岐阜「渡合温泉」電気も電波もないランプの宿で心オフしよう

岐阜「渡合温泉」電気も電波もないランプの宿で心オフしよう

更新日:2020/05/31 16:18

野水 綾乃のプロフィール写真 野水 綾乃 温泉旅ライター、ひとり湯治愛好家、栃木のいいとこ案内人
この宿には電気も電波も届いていません。スマホは役に立たないし、テレビもありません。あなたならどんなふうに過ごしますか? そんな真の秘湯「渡合(どあい)温泉」があるのは、岐阜県中津川市の山奥。夜は蛍光灯の代わりに穏やかなランプが灯ります。こんこんと自噴する温泉にもランプの灯りで入ります。そして夕食には採りたての山川の恵みでごちそうを。情報過多な毎日から少し離れて、静かな山の秘湯へ訪れてみませんか。

宿の周囲は国有林。道幅の狭い林道の先へ

宿の周囲は国有林。道幅の狭い林道の先へ

写真:野水 綾乃

岐阜の秘境の一軒宿「渡合温泉」までの行き方をご案内します。中央道「中津川」ICから宿までは車で約1時間。絶景スポットとしても知られる付知峡方面を目指します。

国道256号「付知峡口」交差点から県道486号線に入り、しばらく進むと、写真の林道入口が出てきます。ここから携帯電話がつながらなくなります。「渡合温泉」まではまだ約8キロ。道幅が狭く、未舗装の部分もありますので、注意しながら進みます。

宿の周囲は国有林。道幅の狭い林道の先へ

写真:野水 綾乃

地図を見る

途中、林道の脇に「高樽の滝」があります。落差21mの迫力ある滝で、滝下を流れるエメラルドグリーンの付知川が本当にきれい。橋からすぐ見下ろすことができます。

宿の周囲は国有林。道幅の狭い林道の先へ

写真:野水 綾乃

地図を見る

高樽の滝からさらに3.8キロ。ひたすら1本道を進んでいくと、ようやく「渡合温泉」が見えてきます。

伊勢神宮の社殿にも使われている木曽ヒノキが生まれる国有林の中に宿はあります。以前は山仕事をする人たちがたくさん暮らしていたそうですが、今はほかに民家はありません。大正13年築の建物を基本とした山小屋風のたたずまいです。宿まで続く林道が冬季閉鎖となるので、「渡合温泉」も3月末〜12月中旬までの期間限定の営業です。

夏は冷房不要、冬は豆炭コタツが暖かい客室

夏は冷房不要、冬は豆炭コタツが暖かい客室

写真:野水 綾乃

地図を見る

「渡合温泉」の客室はすべて6畳〜8畳の和室です。電気が来ていませんので、部屋にはテレビも冷蔵庫もコンセントさえもありません。普段はついついスマホを触ってしまいがちですが、圏外で充電もできませんので、いっそ電源をオフしましょう。デジタルに縛られない時間の始まりです。

夏は冷房不要、冬は豆炭コタツが暖かい客室

写真:野水 綾乃

地図を見る

こちらは大正13年築の客室。どの部屋も照明は自家発電の電球がひとつあるだけ。これも22時には消灯になりますので、それからはランプの灯りだけになります。

電気がないのにこたつ?と思うかもしれませんが、これは「豆炭こたつ」です。豆炭とは、無煙炭の粉に木炭の粉などを混ぜて卵大に練り固めたもので、それを燃料にしたこたつです。ある年代以上の方には懐かしいのではないでしょうか。電気よりもじんわりと温まり、心地よくて眠たくなってしまいます。夏も標高850メートルの地ですので涼しく、冷房が必要ありません。

夏は冷房不要、冬は豆炭コタツが暖かい客室

写真:野水 綾乃

地図を見る

窓の外には宿を取り囲む山々が見え、付知川のせせらぎが聞こえます。澄んだ空気と自然の音に耳を澄ませてみてください。そして晴れていれば夜には満天の星が迎えてくれるはずです。

こんこんと自噴する冷鉱泉を薪で沸かしたお風呂

こんこんと自噴する冷鉱泉を薪で沸かしたお風呂

写真:野水 綾乃

地図を見る

「渡合温泉」には時間で男女入れ替えになるお風呂が2か所ありますが、造りはほぼ同じです。高野薪でできた湯船が2つ並んでいて、1つは源泉、もう1つは山の水を沸かしたお風呂になっています。

