まるで小さな江の島!横須賀の天神島で磯の生きものを探そう

まるで小さな江の島!横須賀の天神島で磯の生きものを探そう

更新日:2020/08/18 10:44

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
江の島といえば、誰もが知る神奈川県屈指の海辺の景勝地。橋で繋がった島には広い磯があり、四季を通じて多くの観光客が訪れます。そんな江の島によく似た形をしているのが、今回ご紹介する天神島(てんじんじま)。三浦半島の西側に位置するこの小さな島は入り組んだ岩場で囲まれており、多くの磯の生きものが観察できる、江の島にも劣らない名スポット。カニやウミウシ、ヒトデなど、磯ならではの生きものを探してみましょう!

橋を渡れば、そこは海の生きものたちの楽園!

橋を渡れば、そこは海の生きものたちの楽園!

写真:鷹野 圭

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最寄りのバス停(佐島マリーナ前)から徒歩約2分。運河を橋で渡ったその先が天神島です。橋の大きさは大分違うものの、この形はやはり神奈川屈指の景勝地 江の島を彷彿とさせます。橋の付近にいくつかの飲食店があるのも嬉しいポイント。奥に見える森の向こう側に、メインとなる磯が広がっています。

橋を渡れば、そこは海の生きものたちの楽園!

写真:鷹野 圭

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長い年月をかけて波が岩を削ることで形作られた、入り組んだ磯場。これこそが天神島のメインスポットです。島の西側から南東側にかけてを覆うこの磯には、カニやヤドカリ、小さな魚など、磯ならではの生きものが数多く暮らしていてまさに天然の水族館! 生きものの持ち帰りはできませんが、親子連れを中心に毎年多くの人が訪れます。

橋を渡れば、そこは海の生きものたちの楽園!

写真:鷹野 圭

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水の美しさもご覧の通り。非常に澄んでいるので、水底にいる小魚などの姿もよく見えることでしょう。岩場を渡り歩けば普通の靴でも磯の観察を楽しめますが、できればサンダル持参で海に入っていただきたいもの。水が澄んでいるおかげで足元もよく見えます。

潮の満ち引きによって水位が大分変わりますが、おススメの時間帯は干潮時。歩ける範囲が広がるのでより多くの生きものに出合えるはずです。

天神島に住まう生きものを、手に持って観察してみよう!

天神島に住まう生きものを、手に持って観察してみよう!

写真:鷹野 圭

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では、実際に磯で生きものを探してみましょう!

水底から現れたのは、サクラの花びらのような模様がついた珍妙な物体。一見作り物のように見えてしまうかもしれませんが、実はこれはウニの仲間。スカシカシパンといい、その名の通り菓子パンを彷彿とさせる丸っこい形が特徴です。他のウニと同じくほとんど動きませんが、手に乗っけてみると細かい脚がモゾモゾと動くのがわかるはず。ちょっと気持ち悪く感じるかもしれませんが、ぜひ一度は体感してみてください。

ちなみにウニの仲間らしく、表面には細かな棘状の突起がビッシリ。なでるとザラザラしています。

天神島に住まう生きものを、手に持って観察してみよう!

写真:鷹野 圭

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海藻の塊? それともエイリアン? グロテスクな外見に一瞬ドキッとさせられますが、実はこれはカニの仲間。イソクズガニという手乗りサイズのカニで、自分で全身に海藻などをくっつけて擬態するのが特徴です。もし岩場でジッとしていたら、誰もが海藻と思って見落としてしまうはず。でも頻繁に動き回るため、割と簡単に見つけられるかもしれません。

生まれながらにしてこういう形をしているわけではなく、あくまで海藻などを後付けしているだけなので、その気になればすぐに剥がせてしまいます。しかし、擬態して生き残るために一生懸命自分で飾ったもの(のはず)なので、イタズラせずにそのまま海に戻してあげましょう。

天神島に住まう生きものを、手に持って観察してみよう!

写真:鷹野 圭

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これはヤツデヒトデ。磯で見られるヒトデの中ではかなりポピュラーな存在でサイズも大きめですが、岩場にいるとなかなか目立たず見落としてしまいがちです。スカシカシパンと同じく、手に乗せると小さな無数の足でモゾモゾ動いているのがわかるはず。ちなみに名前に反し、脚は8本とは限りません。写真では9本ですが、まれに10本脚のものも観察できます。

きれい? ちょっと気持ち悪い? まだまだいる磯の生きもの

きれい? ちょっと気持ち悪い? まだまだいる磯の生きもの

写真:鷹野 圭

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上記のイソクズガニのようにゴツゴツした身体で岩や海藻に擬態する生きものもいれば、柔らかい身体を活かして岩の隙間に隠れる生きものも。写真のカリオヒラムシもその一つ。名前の通り非常に平べったく、身体の縁を波打たせてゆっくり移動します。ちょっと気持ち悪く感じるかもしれませんが、なかなか目にする機会はないので、見かけたら捕まえて写真を撮っておきましょう!

