巨匠の絵と名建築に触れる旅!埼玉「ヤオコー川越美術館」へ

巨匠の絵と名建築に触れる旅!埼玉「ヤオコー川越美術館」へ

更新日:2020/06/21 15:50

みなみ じゅんのプロフィール写真 みなみ じゅん 雑誌編集者、旅ライター、侘び寂び温泉ファン
ヤオコー川越美術館は、リアリズムの巨匠と称される画家三栖右嗣の作品を展示する美術館です。日本を代表する建築家伊東豊雄の設計した建物も見応え十分。リーズナブルにコーヒーが飲めるカフェや毎月開催する無料のミニコンサートも好評です。

縁結びのパワースポットとして有名な川越氷川神社もすぐなので、参拝後のひと休みにもオススメ。蔵の街や食べ歩きで人気の小江戸川越で、ぜひ寄っておきたいスポットです!

リアリズムの巨匠と名建築の美術館

リアリズムの巨匠と名建築の美術館

写真:みなみ じゅん

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縁結びのパワースポットとしてにぎわう川越氷川神社。境内を抜けると、桜並木で知られる新河岸川に出ます。目の前の橋を渡ってすぐの、シンプルすぎる建物が「ヤオコー川越美術館」です。現代リアリズムの巨匠、三栖右嗣(みすゆうじ・1927-2010)の絵とリトグラフを所蔵しています。

建物自体も見どころ! 設計は日本を代表する建築家のひとり伊東豊雄。四角い建物は、柔らかな曲線を描く水盤に囲まれます。環境にも配慮して、池の水は地下水を利用です。

リアリズムの巨匠と名建築の美術館

写真:みなみ じゅん

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運営するのは、関東一円でチェーン展開をする、スーパーマーケットのヤオコーです。

戦後まもなく、埼玉県小川町にある八百屋「八百幸」に嫁いだ川野トモ(1920-2007)は、持ち前の熱心さで、1958年、日本にまだ数軒しかなかったスーパーマーケットを誕生させ、女性実業家として、1都6県に170軒もの店を開く礎を築きました。そんな川野トモが、偶然気に入り購入したコスモスの絵が、三栖との出会いです。2012年3月、本社のある川越に美術館をオープンしました。

リアリズムの巨匠と名建築の美術館

写真:みなみ じゅん

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建物に入ると受付とショップコーナーがあり、アクセントカラーの赤で染められた壁には、画家の略歴が書かれています。

館内は4つの四角い空間で仕切られたシンプルな造り。照明デザイナー東海林弘靖の手によるライティングは光の採り入れ方にこだわっていて、エントランスは天井に空けられた穴から照明と外光が差し込みます。エントランスとカフェは入場無料なので、気軽に入館できますよ。

画家の内面と対峙する第一展示室

画家の内面と対峙する第一展示室

写真:みなみ じゅん

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やや薄暗い第一展示室は、天井からろうと状の柱が床に落ち込み、地面から光が照らす特異な造り。四部屋ある館内のなかで、自然光の入らない唯一の区画です。設計した伊東豊雄は、画家の内面に触れるような室内を作り上げています。柱の曲面の美しさも見どころです。

画家の内面と対峙する第一展示室

写真:みなみ じゅん

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第一展示室に架かる「自画像のためのデッサン」(1950年)は、三栖右嗣23歳のころ。物ごとをしっかり捉えようとするまなざしと涼しげな影、意志の強そうな口元が印象に残ります。

画家の内面と対峙する第一展示室

写真:みなみ じゅん

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三栖右嗣を世に知らしめた作品が、この「老いる」(習作・1974年)です。かねてから描こうと決めていた母親をモデルに、命というテーマに向き合います。風呂から上がり、よく脚をさすっていた母の姿を、展示されている30号の絵に描きます。

「老いる」は、友人たちの勧めで100号のキャンバスに描きなおし、1976年に新人画家の登竜門とされる安井賞でグランプリを獲得。絵は東京国立近代美術館に所蔵されています。

