京都と大阪の境目「乙訓」で地元に愛される歴史をめぐる旅

京都と大阪の境目「乙訓」で地元に愛される歴史をめぐる旅

更新日:2020/03/31 14:26

大阪から京都市街へ向う途中の大山崎・長岡京・向日市一帯は乙訓(おとくに)と呼ばれ、昔は街道を人々が行き交う賑やかな場所でした。大河ドラマ明智光秀のゆかりの地として注目を浴び始めたこの場所は、現在、地元の人達がその歴史や文化を新しい形で大切にしている姿を見ることができます。京都市内とは別の顔をもつ、趣のあるエリアをゆっくり旅してみませんか?

まずは大山崎という場所を知ろう!

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大山崎は乙訓地域の西端に位置し、明智光秀と羽柴(豊臣)秀吉が戦った山崎合戦で有名な天王山がある場所です。宇治川、木津川、桂川の3つの川が集まり、淀川となって大阪へ向かう流通の要でもありました。様々な人が行き交ったこの場所は、かつて油座として栄えていました。

日本で唯一の油の神様「離宮八幡宮」がJR山崎駅からすぐの所にあります。離宮八幡宮は平安時代、清和天皇がお告げの夢から九州の宇佐八幡宮を分霊し、平安京の守護神として奉安するよう行教という僧侶を遣わしたのが始まり。帰途、行教は山崎の地で霊光を見、そこを掘ると岩間に水が湧き出してきたので、名前を石清水八幡宮として859年に創建されました。その後、男山へ分霊され、この場所は嵯峨天皇の離宮があったため現在は離宮八幡宮と呼ばれています。

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この離宮八幡宮では神官が長木というテコの原理を利用した圧搾機を作り、えごまの種から油を絞って、神社の灯火に用いるようになりました。この道具によって搾油が盛んになり、鎌倉時代から戦国時代にかけて、大山崎は油の商いで栄えます。

現在オメガ3脂肪酸など健康によいとブームのえごま油ですが、意外なことに菜種油が使われるようになるまで、日本で油といえば、えごま油でした。えごま油は食用以外に、明かり、雨具などの防水、工芸など重宝されてきました。日本における製油発祥地ということから社殿には「崇敬発起人」として昭和産業・豊年製油・味の素など日本の製油大企業の名が連ね、毎年4月には「日使頭祭(ひのとさい)」が行われ油脂業界関係者が多く参拝しています。

離宮八幡宮境内には、翁が革袋に荏胡麻油を入れて、灯油として八幡神に献納している姿の油祖の像があり、「油の神さん」として地域の人たちにも親しまれてきました。

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JR山崎駅付近もかつては境内であったため、ほど近くに駅があり、その広大な神領で「西の日光」と呼ばれたほど栄えていました。現在の離宮八幡宮は、厄除祈願、健康や安全、仕事の発展などを願って皆が訪れています。

<離宮八幡宮の基本情報>
住所:京都府乙訓郡大山崎町大山崎西谷21−1
電話番号:075-956-0218
アクセス:JR京都線「山崎駅」下車徒歩1分/阪急「大山崎駅」下車徒歩3分
営業時間:6:00〜17:00

参覲交代や西国巡礼でにぎわった西国街道沿いで町屋めぐり

参覲交代や西国巡礼でにぎわった西国街道沿いで町屋めぐり
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西国街道とは、京都の東寺口と西は下関・大宰府まで昔の人達が行き来していた道です。離宮八幡宮は西国街道沿いにあり、次にご紹介する向日市の中小路家住宅もこの街道沿いにあります。中小路家住宅のある辺りに少し道を入ると、石畳に白壁の土蔵や塀など趣があり、まるでタイムスリップしたかのように当時の街道の様子が思い描かれます。

中小路家住宅は向日市で初めての国登録有形文化財です。現在主屋は中小路さんご夫婦が大正ロマンを感じるお店を喫茶として運営され、毎月楽しいイベントやお教室など地元の方が集う場として活用されています。地元以外の方ももちろん参加可ですので、ホームページをチェックして気になるイベントに参加してみるのもいいですよ。

参覲交代や西国巡礼でにぎわった西国街道沿いで町屋めぐり
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入口の門をくぐると綺麗に手入れの行き届いたお庭があります。驚くことに中小路家住宅は、個人で管理されている国登録有形文化財。庭の手入れもご主人自らが管理しており、愛情とセンスが感じられます。現在喫茶室として使われている場所は、もともと土間だったところを、管理されている中小路さんのお母様が暮らすためにリフォームされた場所。居心地のよい空間で、旧家の雰囲気を感じながらお茶をいただくことができます。

