写真:吉田 彩緒莉
地図を見る観音信仰の聖地であり、真言宗豊山派(しんごんしゅうぶざんは)の総本山である長谷寺。紫式部の「源氏物語」ほか古くから日本文学上に登場する歴史あるお寺です。おとぎ話「わらしべ長者」では主人公に幸運のもととなる「わら」を授ける優しい観音様が登場しますが、その観音様こそ長谷寺のご本尊。身分を問わず愛されてきた著名なお寺であることがわかります。
長谷寺には「花の御寺」という美しい別名があります。四季折々異なる花が咲き乱れ、風光明媚な寺であることでも知られています。奈良の観光地と言うと、世界的に知られる東大寺の印象を持つ人も多いかと思いますが、都として開かれた場所とは全く異なる、自然豊かな山懐に抱かれた長谷寺のその風情を目にすると「これぞ日本の寺」という毅然とした迫力を強く感じられることでしょう。
何よりもありがたいのは、長谷寺がまだまだ人に荒らされていないこと。ゆっくりと見て歩ける丁度良い人出は、自然を愛でる散策にもってこいの環境です。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る拝観料(大人500円・小学生250円)を払い仁王門をくぐると、立派な瓦屋根の回廊が出迎えてくれます。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る歴史を感じさせる柱が連なり、何とも美しいこの回廊は重要文化財「登廊」。平安時代である1039年に造られ、1000年もの歴史がある回廊です。雨の日や雪の日はこの回廊の存在がどんなに参拝者を助けてきたことでしょう。
長谷寺は西国三十三か所観音霊場巡りの第八番にあたる寺。「南無観世音菩薩」と書かれた白衣を着た方々とはよくすれ違います。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る「登廊」は春日大社の社司、中臣信清が、我が子の病が治るよう長谷寺に祈願したところ、無事に回復したことから、そのお礼に寄進したもの。約200メートル続く回廊の階段数は399段で、上廊・中廊・下廊の3つにわかれているうちの下廊と中廊は1894年に再建されています。
新緑の季節に訪れると、回廊の柱の間から見える萌えるような木々の緑が美しく、風も心地よしです。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る「登廊」も終盤に差し掛かるころ、手水舎があり、竜神の口から冷たい水がちょろちょろと流れ出ています。こちらで手を清め、いよいよ本堂へ。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る断崖絶壁に造られた素晴らしい建築美の本堂は、山の木々に抱かれ壮麗な雰囲気。十一面観世音菩薩立像が安置される正堂と礼堂をつなげて一つにした「双堂」という様式です。
前述した、おとぎ話「わらしべ長者」に出てくる観音様は、この本堂にいらっしゃいます。
主人公の若者は観音様に「成功したい」祈願し、観音様に「最初に手に取るものを大切にせよ」という教えを受けます。そして本堂を出た時に転び、1本のわらを掴み、次々と物々交換をくりかえして、最後は大きな邸宅に住み幸せをつかむのです。その若者に大きなチャンスを与えた観音様こそ、長谷寺のご本尊であり国内最大級9.18mのメートルもある十一面観音!
毎年、観音様の大きな足に触れて祈願できる機会があります。興味のある方長谷寺のホームページをチェック。直接足を触ってお願いしたら、転んでわらを掴むような幸運が降って来るかも?
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る長谷寺の本堂では、自然の木々を映す素晴らしい環境の中、早朝の境内で僧侶の方々と共に読経する体験ができます。澄み切った朝の空気の中で、山々に向かい数十名の僧侶の方々が一斉に唱える読経の中にいると、宗教や思想に関係なく、心が震えるほどの感動を覚えます。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見るさて、いよいよ長谷寺の最大の見どころ、境内の前に造られた素晴らしい舞台へ足を進めましょう。「どこかで見たことがある」と思った方は正解です。あの京都の清水寺と同じ建築方法で造られたお寺なのです。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る山々を見渡すために、自然を愛でるためだけに造られたかのような舞台に立つと、長谷寺の全景と素朴な里山の光景が見渡せます。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る長谷寺と言うと関東の人は真っ先に鎌倉の長谷寺を思い出すことでしょう。鎌倉の長谷寺も海を望む素晴らしい環境にあり、海の絶景で知られています。対してこちらはの長谷寺に広がるのは山の絶景。そんな風景の美しい共通事項だけではなく、実はこの2つのお寺は十一面観音により深く結ばれているのです。
鎌倉の長谷寺のご本尊である観音を見たことがある人は、このお寺の十一面観音を見た時「鎌倉の長谷観音そっくり!」と驚くはず。
実は721年に長谷寺が開山された時、同じ木から2体の観音像が掘られ、1体はここ、奈良の長谷寺におさまります。もう1体は人々の救済への願いを込め、海へと奉納されたのです。その約15年後、三浦半島に観音像が現れ、鎌倉長谷寺のご本尊になったという奇跡的なできごとがあったというから驚きです。偶然似ていたのではなく、同じ木から掘り出されたまさに双子のような観音像だったという訳ですね。
本堂は例年4月上旬から下旬にかけての桜の季節、花に包まれます。まるでふわふわしたピンク色の雲の上に、本堂が浮かんでいるような幻想的な光景です。
桜の季節に間に合わなくても大丈夫。お次は登廊のすぐ横に、赤・ピンク・白の牡丹が咲き乱れます。牡丹は150種7000株もあり、桜の時期が終わる4月中旬〜5月上旬ごろです。
そして梅雨の時期は紫陽花がしっとりとした風情で参拝者を迎えてくれます。特に最初の「登廊」を上り、次に進まず、そのまま石段を直進した場所の約40メートルの斜面に紫陽花が咲く「あじさい園」が見事。
紅葉の季節は真っ赤な紅葉が長谷寺を包み込みます。特に戦後に初めて作られたという五重塔の周辺は紅葉が群生。五重塔の朱色の柱と紅葉の赤色が混ざり合い、雅な華やかさ。
このところのインバウンドブームで、日本には外国人観光客をはじめ、多くの人々が押し寄せる寺院が増えました。ここ、奈良の長谷寺は未だ山の山腹で、参拝客のために美しい自然を見せてくれているかのような神秘的な雰囲気が残ります。本来のお寺にあるべき姿と、四季の美しさを愛でに行くなら、奈良の長谷寺は最高の環境です。
住所:奈良県桜井市初瀬731-1
電話番号:0744-47-7001
アクセス:
【電車】近畿日本鉄道長谷寺駅から徒歩約15分
【車】西名阪自動車道天理ICから約40分
2020年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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