きれい? ちょっと気持ち悪い? まだまだいる磯の生きもの

写真:鷹野 圭

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ここ天神島は関東でも指折りのウミウシの繁殖地であり、特に春から初夏にかけてはよく見られます。写真はマダラウミウシといい、ウミウシの中でも特に大型のもの。基本的にウミウシは身体が小さく隠れていることが多いため、石を持ち上げるなどして念入りに探してみましょう。

きれい? ちょっと気持ち悪い? まだまだいる磯の生きもの

写真:鷹野 圭

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こちらはイボイワオウギガニ。イソクズガニと比べるとカニらしいフォルムをしていて、しかもサイズも大きいので印象に残りやすいです。個体差はありますが大きい個体だと手のひらサイズになることも! 当然ここまで大きいと鋏の力も強力なので、うっかり挟まれてケガしないように気をつけましょう。

天神島に咲く、海岸ならではの花風景を楽しもう

天神島に咲く、海岸ならではの花風景を楽しもう

写真:鷹野 圭

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三浦半島の西側に位置する天神島には、海岸の環境に適応した潮風に強い植物が多く自生しています。写真のオレンジ色の花はスカシユリというユリの仲間。決して珍しいものではなく三浦半島では随所に見られますが、自然度の高い天神島ではご覧の通り結構大きな群落をつくっています。

被写体としても非常に魅力的なスカシユリ。バックに海を据えて、写真撮影を楽しまれては如何でしょうか?

天神島に咲く、海岸ならではの花風景を楽しもう

写真:鷹野 圭

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写真左下の白い花はハマユウ(浜木綿)。ヒガンバナの仲間で、なるほど確かに花の形がよく似ています。この植物自体は海の近い場所ではそれなりに目にする機会がありますが、そのほとんどは人の手で植栽されたもの。一方でここ天神島は、関東でも珍しいハマユウの自生地(分布の北限域という説も)となっています。不思議な形の花ですが、たまにアゲハチョウなどが蜜を求めて飛来することも。

ちなみに天神島の入口には、この植物の名を冠した「浜木綿」という海鮮料理のお食事処があります。

自然地ならではの注意点を踏まえて、天神島を楽しもう

自然地ならではの注意点を踏まえて、天神島を楽しもう

写真:鷹野 圭

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天神島を散策していると、島の西側沖合にもう1つの島が浮かんでいるのに気づくことでしょう。この島は笠島(かさじま)といい、天神島やその周辺海域と合わせて豊かな海岸域の自然が残された場所として、神奈川県の天然記念物および名勝に指定されています。

名勝ということで、風景美もまた魅力的。写真では右奥にちらと江の島が写っていますが、天気がよければ笠島の遥か彼方に富士山の姿が見えることもあります。晴天時にはぜひチェックしておきましょう!

自然地ならではの注意点を踏まえて、天神島を楽しもう

写真:鷹野 圭

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笠島と天神島の距離は約200メートルもあり、橋なども設けられていないため人が歩いて渡ることはできません。そのためか、天神島以上に豊かな自然が今も残されています。また、アオサギやウミウなどの休憩所にもなっており、よく大群で羽を休めている姿を見かけます。

写真に多数写っている灰色の羽の大きな鳥がアオサギ。首都圏の河川などでも普通に見かける鳥ですが、これだけの集団に遭遇することはあまりないかもしれません。

自然地ならではの注意点を踏まえて、天神島を楽しもう

写真:鷹野 圭

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最後に、ぜひ気を付けていただきたいことを1点。
天神島に限りませんが、写真のビニール袋のような物体がたまに漂着していることがあります。実はこれはカツオノエボシというクラゲの仲間。とても強い毒を持っており、うっかり触手に触れると激しい痛みが走ります。人によっては重症に陥ることもあるため、見かけたら決して触らないようにしましょう。

天神島は自然度の高い海に囲まれているだけに、危険な生きものも多く生息しています。また、ゴツゴツした岩場だけに、転ぶと手足を怪我してしまうことも。加えて日を遮るものがほとんどないため、夏場は熱中症にも気を付けなくてはいけません。

自然地ならではのリスクも踏まえつつ、天神島散策をお楽しみください!

天神島の基本情報

住所:神奈川県横須賀市佐島3-7-2(天神島臨海自然教育園)
電話番号:046-822-8301(横須賀観光インフォメーション)
開門時間:4〜9月/9:00〜17:00 10〜3月/9:00〜16:30
アクセス:JR「逗子駅」よりバス「佐島マリーナ前行」(約35分)終点下車

2020年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2019/08/04 訪問

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