写真:Naoyuki 金井
地図を見る「金春通り」の名前は江戸時代に能楽の金春流の屋敷があったことに由来しています。
江戸時代、幕府直属の能役者として土地や俸禄を与えられていた家柄に、金春・観世・宝生・金剛の四家があり、最も歴史のある金春家は室町時代以来繁栄し、江戸時代初期から観世太夫とともに江戸で能を演じていた名家で、屋敷なき後も、この地にその名を留めているのです。
明治になり江戸の大火を恐れた明治政府は、銀座に延べ約10kmに亘る稀有で壮大な煉瓦街を造り上げます。残念ながら煉瓦街は関東大震災で消失しましたが、昭和63年に幻と言われた煉瓦街遺構が発掘され江戸東京博物館に収蔵されました。
この遺構が、かつての金春屋敷跡内で発掘されたことを重要視し、あえて収蔵遺構の一部をゆかりの金春通りに建立したのが、写真にある「銀座金春通り煉瓦遺構の碑」なのです。
金春通りの誕生それ自体が、江戸情緒を醸し出す原点なのです。
写真:Naoyuki 金井
地図を見る金春屋敷が安永9(1870)年頃に麹町善国寺谷(現在の千代田区麹町)に移転後、この金春屋敷で下働きをしていた女性達は、そのまま金春屋敷跡地に住み着きます。
彼女たちは唄や舞などの芸に秀で、おもてなしの才能にも長けていたことから、江戸芸者の草分けの「金春芸者」として生業をはじめ、金春通りは昭和40年代まで多くの芸者の集る花街として賑わいました。
この花街で、明治の末期から金春芸者の間で流行した色が「金春色」です。
青色に緑がかった色で、正式には「新橋色」という日本の伝統色に指定されており、金春通りの銘板にもシンボル色として使用されています。
現在、花街としては下火になりましたが、金春通りの一筋西側の「見番通り」には、築地の料亭・茶屋・芸者待合の三業集った新橋組合(見番)があり、現在でも《東おどり》の練習などに「新ばし芸者」が集っているのです。
金春屋敷から生れた金春芸者が、江戸の粋を残しているのです。
写真:Naoyuki 金井
地図を見る金春通りの中ほどにある、粋な日除け暖簾のある店が「銀座 三河屋」です。
創業は元禄年間(1688〜1703年)で、三河の国から汐留に移り、江戸時代後期に手芸品などを納める御用商人を原点とし、平成15年に江戸の食「銀座・三河屋」としてオープンした由緒あるお店です。
日本の伝統食の原点である江戸食を伝えるセレクトショップで、江戸時代より伝わる原料、製法の調味料を扱い、数々のメディアにも取り上げられています。
数ある商品の中でも注目は「煎酒(いりざけ)」です。
日本酒に梅干と花がつおを入れ煮詰めた調味料で、江戸時代中期に現在の醤油が普及するまで、室町時代末期から醤油として利用されました。その後、忘れられた存在でしたが、素材の風味を生かすと再評価され、高級料亭などで利用されはじめています。
お勧めは卵かけご飯で、驚くほど美味しくいただける逸品です。是非、お試しを。
自然ままの江戸の伝統食で、江戸庶民の味を再現しています。
写真:Naoyuki 金井
地図を見る現在、中央区には10軒の公衆浴場(銭湯)が残されており、そのうちの1軒が、この金春通りにある「金春湯」です。銀座に残っていること自体非常に珍しいことですが、創業が江戸時代末期の文久3(1863)年で150年以上の歴史を持つことに驚かされます。
昭和32年に現在の建物に改築されましたが、江戸時代から存続している都内の銭湯の3軒の内の1軒であれば、それだけでも文化財級といえます。
メディアの取材も多く、銀座に残された異空間として人気も高いのですが、現在は銀座の住民が少なくなったため、金春通りを中心とした飲食店で働く方たちに愛用されています。
それゆえ飲食店の開店前の日中が一番混んでいますので、夜6時以降の比較的すいている時間帯がお勧めです。九谷焼のタイル絵やペンキ絵も見所で、昔ながらの銭湯をのんびり楽しまれてみてはいかがでしょうか。
江戸気質を今に伝える、都会では数少ない名所なのです。
写真:Naoyuki 金井
地図を見る金春通りと花椿通りの交差点角にあるのが「豊岩稲荷神社」です。
と、言っても交差点からその神社の姿を見ることは出来ません。まさに都会のジャングルよろしく、ビルの谷間の、さらにビルの中にある稲荷社です。
小さな稲荷社ながら、明智光秀の家臣安田作兵衛の奉斎に始まる由緒を持ち、江戸の火防として祀られました。また、歌舞伎役者市村羽左衛門の崇敬が篤かったことから、昭和初期からは芸能関係者に崇敬されました。
この稲荷社が一躍脚光を浴びるようになったのが、TVメディアでの紹介です。
始まりは美輪明宏「オーラの泉」で、地元の水商売の女性たちに評判となり、その後も開運パワースポットとして取り上げられたことから、縁結びにご利益があると一気にその人気が沸騰し、現在でも多くの女性の参拝が絶えないのです。
あなたも、このご利益に与ってみてはいかがでしょうか。
金春通りを守ってきた稲荷社は、新たなパワーを授与しているのです。
江戸の香りが凝縮されたような金春通りを更に堪能できるのが、毎年8月7日に行われる「能楽金春祭り」です。
このお祭は、金春通りで「路上能」として金春流宗家自ら能楽を舞うという、まさに金春通りの真骨頂とも言えるイベントです。入場無料なので混雑は必至ですが、またとない機会を逃がす手は無いでしょう。
銀座8丁目交差点から7丁目交差点までのたった1ブロックに、江戸情緒が詰め込まれた金春通りを楽しんでみてください。
きっとあなたも江戸の息吹を感じるはずです。
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(2024/12/14更新)
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