悠久の時を刻む中世の傑作 イギリス「ウィンチェスター大聖堂」

悠久の時を刻む中世の傑作 イギリス「ウィンチェスター大聖堂」

更新日:2021/01/06 12:59

Lady Masalaのプロフィール写真 Lady Masala 知られざる名所案内人、蚤の市マニア
中世の面影を今に残すウィンチェスターは、ロンドンから電車で1時間ほどの距離にある日帰り旅行に人気の街。その中心にそびえる「ウィンチェスター大聖堂」は、古くは642年にまでさかのぼることができる歴史のある建物です。11世紀にイングランド王として君臨したクヌート1世、『高慢と偏見』で知られる作家ジェイン・オースティンが眠る大聖堂は、ウィンチェスター観光の最大の見どころといえます。

アングロ・サクソン七王国最大の王「アルフレッド大王」

アングロ・サクソン七王国最大の王「アルフレッド大王」

写真:Lady Masala

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ウィンチェスターは、紀元前、古代ローマ帝国時代に軍事拠点として栄えた歴史のある街です。9世紀には、アングロ・サクソン七王国のひとつウェセックス王国の首都となったことでも知られ、アルフレッド大王によって統治されていました。

アルフレッド大王は、アングロ・サクソン時代最大の王であると同時に、歴代のイギリス君主の中でも大王とたたえられるほどの人物。ヴァイキングの侵略から国を守り、英国海軍の父とよばれる一方、学問の復興にも力を注いだ文武両道の優れた王として、人々の称賛を集めてきました。没後は、イギリス国教会やカトリック教会で聖人に列せられています。市街地では、そんなアルフレッド大王の像を見ることができます。

歴史を語るイングランド最大規模の「大聖堂」

歴史を語るイングランド最大規模の「大聖堂」

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アルフレッド大王の時代には、前身のオールド・ミンスターとして知られた「ウィンチェスター大聖堂」は、イギリス国教会の大聖堂。11世紀に建築が始められ、16世紀になってから完成しました。ヨーロッパのゴシック様式の大聖堂では、最も長い身廊(入口から主祭壇に向かう中央通路)を持つ、イングランドでは最大規模の大聖堂のひとつです。

歴史を語るイングランド最大規模の「大聖堂」

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入り口のすぐそばには、大きなステンドグラスの窓があります。一見、何の変哲もないステンドグラスに見えますが、目を凝らすとモザイクのようにいくつもの色ガラスが無作為に寄せ集められていることがわかります。

この窓は、17世紀に起こったイングランドの内戦中に、議会軍によって破壊されたというステンドグラスの破片を集めて修復されたものです。歴史を語る色とりどりのガラスは、美しい輝きを放ち、私たちの目を楽しませてくれます。

歴史を語るイングランド最大規模の「大聖堂」

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視線を上に向けると、アーチに支えられた天井が見えます。ガレー船を逆さにしたようにも見える天井と、それに光を与えるかのようなステンドグラスが美しく、首が痛くなるのも忘れてうっとりと眺めてしまいそうです。

中世が誇る職人技「スクリーン」と「聖歌隊席」

中世が誇る職人技「スクリーン」と「聖歌隊席」

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大聖堂内には、見るべきものがたくさんありますが、主祭壇がある一画の壮麗さには目を見張るものがあります。主祭壇を引き立てる、15世紀に建てられたという華麗な石のスクリーンに注目してみてください。当時の芸術の意匠を凝らした傑作が今に受け継がれています。

ヘンリー8世による宗教改革によって破壊されてしまったものもありますが、幾度かの修復を経て現在の姿となりました。大聖堂内にある博物館では、破壊を免れた貴重な彫像の姿を見ることができます。また、この博物館では、イングランドにわずかしか残っていない12世紀の聖書「ウィンチェスターバイブル」も見学できます。

中世が誇る職人技「スクリーン」と「聖歌隊席」

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主祭壇を囲むように安置されているのは、11世紀にイングランド王として君臨したクヌート1世をはじめとする早期のイングランド国王や主教、女王の棺です。

ウィンチェスターがアングロ・サクソン七王国であった時代に偉大な王として親しまれたアルフレッド大王の亡骸は、大聖堂の前身となったオールド・ミンスターに埋葬されました。オールド・ミンスターの解体に伴って、近隣の修道院に移されましたが、その後の宗教改革による修道院解体によって遺骨は失われ、二度と発見されることはなかったといいます。

中世が誇る職人技「スクリーン」と「聖歌隊席」

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主祭壇を彩る壮麗なスクリーンを背に歩みを進めると、オーク材に彫刻が施された美しい聖歌隊席が見えてきます。14世紀初頭につくられたというその木彫りの装飾に注目してみてください。植物模様の中に、ひょっこりと顔を出す動物の姿が可愛らしく、そのユニークな表情が見る人の心を和ませてくれるでしょう。

「聖人」や「偉人」が眠る場所

「聖人」や「偉人」が眠る場所

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主祭壇から後方に移動する際には、足元にも注目しましょう。床に敷き詰められた古めかしいタイルは13世紀につくられたもので、イギリスに現存する中世の床装飾タイルとしては最大の規模を誇ります。長い歴史を持つタイルですが、覆いなどはなく、その上を歩くことができるのです。

「聖人」や「偉人」が眠る場所

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さまざまな模様が美しい床タイルが敷き詰められている一角には、ベネディクト修道院の守護聖人で、癒やしの奇跡で知られる聖スウィザンの棺があります。その側には、ホーリーホールとよばれる小さな穴があり、そこをくぐりぬけると、病気が治るという伝説が残されています。

聖スウィザンは、アルフレッド大王を指導したとも、ウィンチェスターを流れるイッチン川に最初の石橋を建てたともいわれています。また、卵が入ったカゴを落とした貧しい女性のために、割れた卵を元に戻すなど、人間味にあふれる数々の奇跡を起こした聖人として、人々に愛されました。

「聖人」や「偉人」が眠る場所

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ウィンチェスター大聖堂は、『高慢と偏見』『エマ』などで知られるイギリスの作家ジェイン・オースティンの墓所があることでも知られています。ジェインは、著名な医師の治療を受けるためにウィンチェスターに移りましたが、その甲斐もなく1817年に41歳の若さでこの世を去りました。

最初の墓は北側通路の床下にあり、作品のことには触れられていません。彼女の作品は、死後に有名になったことから、後に甥が作家としてのジェインについて言及した記念碑を建てました。今日では、その墓碑を一目見ようと、世界中から観光客が押し寄せるようになったということです。

「ゴシック」と「ロマネスク」が混在する空間

「ゴシック」と「ロマネスク」が混在する空間

写真:Lady Masala

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ウィンチェスター大聖堂は、ゴシック建築の建物として知られていますが、ロマネスク様式の一画があります。そこでは、1960年代まで発見されることのなかったという、キリストが十字架から降ろされ、棺に安置される場面を描いた12世紀の壁画を見ることができます。

「ゴシック」と「ロマネスク」が混在する空間

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このように、広い大聖堂内には見どころが多く、歩くたびに新しい発見があります。駆け足でめぐることもできますが、時間をかけてゆっくりと見学したいウィンチェスター大聖堂。その神聖な雰囲気と悠久の歴史を感じてみてください。

ウィンチェスター大聖堂の基本情報

住所:9 The Close, Winchester, Hampshire, SO23 9LS
電話番号:+44-19-6285-7200 
開放時間:
<4-10月>9:30〜17:00/12:00〜15:00(日曜日)
<11-3月>10:00〜16:00/12:00〜14:30(日曜日)

2021年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2019/11/02 訪問

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