南都随一の名園!奈良「旧大乗院庭園」水鳥と自然に癒される

南都随一の名園!奈良「旧大乗院庭園」水鳥と自然に癒される

更新日:2020/03/20 12:33

花月 文乃のプロフィール写真 花月 文乃 地域文化・民俗文化リサーチャー、グラフィックデザイナー、旅行ライター
奈良にはかつて明治時代に廃仏毀釈で廃寺となった興福寺の門跡寺院、大乗院がありました。

大乗院は平安時代に創建され、その庭園は室町時代に作庭の名手・善阿弥により改修されました。庭園には将軍足利義政はじめ公家達が拝観におとずれ、南都随一の名園と称えられたといいます。

今回は、南都随一の名園と称えられた旧大乗院庭園とそのガイダンス施設、名勝大乗院庭園文化館を紹介します。

興福寺門跡寺院と中世の貴重な庭園遺構

興福寺門跡寺院と中世の貴重な庭園遺構

写真:花月 文乃

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大乗院は一乗院に並ぶ興福寺の門跡寺院で、平安時代(794~1185)の1087年に創建され1180年の南都焼き討ちの後に、現在の位置に移転してきたと考えられています。
門跡寺院とは、皇室や公家が出家して住職を務める寺院、もしくはその住職のことをいいます。興福寺は藤原氏の氏寺であることから、大乗院には藤原氏や藤原氏の系譜に連なる一条家や九条家などの子弟が入寺しました。

興福寺門跡寺院と中世の貴重な庭園遺構

写真:花月 文乃

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大乗院は、廃仏毀釈の影響で明治元年に廃寺となります。
門跡は松園家と改称し男爵となりますが、1877年に大乗院を売却。しばらく西側の御殿は小学校となり、1909年に敷地山上部に奈良ホテルが建設開業されました。1958年に敷地内に国鉄の保養施設が建設される際に、池を中心とする庭園の大部分が国の名勝に指定されました。

1973年には文化庁指定により、公益財団法人日本ナショナルトラストが管理団体となり修復整備を推進。平安遷都1300年記念事業にあわせて、2010年から一般に公開されています。

大乗院庭園は明治時代までに、大きく2回改修されています。
1回目は室町時代、第二十七代門跡・尋尊が作庭の名手・善阿弥に依頼して改修されました。
2回目は江戸時代、安定した経済基盤をもとに、茶室・茶庭などを含めて西小池一帯が築庭されました。現在、奈良国立博物館に移築されている茶室・八窓庵(含翠亭)は、元は大乗院庭園にあったものです。

善阿弥は室町時代に将軍足利義政の寵愛を受け活躍し、大乗院庭園の他に相国寺蔭涼軒なども手がけています。旧大乗院庭園は、中世庭園の名残を残す、善阿弥の数少ない貴重な庭園遺構としても知られています。

歴代門跡の残した資料から知る旧大乗院庭園

歴代門跡の残した資料から知る旧大乗院庭園

写真:花月 文乃

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名勝大乗院庭園文化館は、旧大乗院庭園に併設された大乗院や旧大乗院庭園のガイダンス施設で、入館は無料です。館内には、関係資料の展示室や大乗院の復元模型、茶室などがあります。

大乗院は、1087年に大乗院を開いた第一代・隆禅から、第四十三代まで門跡が続きました。
中世以降の大乗院の様子は、日記や絵画などの資料からうかがい知ることができます。
善阿弥に作庭を依頼した第二十七代門跡・尋尊は1438年に大乗院に入り、以後没する1508年まで長きにわたり大乗院に関わり、著名な日記『大乗院寺社雑事記』を残しました。

歴代門跡の残した資料から知る旧大乗院庭園

写真:花月 文乃

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江戸時代後期の第四十二代門跡・隆温が描いたのが絵画『大乗院四季真景図』です。四季の大乗院庭園の姿が、一枚の絵にまとめて描かれています。『大乗院四季真景図』は、管理団体の復元工事の際、参考とされました。

歴代門跡の残した資料から知る旧大乗院庭園

写真:花月 文乃

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旧大乗院庭園にある休憩施設は、『大乗院四季真景図』に描かれたあずまや「堪雪亭」の遺構がもとになっています。休憩施設付近から眺める景色は『大乗院四季真景図』の景観と一致しており、かつての庭園の姿をしのぶことができます。

明治時代には、廃仏毀釈で荒廃する姿に危機感を持った庭園の研究者が、その景観を後世に残すために絵師・宮崎豊広に大乗院庭園の作画を依頼しました。その絵は現在国会図書館にありますが、その他に宮崎豊広が描いた『元大乗院庭苑四季眺望真景』は、奈良ホテルにあります。

