写真:和山 光一
地図を見る湿原の多くは人里離れた山奥に存在し、「沼ッ原湿原」もそんなひとつです。栃木県那須板室温泉街から県道266号、沼ッ原湿原入口から市道を走り、湿原の手前約1km、湿原や隣りの調整池を見下ろす位置に駐車場があります。100台は停めることができる広い駐車場で無料なのがうれしいですね。湿原にトイレはありませんので駐車場のトイレを利用しておきましょう。
駐車場から見下ろした調整池に汲み上げられた水は、500m下の深山湖に流され発電しています。
写真:和山 光一
地図を見る駐車場右手奥に湿原入口があります。秘湯三斗小屋温泉や南月山、白笹山(至茶臼岳)といった那須連山の登山口にもなっています。熊出没の表示板もありますので、できれば熊よけの鈴を用意しておきたいところです。
駐車場から湿原までは、森の中の山道を500m、15分ほど下ります。最初は緩やかな下り道で、鼻歌交じりで散策できますが、最後の100mは、一段約20cmの階段が約100段と急な階段となっていて、足元に注意です。帰りのことを考えるとちょっと気が重くなるかもしれませんが、湿原のエリアはほぼ平らな場所なので頑張りましょう。
写真:和山 光一
地図を見る森の中の道を下りきり、湿原の周回道に突き当たったところにあるのが「子守石」です。言い伝えでは、安澤の萬屋という呉服問屋の太郎兵衛の家に一夜の宿を求めて女が訪ねてきました。女を気に入って一緒に住むことになりやがて男の子が生まれるのですがこの女が沼の主の大蛇の化身だったのです。いなくなった母親の姿を求めて子供を背負って沼ッ原まできて子守をしたといわれる石がこの「沼ッ原の子守石」なのです。
写真:和山 光一
地図を見る分かれ道を左へ進むと、湿原の上を歩けるように整備された一周約30分程度で周回できる木道が現れます。と同時にそれまで頭上を覆っていた樹木も途切れ、気持ちのいい大空が現れます。
沼ッ原湿原には約230種類の亜高山植物が確認される高山植物の宝庫。春は小さな青色のハルリンドウ、初夏のニッコウキスゲが咲くと湿原一面が黄色と緑色に埋め尽くされます。秋には写真のように湿原は見事な草紅葉となり、色とりどりの景色が、半年間にわたりハイカーの目を楽しませてくれます。
写真:和山 光一
地図を見る小川が流れている場所には、たくさんのオタマジャクシやクロサンショウウオ、モリアオガエルも生息しています。湿原の向こう側には、栃木と福島の県境に位置する流石山・大倉山・三倉山の尾根筋が見え、これらの山に積もった雪も沼ッ原湿原の貴重な水源となっているのでしょう。遠目で見ると濃淡入り混じった緑の山並みもとても美しいです。
沼ッ原湿原は、昭和天皇が何度も足を運ばれたお気に入りの所として知られています。
写真:和山 光一
地図を見る木道から離れて子守石を右手に進んだ道と合流します。ここから旧会津中街道の三斗小屋宿跡方面へ続く道や、距離はありますが三斗小屋温泉へ行くこともできます。
歴史的には天和3年(1683)に起こった日光山地震により会津西街道の代替街道として元禄8年(1695)に幕府の出資で板室宿からこの地を通る“会津中街道”が開かれ、参勤交代にも4度使われたとの記録があります。また那須岳の西側の山腹の泉源を信仰とする「白湯山信仰」の行人道としてもここが使われ、湿原を北へ三斗小屋宿跡方面へ向かうと自然林の中に名残の石仏があります。
写真:和山 光一
地図を見る子守石まで戻れば一周したことになりますが、そのまま奥までまっすぐ歩いていくと沼ッ原湿原や沼原調整池(上池)を見下ろせる展望台があります。ちょっと足を延ばしてみるのもいいですね。さらにそのまま進んで行けば、登山コースにはなりますが深山ダムまで行くこともできます。
写真:和山 光一
地図を見る沼原発電所は沼原調整池(上池)と深山湖(下池)との500mを越える落差を利用した世界有数の揚水式発電所です。深山湖は那珂川上流にあるダム湖で元々那須野ヶ原の灌漑設備として計画されたのですが、最終的には電力発電設備「沼原揚水発電所」の下池としての機能を伴うものとして昭和48年(1973)に完成した表面アスファルト遮水壁型ロックフィルダムです。
沼ッ原湿原から深山ダムへは徒歩150分、約6kmの登山コースになります。
<深山湖(ダム)の基本情報>
住所:栃木県那須塩原市百村3092-1
住所:栃木県那須塩原市板室地内
アクセス:東北自動車道那須ICから約24km(約40分)、黒磯板室ICから約28km(約50分)。那須ハイランドゴルフクラブ正面のほぼ向い側に沼ッ原駐車場への市道入口から約7.5kmの山道。
駐車場:約100台(無料)
期間:12月上旬頃から翌年4月下旬までは駐車場までの市道が閉鎖されます。
※市道に入ると店がないので、飲料水や食料は県道17号(那須街道)や県道266号沿いの店で購入しておきましょう。
2020年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
和山 光一
大阪生まれの大阪育ちながら、転勤生活30年の果てに辿りついたのが信州・長野。全国の観光地を巡った経験を生かし、長野から旅の水先案内人を目指します。
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