今も伝統文化を残すインドネシアの桃源郷「タナ・トラジャ」

今も伝統文化を残すインドネシアの桃源郷「タナ・トラジャ」

更新日:2020/07/29 15:51

スズキ ミズエのプロフィール写真 スズキ ミズエ グラフィックデザイナー、一人旅女子ライター、世界の民族&お祭りマニア、火山と洞窟マニア
インドネシアには無数の島と同様に無数の民族が共存する多民族国家。その中でも、スラウェシ島にあるトラジャ族が暮らす「タナ・トラジャ」は、山に囲まれた風光明媚な場所にあります。稲田の中に大きなちょっと変わった形の家々が建ち並ぶ姿は、まさに桃源郷のよう。彼らの伝統的な家やとてもユニークなお墓の風習をご紹介します。

インドネシアの桃源郷「タナ・トラジャ」

インドネシアの桃源郷「タナ・トラジャ」

写真:スズキ ミズエ

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タナ・トラジャは首都ジャカルタのあるジャワ島の北にあるスラウェシ島の南部に位置します。タナ・トラジャとはタナ(=土地)、トラジャ(=山の人々)という意味を持ち、今では県の名前となっています。山に囲まれた風光明媚な場所です。

インドネシアの桃源郷「タナ・トラジャ」

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トラジャと聞くとトラジャコーヒーをイメージする人も多いと思いますが、歴史はそんなに古くなくオランダの統治時代に栽培が始まり、今では一つの産地となっています。

村の中心地のランテパオの市場では、焙煎された豆から挽いた粉まで売られています。村には観光客も飲めるカフェもいくつかあるので、ぜひ飲んでみてください。

インドネシアの桃源郷「タナ・トラジャ」

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タナ・トラジャの見所は、彼らの住む伝統的な家とお墓。広大な稲田の中でも目立つその外観はとてもユニークであり、歴史深いストーリーがあります。

先祖を偲ぶ伝統家屋

先祖を偲ぶ伝統家屋

写真:スズキ ミズエ

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形がとても特徴的な彼らの伝統的な家は「トンコナン(祖先の家)」といい、大きな船の形を模しています。ここは山岳地帯ですが、彼らの祖先は大陸から海を渡って来ました。そのことを忘れないために船の形にし、大陸の方角である北向きに建てられています。

家の向かいにはトンコナンより少し小さめのアランと呼ばれる倉庫も一緒に建てられているのが一般的です。

先祖を偲ぶ伝統家屋

写真:スズキ ミズエ

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屋根には竹が何層にも敷かれていますが、この竹も近年ではなかなか入手困難となり、とても高価なものとなっています。安いトタンに替える家も多く見られます。

外壁には幾何学模様の魔除けの装飾が、すべての壁にびっしりと彫られています。見えない家の下にまで、装飾が彫られています。
多くの家の入口には、木彫りの鶏、もしくは鶏が壁に飾られています。鶏は家の守り神であり、生の象徴でもあります。

先祖を偲ぶ伝統家屋

写真:スズキ ミズエ

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その他に富の象徴である水牛の角も飾られています。家によっては角が幾つも立て掛けられていて、その家の財力がわかります。タナ・トラジャでは今でも闘牛が盛んに行われ、闘牛専門の市場もあるほどです。牛はトラジャの人たちにとって、切っても切れない関係なのですね。

あの世は空の上だから

あの世は空の上だから

写真:スズキ ミズエ

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タナ・トラジャでもう一つ有名なものが彼らのお墓です。彼らの埋葬方法は布に包んだ亡骸を棺に入れ、その棺を崖の中や洞窟、時には崖から吊り下げる、といった方法でした。あの世は空の上にあると信じられているので、できるだけ高いところに棺を置く習慣があったのです。もちろん全ての人がこのような方法で葬られた訳でなはく、王族やお金持ちのみでした。一般市民は、岩に穴をくり抜いて、その中に棺を入れていました。ちなみに今では棺を吊るすことは禁止されています。

そしてもう一つ特徴的なのが、身代わり人形「タウタウ」の存在です。お墓の近くに置き、お墓を守り生きている家族を守っているのです。昔は簡単な木彫り人形でしたが、今ではよりリアルなタウタウが作られています。村には木彫り工房を見かけます。現代のタウタウはあまりにもリアル過ぎて少し怖いかもしれません。お土産でも売られてるので、記念に!

