日本の国技が古くから相撲であるように、モンゴルの国技もまた相撲。モンゴル相撲(モンゴル語では「ブフ」という)の起源は紀元前と古く、かつては祖先の霊を祀り、家畜がもたらす恵みや五穀豊穣を大地の神に祈る祭儀の一つでした。また一方で、軍事訓練の一環でも行われていました。
やがてモンゴルの男性にとって相撲で勝利を収めることは民族の誇りであり、最高の栄誉とみなされます。その頂点を極める最大の晴れ舞台が「ナーダム(Naadam)」です。モンゴルの革命記念日に当たる7月11日から3日間にわたって例年開催され、「男の3種競技」といわれる相撲、弓、競馬で全国各地から選ばれた猛者が力と技を競い合います。
首都ウランバートルで開催されるナーダムは国家主催による国内最大の祭典。開催場所の国立中央スタジアムには全国から選ばれた精鋭が集結し、何万人もの観衆と外国の報道関係者らでスタンドは埋め尽くされます。
初日となる7月11日はモンゴル文化の粋を集めた盛大なオープニングセレモニーが開催され、このスポーツと文化が融合した祭典は2010年、世界遺産ユネスコの無形文化遺産に登録されました。
それでは、具体的にナーダムの3種競技「相撲、競馬、弓」についてそれぞれ見ていきましょう。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るナーダムでもっとも盛り上がるのは「相撲(ブフ)」。全国21県から選ばれた500人以上の力士たちが手に汗握る名勝負を繰り広げます。
ちなみに、モンゴル相撲では、肘・膝・肩・背中・頭が地面に着けば負けとなりますが、手のひらが着いても負けにはならないところが日本相撲と違うところです。また土俵がないため突き出しや押し出し、寄り切りもなく、時間制限もないため勝敗に時間がかかることも特徴です。
写真:Mayumi Kawai
地図を見るモンゴル相撲の試合では、頭に中央が尖った伝統の帽子「マルガイ」をかぶり、胸の大きく開いた長袖シャツの「ゾドグ」とショートパンツの「シューダグ」、つま先が反り返ったモンゴルブーツを着用するのが一般的です。試合前に帽子を審判に預け、勝利した者だけが審判から帽子をかぶせてもらいます。
ちなみに、モンゴル相撲には階級や番付がなく、トーナメント方式で対戦していきます。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る勝負のはじめは両者ともに大きく手を広げて「鷹」を表現し、勝敗の後、勝利した者が「鷹の舞」を踊り、負けた者はその手の下をくぐって負けを認めます。
モンゴル相撲に階級はありませんが、優勝者には日本の横綱ともいえる「アルスラン(獅子)」が、二度以上優勝すると「アヴァルガ」の称号が与えられます。日本の横綱・白鵬関の父・故ムフンバト氏は1968年のメキシコ五輪のレスリング銀メダルリストであるとともに過去6度のナーダム優勝者で、元横綱関・朝青龍関の兄であるスミヤバザル氏も元五輪選手でかつアヴァルガの称号が与えられています。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る三種の競技のうち、競馬の主役は小さな子どもたちです。騎馬民族であるモンゴル人にとって馬はかけがえのない存在。彼らの生活は常に馬とともにあり、子どもは馬上で育つともいわれています。
騎手に選ばれるのは主に6歳から12歳までの子どもたちで、レースは2歳馬、3歳馬、4歳馬、5歳馬、6歳以上馬、種馬に分けられ、馬の年齢に応じてレースの距離が決められています。たとえば、2歳馬は約15km、6歳以上は約30kmにもなり、数百頭の馬が一斉に草原を疾走する姿は壮観です。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る競馬の中で一番注目されるのは2歳馬のレースで、優勝の馬とともに最下位の馬も「来年こそは一番早い馬になりなさい」という願いを込めて賞が与えられます。なかなか微笑ましいですね。
弓技に限っては、男女年齢問わず参加が可能となっています。的までの距離は、男性は75m、女性は60m、17歳以下の男子は年齢×4kmで女子は年齢×3kmと決まっています。競技は個人戦と団体戦があり、的に命中した数を競い合います。優勝者には「メルゲン」という弓名人の称号が与えられます。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る実は首都ウランバートルだけでなく、モンゴル全土の村や地域でナーダムは開催されます。ウランバートルの規模には遠く及びませんが、ときにはからだの小さな男の子から細身の青年まで村の男性総力戦で競技が繰り広げられます。その白熱した闘いが間近で観戦できるのが地方ナーダムの面白いところです。
ちなみに、ウランバートルのナーダムは毎年7月11日〜13日と決まっていますが、地方ナーダムの開催期間はおおむね6月下旬から7月上旬とかなりザックリしています。そのため、外国人旅行者が地方ナーダムを見学したい場合は、宿や現地旅行代理店などに相談の上で、開催情報を入手する必要があります。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る地方ナーダムの観戦は無料。外国人旅行者の場合、屋根つきの貴賓席に招かれ、馬乳酒やつまみがもてなされることもあります。また外国人でも男性であれば衣装を借りて試合に参加できることも。そんなチャンスが訪れたら是非参加してみてくださいね。
写真:Mayumi Kawai
地図を見る地方ナーダムのもう一つのメリットは、この果てしない青空の下で、壮大な大地に囲まれながら開放的な気分で観戦を楽しめるところです。またモンゴル遊牧民の何気ない日常も垣間見られ、ゲルではモンゴルのローカルグルメも楽しめます。
ナーダムが開催される6、7月はモンゴルにとって気候も穏やかで一面緑に覆われたベストシーズン。遊牧民のように馬で草原を駆け抜け、伝統のゲルで寝泊まりできる体験はモンゴル旅ならでは。ぜひモンゴルへは夏に訪れて、最大のお祭りと遊牧民生活を体験し、モンゴル文化を肌で感じてみませんか?
開催期間:毎年7月11日〜13日(ウランバートル)、6月下旬〜7月上旬(地方ナーダム)
開催場所:国立中央スタジアム(ウランバートル)、モンゴル全土の市町村(地方ナーダム)
チケット入手方法:ウランバートル・ナーダムの場合、日本国内および現地旅行代理店を通じて購入。当日券はなく、基本的に事前予約制。特にオープニングセレモニーのある初日は大人気で早めの予約が必要。地方ナーダムは無料。
2020年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
トラベルjpで250社の旅行をまとめて比較!
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索
(2024/12/4更新)
- 広告 -