画家のアトリエを再現

画家のアトリエを再現

写真:みなみ じゅん

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第一展示室の片隅に、埼玉県ときがわ町にある三栖のアトリエを再現した特別展示をしています。

壁に架かるのは未完の絶筆で、老木の桜の幹だけが描かれた状態です。この一角にだけ画家の魂が今も息づいているような雰囲気です。

画家のアトリエを再現

写真:みなみ じゅん

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三栖が愛用していた画材入れを展示。パレットを見ていると、画家という職業の、なにかむき出しになったようなものが、迫りくるように思えます。

画家のアトリエを再現

写真:みなみ じゅん

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絶筆となった老木の絵を見ながら、これから絵筆がどのように振るわれ、どんな絵が描かれていたのか、想像をめぐらすのも楽しみ方のひとつです。

天からの光が降り注ぐ第二展示室

天からの光が降り注ぐ第二展示室

写真:みなみ じゅん

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地面からの光が照らす第一展示室とはうってかわって、第二展示室は天から光が降り注ぎます。

ろうとを逆さまにしたような天井からは柔らかな自然光が差し込み、丸い反射盤で周りに光が拡散する設計。絵はわずかに青みがかった壁に架かり、反射盤にとりつけたスポットライトで照らされます。

天からの光が降り注ぐ第二展示室

写真:みなみ じゅん

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展示室の中央にあるソファは家具デザイナー藤江和子が担当。天井の反射板と連続する丸いデザインで、青いファブリック生地が独特の風合いを室内にくわえます。腰を下ろして、絵とじっくり対面するのもオススメです。

天からの光が降り注ぐ第二展示室

写真:みなみ じゅん

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写真と見まがうばかりの代表作「光る海」(1997年)。美しい海を背景に、花々や果実が生命の豊かさを讃えています。

カフェとピアノと爛漫と

カフェとピアノと爛漫と

写真:みなみ じゅん

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4番目の四角い部屋が美術館のカフェ。屋根全体がトップライトになっていて、自然光が降り注ぎ、天候や時間によって絵の雰囲気が変わります。わずかにピンクを帯びた壁には、大作「爛漫」(1995年)が架かります。この絵は、9月になると川越市内のヤオコー本社で展示され、春先にまた美術館へと戻ります。

カフェでは月に1度、無料コンサートが開かれます。美術館で演奏できることから、アーチストにも人気。時には「爛漫」からインスピレーションを得た曲も奏でられます。さらに毎月第2日曜日は、ピアノ経験者ならどなたでも(自信のある方!)ここで演奏できるんです。

カフェとピアノと爛漫と

写真:みなみ じゅん

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椅子は曲面の造りに定評がある天童木工で、長く座っても居心地のよさを保ちます。コーヒーカップは伊東豊雄のデザインで、なめらかな曲面にこだわったもの。

コーヒーやジュースなどはどれも330円で、ドリンクつきのケーキセットも550円。“ヤオコー価格”と言えば、埼玉県民にとってリーズナブルの同義語。オススメはおはぎセットです。

カフェとピアノと爛漫と

写真:みなみ じゅん

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エントランスのショップコーナーでは、三栖右嗣のポストカードやレターセットなどが購入できます。

川越氷川神社へお参りしたら、この美術館でほっとひと息つくのがオススメのコース。縁結びの神様へ願いことをした後に、ここで三栖右嗣の描く生命の力に触れるのも一興です。たくみな造りの建物やこだわりの照明も、じっくりと見てください。ミニコンサートの日に合わせて、川越めぐりを楽しむのもいいでしょう。

ヤオコー川越美術館の基本情報

住所:埼玉県川越市氷川町109-1
電話番号:049-223-9511
営業時間:10:00〜17:00
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
アクセス:JR川越駅または西武本川越駅よりバスで10分ほど「氷川神社前」下車、徒歩2分。
入館料:大人300円、高・大学生200円、中学生以下無料 ヤオコーカード会員で100円引き
駐車場:15台

2020年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/03/25 訪問

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