千葉・南房総で地球の鼓動を体感!世界にまれな地殻変動の痕跡を探る

千葉・南房総で地球の鼓動を体感!世界にまれな地殻変動の痕跡を探る

更新日:2020/07/30 11:25

野口 まさゆきのプロフィール写真 野口 まさゆき 里山フォトグラファー
房総半島は世界的にも稀な激しい地殻変動が起こっている場所で、沖合の海底で太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレートの三つのプレートがぶつかり合っているんです。その結果、激しい隆起や褶曲、侵食などの痕跡が地上に地層として露出しています。
房総の地層といえば「チバニアン」が有名ですが、注目ポイントはそこだけじゃない!今回は房総半島の最南端に位置する希少な地層や地形にご案内しましょう。

約200万年前の「海底地すべり」の痕跡が道路脇に出現!

約200万年前の「海底地すべり」の痕跡が道路脇に出現!

写真:野口 まさゆき

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旅のスタートは南房総市にある「白浜海底地すべり堆積層」から。
館山市街地から車で県道188号を東に進み「安房グリーンライン」との交差点を右折します。白浜町に向かって南下すると「安房白浜トンネル」の手前の左側斜面に海底地すべり堆積層が忽然と現れます。

これは広域農道「安房グリーンライン」を開発する際、道路工事中に出現したものなんです。道路の向かい側に駐車場があります。地層の説明看板が設置されているので、よく読んでみましょう。

約200万年前の「海底地すべり」の痕跡が道路脇に出現!

写真:野口 まさゆき

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約200万年前、巨大地震により、海底に堆積していた地層で大きな地すべりが発生しました。その後の急速で激しい隆起活動によって地上に姿を現したのものです。

通常、地層は水平の縞模様になっていますが、ここの地層は斜めに傾き、褶曲し、断裂が入り、さらには大きな岩石が潜り込んだりしています。正面から見ると、当時の混濁した状況がよくわかりますね。砂や泥が液状化したため地層が分断されたり回転して上下が逆になってしまっている部分もあります。

「千葉県の地層10選」の一つに選定されています。

<白浜海底地すべり堆積層の基本情報>
住所:千葉県南房総市白浜町白浜
駐車場:あり

えっ!地層が直立している!?白浜の屏風岩はまさに奇景!

えっ!地層が直立している!?白浜の屏風岩はまさに奇景!

写真:野口 まさゆき

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「安房グリーンライン」をさらに南下し国道410号を右折、海沿いに西方向に進みます。「白浜フラワーパークOcean’s」が見えたら駐車場に車を止めましょう。受付で駐車料金を支払うことを忘れずに。

海岸に向かって歩いていくと、目の前に岩が何枚も垂直に切り立ったような奇景が広がります。ここは県指定天然記念物の「白浜屏風岩」。約2500万年前〜500万年前に海底で砂岩・泥岩が交互に堆積された地層が、その後の激しい隆起と褶曲で垂直に露出し、波の浸食作用で硬い泥岩部分だけが残りました。こんな光景が東西に500メートルくらい続いているんです。まさに奇景ですね!

見学の際は潮見表などで潮位の低い日と時間を調べておきましょう。

<白浜屏風岩の基本情報>
住所:千葉県南房総市白浜町根本
駐車場:なし(フラワーパークOcean’sの有料駐車場使用)

近年の大地震がつくった地形が「海岸段丘」

近年の大地震がつくった地形が「海岸段丘」

写真:野口 まさゆき

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この海岸で陸地側を振り向くと階段状の地形が目に入ります。激しい地殻変動の歴史の中で近年においても巨大地震が発生し、海底の隆起と波による浸食が繰り返された結果「海岸段丘」という地形が発達しています。

写真の左から一段目が1923年の関東大震災、二段目が1703年の元禄地震で隆起した部分になります。さらに山側には約7000年前からの隆起の記録が残っていて、その期間での隆起の高さ35メートルは世界一のスピードと考えられています。

縄文時代の房総の姿を残す「沼サンゴ層」

縄文時代の房総の姿を残す「沼サンゴ層」

写真:野口 まさゆき

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国道410号を北上し館山市内に入ると「沼」という地区があります。千葉の地層10選の一つであり、県指定天然記念物の「沼サンゴ層」に行ってみましょう。

約7000年〜6000年前の縄文時代、館山市の一帯は暖かく浅い海が広がっていました。当時の海には多くの種類のサンゴが生息し、約80種類の化石が沼地区の地層や岩石に含まれているんです。現在でいうと鹿児島県南部から奄美大島に生息しているサンゴの種類に匹敵します。

「沼サンゴ層」は現在、保護のために柵で囲まれています。写真撮影には望遠レンズが必須です。

<沼サンゴ層の基本情報>
住所:千葉県館山市沼
駐車場:なし

縄文時代の房総の姿を残す「沼サンゴ層」

写真:野口 まさゆき

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沼地域には他にも珍しいものがあるんですよ!「沼サンゴ層」の周辺の山側の斜面に洞穴がいくつか見られます。中を覗くと水たまりがあって、なんと水面が金色に光っています!これは「ヒカリモ」という単細胞性の藻類です。藻自身には発光能力はなく、外の光が当たると細胞の色素により美しい黄金色に輝くんです。

房総半島は地質が柔らかく、山の斜面に小さな洞穴が多く見受けられます。この沼地区の洞穴は戦時中の避難場所として作られました。山に降った雨水が濾過されて洞穴内部に溜まり、そこに美しい「ヒカリモ」が繁殖するようになったのです。沼地区には16か所の洞穴でヒカリモが繁殖しています。

なお、沼地区には公共の駐車場はありません。館山城の駐車場から歩くか、「南総里見八犬伝」で有名な里見氏の菩提寺である「慈恩院」さんに参拝がてら駐車すると便利です。「サンゴ層」「ヒカリモ」までの徒歩ルートは案内看板が整備されています。

チバニアンだけじゃない!千葉の地層10選も面白い!

2020年1月に地球の地質年代の名前と決定した「チバニアン」と「地磁気逆転期の地層」(市原市)をきっかけに、千葉県教育委員会にて「千葉県の地層10選」が選定されました。今回紹介した地層以外にも、地殻変動が新しく激しい房総半島の特徴的な地層を見学することができます。

皆さんも、東京からも至近の場所でダイナミックな地球の営みや成り立ちを体感してみてはいかがでしょうか!?

なお、今回のルートは車で回るコースとなっています。マイカーなどで行くか、JR館山駅でレンタカーを借りると便利です。

2020年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/06/04 訪問

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