ロンドン「キューガーデン」最も美しい姿を見せる春と夏

ロンドン「キューガーデン」最も美しい姿を見せる春と夏

更新日:2021/03/03 11:02

Lady Masalaのプロフィール写真 Lady Masala 知られざる名所案内人、蚤の市マニア
イギリス王室と深いつながりがあり、世界遺産にも登録されている「キューガーデン」は、広大な敷地を有する植物園。世界各地から採集された5万種類以上にも及ぶ植物の展示と研究が行われている園内では、熱帯植物を中心にありとあらゆる植物を見ることができます。花々が開花する春から夏にかけては、一年中で最も美しい季節。そんな色と香りで満たされる「キューガーデン」を訪れてみませんか。

イギリスを代表する春の花「ラッパ水仙」と春を告げる花々

イギリスを代表する春の花「ラッパ水仙」と春を告げる花々

写真:Lady Masala

地図を見る

世界でも最大級の規模を誇る「キューガーデン(Royal Botanic Gardens, Kew)」は、絶滅の危機に瀕する種や秘境の高山植物など、貴重な草花の宝庫です。そして、珍種だけではなく、野草の姿もちらほら。季節の変わり目には、そんな野に咲く花々に注目しましょう。

冬の終わりを告げる白く可憐な「スノードロップ」は、早い年では1月中旬には咲き始め、次々と開花する早春の花々の先駆けとして来園者の目を楽しませてくれます。まだ枯れ葉が残る木々の下に、雪のように輝く花を見つけると心が浮き立ちます。

イギリスを代表する春の花「ラッパ水仙」と春を告げる花々

写真:Lady Masala

地図を見る

「ラッパ水仙」は、春の到来を告げる花として知られています。日照時間が短く陰気な冬が過ぎ去り、日ごとに日照時間が長くなる春の象徴です。日本人が桜の開花を心待ちにしているように、イギリス人はこの黄色い花を見て春の訪れを感じるといいます。クロッカスの後を追うように咲き始めるラッパ水仙は、園内のいたるところで見られます。強い芳香を放つ花々に近づいて、その香りも楽しんでください。

イギリスを代表する春の花「ラッパ水仙」と春を告げる花々

写真:Lady Masala

地図を見る

園内に数多くある温室のなかでも、キューガーデンのシンボル的存在と言える「パームハウス(Palm House)」は、ヴィクトリア朝に建てられたという温室。形自体もエレガントな室内には、熱帯雨林の植物が集められています。ジャングルのように高温多湿で、いつ出かけても蒸し暑いことには変わりありませんが、春と夏は、一年に一度しか咲かない可憐な花が見られるチャンスです。自然界では絶滅してしまったという珍しい種もあり、一見の価値があります。

自然のままの荒れ野に咲き誇る「イングリッシュブルーベル」

自然のままの荒れ野に咲き誇る「イングリッシュブルーベル」

写真:Lady Masala

地図を見る

広い園内には、37エーカー(約15万平方メートル)にも及ぶ「ナチュラルエリア(Natural Area)」があります。この広大な土地は、自然のままの姿を保つことを条件にヴィクトリア女王から寄贈されました。手つかずのウッドランド(森林)では、4月中旬から5月にかけて青い絨毯を敷き詰めたように咲き誇るイングリッシュブルーベルが見られます。

自然のままの荒れ野に咲き誇る「イングリッシュブルーベル」

写真:Lady Masala

地図を見る

ブルーベルには、イングリッシュとスパニッシュ、そして、2つの交配種であるハイブリッドの3種類があります。名前からも察せられるように、スパニッシュは外来種ですが、在来種を駆逐する勢いで増え続けています。その結果、イギリス国内で見られる野生のブルーベルのほとんどは、スパニッシュかハイブリッドとなってしまいました。

イングリッシュは、在来種でありながら、もはや森の奥深くにある群生地に行かないと見られなくなってしまったのです。ここキューガーデンにある広大なウッドランドは数少ないイングリッシュブルーベルの群生地として知られています。

自然のままの荒れ野に咲き誇る「イングリッシュブルーベル」

写真:Lady Masala

イギリスを代表する春の花イングリッシュブルーベルには、妖精の化身であるとの伝承が残っています。青い花に姿を変えた妖精たちが通りすがりの人々を虜にしてしまうというのです。心地よい香りも相まって、それを見る人々を惹きつけるのは本当のことようです。

