バレンシアの小アルハンブラ宮殿「アンナのセルベヨン侯爵宮殿」

バレンシアの小アルハンブラ宮殿「アンナのセルベヨン侯爵宮殿」

更新日:2020/09/09 10:02

小林 理沙のプロフィール写真 小林 理沙 日本語教師、翻訳家
スペイン・バレンシア県の小さな街アンナにイスラム様式のエキゾチックな宮殿「アンナのセルベヨン侯爵宮殿」があり「バレンシアの小アルハンブラ宮殿」と呼ばれています。アンナは女性の名前のように聞こえますが「水源」という意味を持ち、その名の示す通り水に恵まれたところです。幾何学模様のタイルも魅力的なイスラム様式の宮殿を見にアンナに行ってみませんか。バレンシア市やハティバ市から日帰り旅行も可能ですよ。

静かなアンナの街に佇む宮殿

静かなアンナの街に佇む宮殿

写真:小林 理沙

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セルベヨン侯爵宮殿(Palacio de los Condes de Cervellon de Anna)が位置するアンナ(Anna)はスペイン・バレンシア市から65km離れた、人口3000人足らずの静かな街。小さな街にこの宝石のような文化財があるのもスペインの魅力の一つといえるでしょう。

現在の宮殿は17世紀にセルベヨン侯爵により再建されたものですが、建物正面のネオクラシカル様式のファサード部分は以前の趣を残しています。

静かなアンナの街に佇む宮殿

写真:小林 理沙

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アンナの宮殿の門にはセルベヨン侯爵家の紋章が見られます。現在の宮殿は17世紀にセルベヨン侯爵の邸宅として修復されたものですが、この宮殿が初めて文献に登場するのは1244年です。長い歴史を持つ宮殿ですね。

1604年にはアンナの隣街ハティバの名門ボルジア家の住まいとなります。ボルジア家はローマ教皇を2人輩出しただけでなく、惣領冬実さんの歴史漫画『チェーザレ 破壊の創造者』の主人公チェーザレもボルジア家出身として名高い人物。

幾人かの城主が代わりゆくのを見届けてきた長い歴史を持つ宮殿ですが、現在はアンナの町の所有となっています。現在も宮殿の名称に残るセルベヨン侯爵はバレンシア市にも宮殿を持ち、その宮殿は初のスペイン憲法「ラ・ペパ 」が破棄された舞台でもあります。

水の音に静かに耳を傾けたいパティオ(中庭)の噴水

水の音に静かに耳を傾けたいパティオ(中庭)の噴水

写真:小林 理沙

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パティオ(中庭)の中心には清々しさを感じさせる奥行きのある噴水。スペインではグラナダ市の世界遺産「アルハンブラ宮殿」の離宮ヘネラリフェの中庭中央にもこの細長いタイプの噴水があります。

一度見たら忘れられない美しさに、これまでもその噴水の虜になった人数知れず。カタルーニャ州の芸術家サルバドール・ダリのお屋敷やマドリードの画家ソロヤ美術館でもアルハンブラ宮殿離宮の噴水にインスピレーションを受けた噴水が見られます。

アンナの噴水には正方形を重ねたルブ・エル・ヒズブと呼ばれる八芒星が見られます。この星はイスラムのシンボルの1つです。アンナの中庭もバレンシアの小アルハンブラ宮殿と呼ばれるだけのことはあってとてもエキゾチックな美しさ。

水の音に静かに耳を傾けたいパティオ(中庭)の噴水

写真:小林 理沙

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パティオの噴水の突き当たりの壁には細かな幾何学模様のモザイク画のタイルが見られます。色遣いを取っても形状を取っても、実に芸術的で幻想的なアラビアンナイトの世界。

水の音に静かに耳を傾けたいパティオ(中庭)の噴水

写真:小林 理沙

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噴水の水が流れている時は、両端から弧を描くように水が出ます。水が水面に落ちるときも静かで心地よい音を立てます。噴水の水の音と緑が落ち着く庭園。噴水の中には青いピカピカのタイルが敷かれ、光を反射し水がキラキラ輝きます。

空間を贅沢に使った客間

空間を贅沢に使った客間

写真:小林 理沙

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パティオから応接間に行く際に通る大広間。アーチの柱も大きな照明器具も実にエキゾチック!大広間の窓からはお屋敷の裏にある緑豊かな森も展望できます。

空間を贅沢に使った客間

写真:小林 理沙

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応接間の中央にも噴水があります。室内に噴水を置くのは実にイスラムらしい様式で、他ではあまり見ません。こちらの噴水もイスラムのシンボル八芒星をかたどっています。室内装飾や調度品にも一貫性があり独特の美意識を感じさせます。

他にも目を引くのが空間の使い方。噴水を部屋の中心に人が座る椅子は壁際に置かれ、家具はほとんどない贅沢な空間の使い方です。

また、幾何学模様のタイルは2010年代に専門の職人を外国から呼び寄せて作らせた本格派。

宮殿からの美しい見晴らし

宮殿からの美しい見晴らし

写真:小林 理沙

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お屋敷の上階の窓から見た中庭。美しいアーチ状の柱や噴水、宮殿裏の森も見えます。お屋敷の窓はどの場所からも心に安らぎを与えるような自然の風景が見られる構造。

宮殿からの美しい見晴らし

写真:小林 理沙

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窓から外を覗くと、そこは緑豊かな森。お屋敷の正門は住宅地に面しているため外からはこの森の存在は予想できません!

セルベヨン宮殿の見学所要時間は1時間くらいです。開放感のある中庭もありますが、宮殿内の階段や廊下はそれほど広くありません。ふと見学に疲れた時に窓に目をやると見える緑は、気持ちをリフレッシュする栄養剤です。

なお、見学は人数制限のあるグループ制で要予約。電話またはemailにてご予約ください。

イスラム様式以外の部屋も!

イスラム様式以外の部屋も!

写真:小林 理沙

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実はセルベヨン宮殿はイスラム様式のみの宮殿ではなく、西洋風の階もあります。他にもキリスト教の礼拝堂や、セルベヨン侯爵が住まわれていた時代の家財道具を展示する部屋、水に恵まれたアンナの自然についての展示などもあります。エキゾチックな宮殿を見るだけに終わらず、一昔前のスペイン人の生活やアンナの見どころも知ることができます。

アンナのセルベヨン侯爵宮殿の基本情報

住所:Plaza de Alameda, 5, 46820 Anna, Valencia, Spain
電話番号:+34-616551877
アクセス:バレンシアより車で50分(65km)、ハティバより車で18分(16km)

2020年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/08/09 訪問

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