写真の岩壁墳墓は「レモ(Wisata Lemo)」と呼ばれ、白や赤い服を着たタウタウが岩にずらりと並んでこちらを見ています。白と赤は王侯貴族のみが使える色で、そこが彼らのお墓だということがわかります。

タウタウの上下にいくつかある四角い小窓。ここに遺体を埋葬しています。下を走る子供たちの大きさから、いかに高い場所に埋葬したかがわかります。

<レモの基本情報>
住所:Unnamed Road,, Lemo, Makale Utara, Kabupaten Tana Toraja, Sulawesi Selatan 92119
入場料:20000ルピア

あの世は空の上だから

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崖がいっぱいになると、今度は洞窟の中にも棺を置きます。洞窟墳墓「ロンダ(Londa Ancient Graveyard)」には、外側にはすでに多くの棺が崖の隙間に所せましと詰まっています。元々、上からも吊るされていたのですが、危険のため隙間に置かれた状態になっています。洞窟内にはたくさんの古い棺と頭蓋骨が綺麗に並べられています。

新しく親族が亡くなると、前にあった棺から骨を取り出して、新しい棺の上に置かれていきます。棺によっては、いくつもの頭蓋骨が並べられているものもあります。

洞窟内は真っ暗なので、墳墓の近くで待機しているガイドと共に入ることをおすすめします。

<ロンダの基本情報>
住所:Lembang Sangbua, Kesu, Tadongkon, Kesu, Kabupaten Toraja Utara, Sulawesi Selatan 91852
入場料:20000ルピア
入場時間:8:00〜17:00

あの世は空の上だから

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タナ・トラジャ最古の墳墓が「タンパンアロ(Tampang Allo)」です。ここも洞窟ですがロンダに比べて入口も大きく、光が入りロンダほどに怖い感じはありません。

彼らの棺は実は船の形をしているのです。それは船に乗って天国に向かう移動手段と考えているからです。だから棺にも細かな彫刻がなされていて、埋葬がいかに大切だったかが伺えます。

<タンパンアロの基本情報>
住所:Bulian Masa’bu, Sangalla, Tana Toraja Regency, South Sulawesi 91811
電話番号:+62-813-5528-1656

高い場所がなかったら

高い場所がなかったら

写真:スズキ ミズエ

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ランテパオから北に16キロ行くと、すでに標高2000メートルを超える山岳地帯。その中でもバトゥトゥモンガ村にはレストランや宿泊所もあり、そこからの棚田の眺めはとても綺麗です。特に朝夕は雲海の上にでき、絶景です。

高い場所がなかったら

写真:スズキ ミズエ

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そんな山岳地帯には棺を吊るす高い崖がないため、巨石をくり抜いて、棺を納めていました。巨石も日本で見るよりもはるかに大きく、そこに何体もの棺が収められている姿は、さながらお墓のアパートのよう。特にバトゥトゥモガ村にある「ロコマタ」は目を見張る大きさです。

子供は崖ではなく

子供は崖ではなく

写真:スズキ ミズエ

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次に子供のお墓です。昔は1歳に満たない子供のお墓は白い樹液の出る木に埋葬されていました。木の幹をくり抜いて、そこに棺を納めて、麻布や枝で蓋を。樹液がお母さんのお乳の代わりとなって、あの世でも生きられると考えたからでした。今ではこのような埋葬は禁止されています。

子供は崖ではなく

写真:スズキ ミズエ

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最後にトラジャ族の伝統料理をご紹介します。竹筒の中に豚肉、長ネギなどを詰めて、ココナッツミルクを注ぎます。バナナの葉で蓋をして、直接火にかけ蒸し焼きにする「パピオン」という料理。とても時間がかかるので、気軽に食べれるものではありませんが、見つけたらぜひ食べてみてください。見た目はちょっと黒いですが、豚肉がとても柔らかくてジューシー。ごはんが進みます!

いかがでしたか?インドネシアには300を超える民族がいて、それぞれ独自の文化風習を持っています。驚かされるものや類似性を感じるものなど様々。ぜひ、実際に行って体感してみてください。

タナ・トラジャ村の基本情報

アクセス:ジャカルタ、もしくはバリ島・デンパサールから飛行機で約1時間でスラウェシ島のマカッサルに到着。ランテパオまではマカッサルからバスで約9時間

2020年7月現在の情報です。最新の情報などは公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。

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