パームハウスとのコントラストが美しい「ローズガーデン」

パームハウスとのコントラストが美しい「ローズガーデン」

写真:Lady Masala

地図を見る

イギリスで一年のうちで最もよい季候といわれている6月は、バラのシーズン。キューガーデン内の「ローズガーデン」も例外ではなく、170種類もあるというさまざまな色や形のバラの花が一斉に咲き始めます。キューガーデンのシンボルともなっているパームハウスに面した場所にあるバラ園は、1848年にイギリスの造園家ウィリアム・ネスフィールドによって設計された歴史ある庭園です。

パームハウスとのコントラストが美しい「ローズガーデン」

写真:Lady Masala

地図を見る

心地よい香りのバラは、朝早く、または、夕方に最も強い芳香を放ちます。予定が合えばその時間に行って甘い香りを満喫してください。また、庭の西側には淡い色、パームハウス近づくにつれて鮮やかな色のバラが配置されており、美しいコントラストが見られます。

パームハウスとのコントラストが美しい「ローズガーデン」

写真:Lady Masala

地図を見る

イギリスの国花はバラです。正確に言えば「テューダー ローズ」という実際には存在しないバラ。中世に赤と白のバラをそれぞれの紋章としていたランカスター家とヨーク家の間に起こった薔薇戦争が終結した後に生まれました。

勝利したランカスター家の王がヨーク家から妃を娶ることで両家が結び付き、テューダー朝が誕生しました。その紋章として考え出されたのが、両家の紋章を組み合わせてつくったテューダー ローズなのです。バラ園では、このテューダー ローズを思わせる赤と白とが融合したバラも見られます。イギリスの歴史に思いをはせながら、香り高いバラの花を楽しんでみてください。

歩くたびに見つかる「キューガーデン」の魅力

歩くたびに見つかる「キューガーデン」の魅力

写真:Lady Masala

地図を見る

庭園内には、日本に関する展示が二つあります。一つは古民家で、もう一つは勅使門を中心とする日本庭園。西本願寺にある勅使門は、1910年にロンドンで開催された日英展のために作成されたレプリカで、1996年からはここキューガーデンに常設展示されることとなりました。春と夏には、桜やつつじなど日本でもお馴染みの花々が咲き誇ります。

歩くたびに見つかる「キューガーデン」の魅力

写真:Lady Masala

地図を見る

キューガーデンを代表する温室「アルペンハウス」や「プリンセス オブ ウェールズ コンサバトリー」を見渡せる絶好の位置にある池では、夏になると色とりどりのハスやスイレンが開花します。小ぢんまりとした池には、トンボやミツバチもやってきて忙しく飛び回ります。賑やかな池の様子を眺めていると、楽しい気分になってきそうです。

歩くたびに見つかる「キューガーデン」の魅力

写真:Lady Masala

地図を見る

キューガーデンの創設に深く関わったオーガスタ妃の息子で、精神障害を患っていたというジョージ3世が療養の目的で滞在していたというキュー宮殿から、パームハウスへと続く道をカラフルに彩る「グレート ブロード ウォーク ボーダー(Great Broad Walk Borders)」は、イギリス国内では最長の全長320メートルを超える花壇。春夏には満開の花に彩られ、道行く人々の目を楽しませてくれます。

草花が芽吹く春と夏は、キューガーデンが最も美しくなる季節です。日照時間が長いこの時期に野外で時を過ごしたいという方は、ぜひともここを訪れてください。施設内にはレストランやカフェも充実しています。お天気がよければ、芝生でピクニックをするのもよいでしょう。世界中の珍しい植物が見られるキューガーデンで、充実した1日を過ごしてくださいね。

キューガーデンの基本情報

住所:Kew, Richmond, London, TW9 3AE
電話番号:+44-20-8332-5655 
営業時間:10:00〜15:30/20:00
※季節や曜日によって閉館時間が変わります。詳細は、公式ホームページでご確認ください。
※12月24・25日休館
アクセス:地下鉄ディストリクト線(District Line)・ロンドンオーバーグラウンド(London Overground)キューガーデン駅(Kew Gardens)より徒歩5分

2021年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/02/29 訪問

- PR -

条件を指定して検索

- PR -

この記事に関するお問い合わせ

- 広告 -