<中小路家住宅の基本情報>
住所:京都府向日市上植野町下川原48
電話番号:075-921-2657
アクセス:阪急京都線「西向日」駅より 徒歩約8分/JR京都線「長岡京」駅より阪急バス「一文橋」駅下車徒歩約3分
営業時間:10:00〜17:00 定休日 月・火・イベント開催日

歴史ある建物と地域のぬくもりに癒される

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続いては長岡京市の西国街道沿いにある、旧石田家住宅・神足ふれあい町家。江戸時代末期に建てられた国登録有形文化財の旧家は歴史や暮らしを知るための貴重な財産として長岡京市が取得し、休憩所やレンタルスペースとして人々が集う場を提供しています。

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建物の一角にはギャラリースペースもあり、地域の人の作品を鑑賞できます。このふれあい町家の運営を担当しているNPO法人乙訓障害者事業協会のバスハウスの商品や、地域の物産が並ぶコーナーもおみやげ選びに最適。地元の古墳にちなんでデザインされた商品は、この辺りでしか手に入りません!

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毎年2〜3月に部屋いっぱいに展示されるひなまつりの飾りも人気です。
軽食や甘味が楽しめ、持ち込みもOKですので、気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

<長岡京市立神足ふれあい町家の基本情報>
住所:京都府長岡京市神足2-13-10
電話番号:075-951-5175
アクセス:阪急京都線「長岡天神」駅より 徒歩約15分/JR京都線「長岡京」駅徒歩約5分
営業時間:9:00〜18:00 定休日12月28日〜1月4日

人のつながりの新しい形を提案するなかの邸

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最後にご紹介するのが、神足ふれあい町家から西国街道を南へ15分ほど歩いた所にある中野家住宅。こちらも江戸末期に建てられ、平成22年に主屋・茶室・土蔵の三棟が国登録有形文化財に登録されました。現在は「暮らしランプ」が運営する「おばんざいとお酒 なかの邸」が主屋で営業しています。

戦後に施された屋敷全体の増改築には、宮大工・北村傳兵衛が携わっていて、随所に和モダンな雰囲気を醸し出しています。今まで外から眺めるだけで中はどんなだろう?と思っていた地域の人にも開放され、楽しんでもらえる場所になっています。

人のつながりの新しい形を提案するなかの邸
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そしてこの「おばんざいとお酒 なかの邸」は、障害のある人達が夜に働く場としても活用されています。障害のある若い人の中には、午後から働く方がペースを掴みやすい人、昼間大勢の人が動く時間帯を避けたい人など、夜働きたい需要があったにも関わらず、夜に働く場というものがありませんでした。こちらでは、夜の食事の接客、盛り付けなど障害者の方が働き、昼間も庭の手入れや料理の仕込みなど、障害がある人と共にその人の適性や個性を生かしながら運営されています。

人のつながりの新しい形を提案するなかの邸
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お料理はおだしからゆっくり丁寧に作ったおばんざいなど。おだしは京都の老舗「うね乃」の昆布や鰹節を使った「なかの邸オリジナルブレンド」。お酒も地元にあるサントリービールはもちろん、個性豊かな日本酒がメニューに並びます。

二日前までに予約すればランチも楽しめ、メニューは、おばんざいなど入った「なかの邸御膳」となります。食後のコーヒーに、環境負荷の小さな農業を広げることを目指している「坂の途中」が扱うフェアトレードのオーガニックコーヒーはいかがですか?このコーヒー豆の選別も障害者の方々が携わっています。

<なかの邸の基本情報>
住所:京都府長岡京市調子1-6-35
電話番号:075-959-2877
アクセス:阪急京都線「西山天王山」駅より徒歩約8分/JR京都線「長岡京」駅より京阪バス「東浦」駅下車徒歩約4分
営業時間:9:00〜18:00 定休日12月28日〜1月4日

地元に愛される歴史・文化をめぐる旅

大山崎・長岡京・向日市一帯は乙訓(おとくに)と呼ばれ、まだ旅行客に知られていない素敵な場所がたくさんあります。京都市内の神社仏閣とは違った、生活の中に溶け込んだ歴史を感じる京都。街道沿いを歩くことで、新しいお店を見つけたり、地域の人と物語をつむいでみませんか?是非、ゆっくりと乙訓を旅してみてください。

2020年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

取材協力:乙訓・八幡広域観光連絡協議会

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/03/03−2020/03/09 訪問

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