明治期以降に建てられた議事堂としては珍しい和風建築である「旧和歌山県議会議事堂」は、1898年(明治31年)に和歌山城の東側に建設され、1938年(昭和13年)まで約40年間にわたり県政の舞台として使用されました。
その後、移築を繰り返し、1962年(昭和37年)に根來寺境内に移築され、根來寺の山号にちなんで「一乗閣」と名付けられ、2013年(平成25年)まで集会や合宿等に活用されました。
建物は、国内現存最古の木造和風意匠の議事堂としての価値が高く、県指定文化財、さらに国の重要文化財にも指定されています。写真は、「根来SL公園」から見た旧和歌山県議会議事堂。
威風堂々とした議事堂は、木造二階建て、瓦葺屋根、間口31メートル、奥行47メートル、建築面積は、1239平方メートル。正面より「本館」「議場」「控室」の3つの部分に分かれていて、本館には、接見室、議長室、議員休憩室などが設けられました。
議事堂の正面には車寄せがあり、建物の壁は漆喰塗、腰に下見板を張り、屋根は瓦葺です。車寄せには、唐破風をかけ、「兎の毛通し」には鳳凰をモチーフにした彫刻が施されています。
議事堂の瓦は、当時、大阪・泉州のブランド瓦だった「谷川瓦」で、戦災で焼失したかつての国宝和歌山城も、この谷川瓦で葺かれていました。
議事堂の「議場」は、間口18メートル、奥行23メートル、高さ6メートルの大空間で、正面奥には床の間があり、上部には彫刻が施された唐破風を設けました。
議場の天井は、中央部が格式高い、折り上げ格(ごう)天井で、周囲を鏡天井とした構成。天井板は杉の杢目(もくめ)板で、一つの格間を一枚張りとした贅沢な木取りで、さらに前後左右で木目の向きを替え、市松模様となっています。
なお、議場は講演会や選挙会場としても使われ、1911年(明治44年)には、文豪・夏目漱石が「現代日本の開化」と題して講演したこともありました。
議場の上部は、傍聴席で、傍聴人は本館側の専用の階段より上がりました。議場の勾欄は、社寺建築の縁に付くものと同様の形式で、栂の長尺材で作られています。
傍聴席は、議場をコの字形に取り巻いていて、当時は鈴なりのように傍聴人が入ることもありました。
本館の2階の「議長室」には、和歌山県会の初代議長・浜口悟稜(はまぐちごりょう)の像や、投票箱、議場風景の模型などが展示されています。
浜口悟稜は、現在の和歌山県有田郡広川町出身の実業家・政治家で、津波から村人を救った物語『稲むらの火』のモデルとしても知られています。
当時の議場風景を再現した模型では、中央部に議長が着席し、U字形に着席しているのが各議員。議長に向かって左側には知事、内務部長等が着席し、2階の傍聴席には、多くの県民が傍聴している様子が伺えます。
投票箱は、昭和20年代に実際に議場で使用されていたもので、本会議において、正副議長などの選挙、議案の投票による採決を行うときに用いられました。
選挙のときには、被選挙人の名前を、議案の時には投票用紙に賛成または反対と記載し、点呼順に投票が行われました。
本館2階の「書記室」では、「疑わしきは罰せず」として、司法の最高府での真剣公正な合議を導いた最高裁判事の奥野健一、博覧強記の経済学者である脇村義太郎、アメリカに渡り社会派の画家として活躍した石垣栄太郎など、和歌山県出身の先人展が開かれています。
また、議事堂でかつて使われていた柱や金具類に瓦を展示するコーナーもあります。
1階の本館入口では、岩出市の観光スポットの案内ビデオや、議事堂での結婚式「一乗閣ウェディング」、着物で楽しむ根来周遊「着物周遊プラン」などの案内もあります。プランの詳細につきましては関連MEMOをご覧ください。
住所:和歌山県岩出市根来2347-22
電話番号:0736-61-1160
入館料:無料
開館時間:9:00〜17:00(最終入館16:30)
休館日:火曜日(祝日を除く)12月29日〜1月3日
アクセス:京奈和道路「岩出根来IC」から車で約3分 無料駐車場利用
2020年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/4/19更新)
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