こんこんと自噴する冷鉱泉を薪で沸かしたお風呂

写真:野水 綾乃

地図を見る

源泉は宿のすぐそばの祠の下からこんこんと湧き出しています。今では希少な自噴の源泉です。江戸末期または明治初期に発見され、かつて近くに暮らしていた山仕事の人たちや湯治客に利用されてきた歴史ある温泉です。

泉質はナトリウム−塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉。源泉温度が約10℃で、薪で入りやすい温度に沸かしているため、浴室に入るとほのかに薪の香りがします。窓の外は木曽川の源流である付知川の渓谷で、せせらぎが響きます。

こんこんと自噴する冷鉱泉を薪で沸かしたお風呂

写真:野水 綾乃

地図を見る

浴槽の蛇口をひねると、赤の印の方からは加温した源泉が、もう片方からは非加熱のそのままの源泉が注がれ、かけ流し気分が味わえます。塩分を含むので舐めるとほのかにしょっぱく、つるつるとした感触が肌を撫でます。山の水の湯船と入り比べて、違いを確かめてみてください。

秘境の恵みたっぷりの夕食!名物わらじ五平餅も

秘境の恵みたっぷりの夕食!名物わらじ五平餅も

写真:野水 綾乃

地図を見る

「渡合温泉」に泊まる楽しみのひとつである夕食。宿の周囲は食材の宝庫です。周囲に自生する季節の山菜や川魚など、採れたての山と川の恵みが食卓を彩ります。この日、お造りで登場したイワナや鯉などは、きれいな山の水を引き込んだ生け簀で直前まで育てていたものを使用しています。

あとから揚げたてで登場する行者ニンニクの葉、フキノトウ、ニラの根など、その日周辺で採れた山菜を揚げる天ぷらの盛り合わせも絶品ですよ。

秘境の恵みたっぷりの夕食!名物わらじ五平餅も

写真:野水 綾乃

地図を見る

運ばれてきた時に思わず歓声を上げてしまうのが、「渡合温泉」名物のわらじ五平餅。五平餅といえば岐阜県の郷土料理として知られますが、渡合温泉のものは通常よりもかなりビッグで、顔ぐらいの大きさがあります。醤油ベースの甘くて香ばしいタレが食欲をそそります。

ランプで過ごす夜、何して過ごす?

ランプで過ごす夜、何して過ごす?

写真:野水 綾乃

地図を見る

玄関すぐのロビーには出番を待つたくさんのランプが吊り下げられています。夕食後、宿泊者はこちらに集まり、ご主人からランプの使い方の説明を受けます。部屋にランプを持ち帰り、あとはその明かりで過ごします。

そのままロビーでは、ご主人がいろいろなゲームや懐かしい遊びで楽しませてくれます。部屋で静かに過ごすのもいいですが、ほかの宿泊者と一緒に笑いに包まれる時間も楽しいもの。

ランプで過ごす夜、何して過ごす?

写真:野水 綾乃

地図を見る

館内にはボードゲームやおもちゃ類などの貸し出しコーナーもあります。部屋でゆっくり懐かしいゲームに興じるのもいいですね。

普段読めない本をたくさん持ち込んで読むもよし、自由に好きな時間の過ごし方を楽しんでみてください。電気のない夜はいつもよりも早く眠くなるかもしれません。それもまたよし。ゆっくりと自然の中で眠り、朝日とともに目覚めるのも心身がリフレッシュされるはずです。

「渡合温泉」の宿泊で注意しておきたいこと

・携帯電話などを充電する場合はポータブル充電器を持参しましょう。デジタルカメラも予備のバッテリーを用意しておくとよいでしょう。
・宿の送迎はありません。「付知峡口」近くの倉屋温泉までは中津川駅から1時間に1本程度バスが出ています。そこから宿まではタクシーで30分ほど。あらかじめ予約して、タクシーを手配しておきましょう。

宿の周囲の新緑は4月中旬から、紅葉は10月下旬から見ごろになります。宿の近くには往復30分で渡合三滝を巡る遊歩道がありますので、少し早めにチェックインして散策するのもおすすめです。

2020年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/04/05−2020/04/06 訪問

条件を指定して検索

- PR -

新幹線特集
この記事に関するお問い合わせ

- 広告 -