名勝大乗院庭園文化館にコピー展示されている隆温が描いた『大乗院四季真景図』に比べ、『元大乗院庭苑四季眺望真景』は、その意図の違いから記録的な作風に見えます。

名勝大乗院庭園文化館から庭園をのぞむ

名勝大乗院庭園文化館から庭園をのぞむ

写真:花月 文乃

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名勝大乗院庭園文化館の館内から、旧大乗院庭園を眺めることもできます。

一階の庭園に面する大きな窓からは、眼前に旧大乗院庭園が広がります。窓の前には、椅子がありゆっくりと座ることができます。館内には、自動販売機もあるので、お茶を飲みながらくつろげます。

名勝大乗院庭園文化館から庭園をのぞむ

写真:花月 文乃

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一階の茶室と二階の和室は、イベントなどで有料で貸し出していますが、ここからも庭園が望めます。

一階の茶室の丸窓から見る風景は、なんともいえず風流です。

名勝大乗院庭園文化館から庭園をのぞむ

写真:花月 文乃

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二階の和室から庭園を見下ろす眺めは、一階からの景色とは違い、より立体的・空間的に庭園を捉えることができます。ここからは、庭園の全体が大まかに把握できます。

旧大乗院庭園には、東大池と西小池の二つの池とそれぞれの池に付随する島があります。東大池には、朱色の反り橋が架かる中島の他に天神島と三つの島がかたまってある三っ島があります。

旧大乗院庭園は、その長い歴史の中で、その時代時代ごとの門跡が自分の好みで手を加えてきたものと思われます。中島は、中世には既にあったとされ、天神島と三っ島は、江戸時代に造られたものといわれています。

<名勝大乗院庭園文化館の基本情報>
住所:奈良県奈良市高畑町1083-1
電話番号:0742-24-0808
アクセス:
・JR・近鉄奈良駅から奈良交通バスで天理駅・下山行き「奈良ホテル前」下車すぐ
・JR奈良駅から徒歩20分、近鉄奈良駅から徒歩15分

池泉回遊式庭園の魅力を体感しよう

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写真:花月 文乃

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旧大乗院庭園へは、名勝大乗院庭園文化館から入園できます。

旧大乗院庭園は、平成28〜29年度(2016~2017)の整備事業により、東大池北側と東側に回遊園路が導入されると同時に朱色の反り橋が架け替えられ、中島に橋を渡って入れるようになりました。

池泉回遊式庭園の魅力を体感しよう

写真:花月 文乃

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庭園を歩いていると、陸と水面を隔てるなだらかな曲線と木々の移り変わりとともに、たくさんの水鳥の姿が目に飛び込んできます。

この水鳥は、庭園で飼育しているのではなく、全く自然にどこからかやってくる野生の水鳥。その数は多いときでは、100羽になることもあります。旧大乗院庭園には、アオサギ・カワセミ・カモ・シラサギ・カイツブリなどの野鳥がやってきます。

四季折々に姿を変える庭園の姿もさることながら、庭園の中で、無邪気に羽を伸ばして遊ぶ鳥達の姿も見所の一つです。

池泉回遊式庭園の魅力を体感しよう

写真:花月 文乃

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園路が設けられた東大池の北側は庭園の中で一番高いエリアになります。
ここからは、反り橋を含む庭園をやや上から見下ろせるポイントとなっています。

<旧大乗院庭園の基本情報>
住所:奈良市高畑町1083-1
電話番号:0742-24-0808

アクセス:
・JR・近鉄奈良駅から奈良交通バスで天理駅・下山行き「奈良ホテル前」下車すぐ
・JR奈良駅から徒歩20分、近鉄奈良駅から徒歩15分

庭園の魅力を満喫するには回遊がオススメ!

名勝大乗院庭園文化館には、旧大乗院庭園をより深く知ることができる資料が数多く展示されており、旧大乗院庭園とあわせて拝観することで、より深くその背景を学ぶことができます。

名勝大乗院庭園文化館の内部からも庭園を眺めることができますが、この庭園の魅力をより深く体感するには、庭園を実際に歩いてまわってみることをオススメします。

どこか1点から庭園を眺めると、一つの方角から見た庭園しか視覚的にとらえることはできません。
実際に庭園を歩いてみると、盛り土や道の高低による起伏の変化による景色の移り変わりがあり、池を中心にさまざまな角度から異なる表情を味わうことができます。そして、途中で間近に目にする水鳥の姿も、とても身近に感じられます。

あなたも是非、南都随一の庭園「旧大乗院庭園」の魅力をその足で体感してみてください。

2020年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/03/03 訪問

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