気店のため予約必須です。
<フォルノ・アンティーコ・サンタキアラの基本情報>
住所:Via Luca Martucci 10,70022 Altamura
電話番号:+39-329-152-4177
営業時間:8時〜13時30分/17時〜21時
定休日:日曜日
アクセス:アルタムーラ大聖堂から徒歩4分
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る続いては、旧市街から徒歩3分、1838年創業の「ディ・ジェズ」。アルタムラーニ(アルタムーラの人)がこのお店が一番!と太鼓判を押す地元の人御用達の名店です。
お店では、1日当たりなんと!4トンのパンが焼かれます。これだけの量が毎日消費されるとは・・・名店の実力にビックリ。尚、希望者には釜出しの作業を見学させてもらえます。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る創業から180年以上地元に愛されるパン職人のディ・ジェズ家。長老のルカさん(写真中央)は85歳、今でもしっかり現役です。
現在は、パンのほかにビスケットやプーリア名物の輪っかスナック“タラッリ”、フォカッチャなど、そのバリエーションは2000種類にも及びます。地元の人の食卓に朝から晩まで欠かせない品揃えです。
たくさんあるパン屋のなかでも“アルタムーラのパンD.O.P”(シール貼付)を販売できるのは、生産者協会に加盟する10軒のみ。「ディ・ジェズ」は、そのうちの貴重な1軒です。
外側は食欲をそそる香ばしい小麦の香り、歯ごたえはしっかり強め。内側は黄金色の生地でもっちりとした食感です。その美味しさは一度食べれば、もう病みつき。
<ディ・ジェズの基本情報>
住所:Via Pimentel Eleonora Fonseca 17,70022 Altamura
電話番号:+39-080-314-1213
営業時間:6時30分〜13時30分/16時〜21時
定休日:日曜日
アクセス:旧市街の入口バーリ門から徒歩3分
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る3軒目は、2019年にテレビ番組「ピッツァ・ヒーロー」で優勝した街の実力店「ペトロネッラ」。
今では、チャンピオンが作るパンを買うためだけに多くの人が訪れる話題の人気店です。12時前後は行列ができるので、この時間はできるだけ避けましょう。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見るペトロネッラ家は代々パン屋の家系で、多くの親戚が同じ街にのれん分けしたパン屋を構える名門一族。このお店は、ジョヴァンニさんとミケーレさんの兄弟ふたりを柱に家族で切盛り。
小さい店内には大きなパン釜が鎮座し、カウンター越しに5席のイートインスペースがあります。ここでパンを食べながら、釜出しの光景を眺めることもできますよ。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見るこのお店の強みは、“ピッツァ”と呼ばれる具をのせたフカフカ食感の惣菜パン。ピザほど生地が固くなく、フォカッチャのように型に入れて焼くことはしません。
日替わりで常時4種類ほどのピッツァが並び、その場で切売り。トマトソースとモッツァレラチーズの王道コンビや、ピリ辛サラミと青菜の組合せがオススメです。
<ペトロネッラの基本情報>
住所:Via Piccinni 83,70022 Altamura
電話番号:+39-080-311-8639
営業時間:7時〜14時/16時30分〜21時
定休日:日曜日
アクセス:旧市街の入口バーリ門から徒歩12分
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る最後は、世界遺産の街マテーラへと続く道に大きな看板をだす「ラ・マッジョーレ」。1880年にこのお店を創業したバリーレ家は、地元アルタムーラだけでなくイタリア各地に販売網を持つやり手のパン屋。
棚にぎっしり並べられたパンの幸せな香りといったら・・・店内へはヨダレ覚悟で入店を!ここでは珍しく日曜日も焼きたてパンが買えます。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見るこのお店の創業者は、アルタムーラのパン生産者協会の創設者。よって、こちらでも“アルタムーラのパンD.O.P”を買うことができます。
しかし、ここで注目するべきは、“セナトーレ・カッペッリ”のパン。形はアルタムーラのパンと同じですが、使う小麦の種類が異なります。
絶滅の危機にあったセナトーレ・カッペッリ種です。1960年代に再びその栄養価値が見直され、今では美食家が愛する小麦として一躍人気に。「ラ・マッジョーレ」では、この珍しいパンを購入することができるのです。
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る店内には、貴重なセナトーレ・カッペッリ種の小麦粉や各種郷土菓子が揃い、目移りするほどの品揃え。そのなかでも、お土産にオススメなのが“モスタッチョーリ”。小麦粉とイチジクのシロップ、アーモンドで作ったほろ苦クッキー。甘すぎず日本人にも喜ばれる一品です。
<ラ・マッジョーレの基本情報>
住所:Via Matera 184,70022 Altamura
電話番号:+39-080-310-4686
営業時間:8時〜21時
定休日:なし
アクセス:旧市街の入口バーリ門から車で10分
写真:ケイコ ソリーノ
地図を見る噛めば噛むほど、小麦の味がしっかり口に広がるアルタムーラのパン。一生に一度は現地で食べるべき至福の味です。
“アルタムーラのパンD.O.P”について補足すると、生産者協会が定める細かい規定に準拠して製造されるパンです。生産者協会に加盟してないパン屋はこれらの規定を守る義務がなく、自由にパン作りが行なえます。ただし、EU(欧州連合)に認定された製品にはなりません。
近年では規定を満たさないのに、“アルタムーラのパンD.O.P”のブランドを悪用した詐欺が多発しています。
2020年4月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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