写真:乾口 達司
地図を見る「蓮華会・蛙飛び行事」がもよおされる「金峯山寺(きんぷせんじ)」は奈良県吉野郡吉野町の山中、桜の名所として名高い吉野山に位置する寺院。修験道の開祖・役小角によって開かれたとされ、現在は「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する要素の一つとして、世界遺産にも登録されています。
そんな由緒を持つ金峯山寺で毎年7月7日にもよおされるのが「蓮華会・蛙飛び行事」です。「蓮華会・蛙飛び行事」は金峯山寺の三大行事の一つに数えられているほど重要な法要で、役小角が産湯につかったと伝わる奈良県大和高田市奥田の弁天池に生える蓮の花を本尊・蔵王権現にお供えします。
「蛙飛び行事」はその法要の一環としてもよおされるもので、白河天皇の時代、山伏を侮辱したかどで鷲の窟にさらわれた不心得者を金峯山寺の僧侶が蛙の姿に変えて救い出し、蔵王権現の前で人間に立ち返らせたという伝説を実際に演じたものです。
法要の当日は金峯山寺周辺の民家や商店、寺院の軒先にご覧のような提灯が吊り下げられます。ここからも、吉野山において「蓮華会・蛙飛び行事」がいかに重要な法要であるかがうかがえます。
写真:乾口 達司
地図を見る法要の舞台となるのは、金峯山寺の本堂・蔵王堂。しかし、午後4時からはじまる法要の前から金峯山寺の周辺に太鼓台が繰り出し、法要を盛りあげてくれます。
遠くに見えているのは、国宝の蔵王堂。それをバックに太鼓台が街中を練り歩いて来ますが、台の上に何が異様なものが乗っているではありませんか。
あれはひょっとして…。
写真:乾口 達司
地図を見るそうです!大勢の担ぎ手によって運ばれる太鼓台の上には、等身大の蛙が!例年、法要がはじまるまでのあいだ、「蛙飛び行事」の主役である大蛙が太鼓台に乗り込み、街中をめぐるのです。
何ともシュールな光景だと思いませんか?
写真:乾口 達司
地図を見る太鼓台は竹林院を出発し、近鉄吉野駅と山上とを結ぶケーブル駅で折り返し、蔵王堂へと向かいます。ケーブル駅前の広場では太鼓台の向きが変えられ、蛙が大袈裟な身振り手振りで担ぎ手たちを鼓舞します。
写真は太鼓台が金峯山寺の総門にあたる「黒門」を一気に駆け下る様子。勇壮なシーンですが、駆け下る際の振動で蛙の口が開いたり、閉じたりするのがユーモラスです。
写真:乾口 達司
地図を見る巡行中、太鼓台は数か所の所定の場所で止まり、担ぎ手たちは休息をとります。その際は蛙のもとにおもむきましょう。ご覧のように、記念写真にも気安く応じてくれますよ。
写真:乾口 達司
地図を見るもちろん、求めれば、握手もしてくれますよ。いたってフレンドリーな蛙です。
蛙に握手をしてもらう機会なんて滅多にありません。怖がらずに申し出てみましょう。
写真:乾口 達司
地図を見る巡行を続けていた太鼓台は、やがて金峯山寺の境内に突入します。ここでは大勢の拝観者が蛙たちを出迎えます。
到着後、蛙は担ぎ手たちに肩車をされて蔵王堂の堂内へ連行されていきます。
写真:乾口 達司
地図を見る「蛙飛び行事」の前にもよおされるのが「蓮花会」。先にも説明したように、開祖・役小角が産湯をつかったと伝えられる弁天池の蓮が本尊の蔵王権現にそなえられます。
写真:乾口 達司
地図を見る蓮が献上されるときは山伏姿の修験者たちがいっせいに法螺貝を吹き鳴らします。こちらも珍しい光景なので、お見逃しなく。
写真:乾口 達司
地図を見る一度、蔵王堂の堂内へ連行された蛙もふたたび屋外へと戻って来ます。仮設の渡り廊下の南端にちょこんとすわる姿、何ともユーモラスに感じられませんか?
蓮の献上が終われば、いよいよ「蛙飛び行事」のはじまりです。
写真:乾口 達司
地図を見る読経がはじまると、蛙は正坐のまま三方で読経を続ける僧侶の前に進みます。
写真:乾口 達司
地図を見る前に進み出た蛙は、それぞれの僧侶から化身前の不徳をなじられ、説教を受けます。
写真:乾口 達司
地図を見る最後に蔵王権現に対してみずからの不徳を謝罪。すると、被りものが取り去られ、着ぐるみに入っていた方のお顔が現れます。これで蛙はめでたく人間に戻ることができたのです。めでたし、めでたし。
蛙が人間に戻ったところで「蛙飛び行事」は終了です。
金峯山寺の「蓮華会・蛙飛び行事」がいかにユニークな法要であるか、おわかりいただけたでしょうか。
本尊に蓮を奉納する「蓮華会」と大蛙に変えられた不心得者が法力によって人間に戻る伝説を実演した「蛙飛び行事」とがどのように関連しているのか、いま一つ、わかりにくい点もありますが、もしかすると長い歴史のなかで、本来、別々の法要であったものが一つにまとめられたのかも知れませんね。
いずれにしても天下の奇祭と呼ばれるにふさわしい法要ゆえ、ぜひとも金峯山寺に足を運び、蛙のユーモラスな活躍をご堪能ください。
2024年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/12/12更新)
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