写真:中山 久美子
地図を見るフィレンツェ旧市街の北側にある、サン・マルコ美術館。1433年、かのメディチ家によりドメニコ会の修道院として建て替えられ、数々の貴重な宗教画が展示されています。とりわけ、ドメニコ会の修道士としてここに滞在したフラ・アンジェリコの作品が多く、聖アントニーノの回廊、巡礼宿泊所、聖堂参事会員の部屋には、彼が残した多くの板絵やフレスコ画が残されています。
フラ・アンジェリコの作品以外にも、同じくドメニコ会の修道士だったフラ・バルトロメオの作品や、ギルランダイオの「最後の晩餐」なども展示されています。
写真:中山 久美子
地図を見る有名な「受胎告知」は2階の独房の並ぶ壁に描かれており、1階から上ってくる階段の上部に突然現れます。まさに僧が1日の勤めを終えて独房に帰る時に、今では美術館を訪れる人々を迎えるような場所に描かれているのです。初めて訪れる人は劇的なこの演出に驚き、すでに訪れた人は絵との再会に心を躍らせて階段を上り、また感動に浸ることでしょう。
作品は、フィエーゾレの修道院から1436年サン・マルコ修道院に移ったフラ・アンジェリコが、1440年頃に描いたもの。淡い色調の簡素な空間に舞い降りた大天使ガブリエルと、告知を静かに受け入れるマリアに、キリスト教徒でなくとも清らかな気持ちになります。
写真:中山 久美子
地図を見る階段上の受胎告知を前に、左側の廊下に並ぶ独房にも、フラ・アンジェリコのフレスコ画が残っています。受胎告知は、左壁の3番目の部屋。階段上の受胎告知と同じ淡い色調ですが、ここではマリアは台の上に立ち、またブルーの上着もまとわず、更に簡素な表現となっています。
この廊下では他にも、第1室の「我に触るな」などフラ・アンジェリコ自身のフレスコ画が並びます。歴史好きの方は、第12〜14室の修道院長・サヴォナローラの部屋、第38・39室のメディチ家・老コジモの部屋も必見です。
<基本情報>
住所:Piazza San Marco, 3, 50121 Firenze
電話番号:+39-0559-123735
アクセス:フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅より徒歩15分
写真:中山 久美子
地図を見るコルトーナは、フィレンツェから電車とバスで約2時間。映画「トスカーナの休日」の舞台としても知られ、人気のある小さな村です。時計台と階段が印象的な市庁舎の他、博物館や劇場などの見どころもあり、石のアーチや路地が入り組む町並みを散策するだけでも楽しいです。
写真:中山 久美子
地図を見る旧市街の北西の端には、ドゥオモがあります。ドゥオモの正面にある小さな建物がかつてのジェズー教会、現在はこの地域の教会にあった絵画や聖遺物を集めた教区博物館となっています。
<基本情報>
住所:Piazza del Duomo, 1 52044 Cortona (AR)
アクセス:レプッブリカ広場より徒歩4分
写真:中山 久美子
地図を見るフラ・アンジェリコは、コルトーナの修道院に1408〜1418年にかけて滞在していました。この作品はフィエーゾレ滞在中の1432年頃に製作され、この教区博物館ができるまでは、コルトーナのサン・ドメニコ教会に置かれていました。
構図や建物はフィレンツェの受胎告知と似ていますが、金が多用されていたり、大天使ガブリエルとマリアの会話が記されていたり、ガブリエルの示唆的な手のポーズ、またマリアのあどけない顔がとても印象的。じっくり見ると、画家として最盛期に描かれたフィレンツェの受胎告知とは、いろいろと違うことがよく分かります。
<基本情報>
住所:Piazza del Duomo, 1 52044 Cortona (AR)
電話番号:+39-0575-62830
アクセス:レプッブリカ広場より徒歩4分
写真:中山 久美子
地図を見るサン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノは、直通電車で30分とフィレンツェからも行きやすい中規模な町。観光客はほとんどいないので、イタリア人の日常生活を垣間見るにも楽しい町です。
コルトーナの受胎告知はガイドに載っていることもありますが、サン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノの作品は、全くと言っていいほど知られていません。
写真:中山 久美子
地図を見る町の中心・マザッチョ広場にあるのがサンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ教会。受胎告知があるのはこの教会向かって左の大聖堂博物館ですが、小さな表札しかないので、見逃さないようにしてくださいね。
こちらの受胎告知は、コルトーナの作品とほぼ同時期に描かれたもの。金の多用やあどけないマリアの顔など似ているところも多いですが、こちらは前面の柱廊が額の一部で立体的になっており、遠近法の消失点も真ん中になっています。全体的にカラフルで、マーブル模様の壁や床が目を引きますね。
<基本情報>
住所:Piazza Masaccio, 8 52027 San Giovanni Valdarno (AR)
電話番号:+39-0559-123735
アクセス:サン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノ駅より徒歩4分
今回ご紹介したコルトーナとサン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノは同じ路線上にあるので、行程をうまく組めばフィレンツェから日帰りで行くこともできます。あるいはどちらかの町、または中間のアレッツォに宿泊して、ゆったり巡るのもいいですね。
今回はトスカーナ州にある4つの受胎告知を紹介しましたが、スペイン・マドリードのプラド美術館には、フィレンツェ以外の受胎告知と同時期に描かれたもう1つの受胎告知があります。完全制覇を目指す方は、ぜひマドリードも訪問してみてください。
2020年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
中山 久美子
2001年のイタリア・フィレンツェ留学後に結婚、現在はトスカーナ州北部のド田舎に暮らしています。私自身が昔から歴史好き&旅行好きで、要塞や路地、小さな村に特に魅力を感じており、家族とのバカンスやお出か…
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