近世の交通史・社会史の象徴〜箱根関所跡を訪ねよう

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近世の交通史・社会史の象徴〜箱根関所跡を訪ねよう

近世の交通史・社会史の象徴〜箱根関所跡を訪ねよう

更新日:2014/06/10 18:11

池口 英司のプロフィール写真 池口 英司 フリーライター、フォトグラファー 日本写真家協会(JPS)会員

芦ノ湖畔にある箱根関所跡。きっと多くの人が遠足、社会見学などで訪ねたことがあるであろうこの施設は、新たな史料の発見に基づき、2007(平成19)年に、より精緻な姿に復元されました。在りし日の関所の姿を学ぶことで、およそ300年続いた徳川幕府の姿、江戸時代の庶民の暮らしぶりが見えてきます。

2007年に詳細な姿を復元

2007年に詳細な姿を復元

写真:池口 英司

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東海道の箱根関所は、江戸時代には中仙道の碓氷関所、木曽福島関所、同じ東海道の新居関所と共に、最も重要な関所に位置づけられていたといいます。遠い昔、「大化の改新」の時代には全国への設置が始められたという関所は、当初は地域の防御を固める砦のような存在でしたが、徐々にその役割が変わり、近世には交通を管理する、現在の警察のような役割となっていました。

箱根に関所が設けられたのは、1619(元和5)年のことで、山の多い地形と湖があることを利用して、山の中腹から湖畔まで柵を建て、関所以外を通り抜けることを不可能にしていたといいます。

現在の関所跡は、1983(昭和58)年に静岡県韮山町で見つかった新たな史料に基づき、2007(平成19)年に復元されたものです。数多くの建物が整然と並ぶ姿は、まるで時代劇のセットのよう。タイムスリップ感覚を味わえます。

通り抜けるのに時間を要した、まさに関所

通り抜けるのに時間を要した、まさに関所

写真:池口 英司

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私たちが、関所と聞いてまず思い浮かべるのは、役人がずらりと並び、庶民が差し出した通行手形を吟味する情景でしょうか。実際に、チェックは厳しかったようで、関所内には女性の日本髪を解いて、髪の中に隠されたものがないかまでを調べる役割の女性がいたことまでが解説されています。

「東海道中膝栗毛」では、弥次さん・喜多さんは、問題を起こすことなく箱根関所を通過していますが、吉村昭の小説「長英逃亡」では、収監されていた小伝馬町の牢から抜け出して逃走を続ける蘭学者・高野長英が、比較的取り締まりが緩やかであった関所を選んで、逃亡の経路を決めるというくだりが描かれています。長英は牢破りをした身であり、捕まれば死罪は免れませんから当然ですが、関所を抜けるまで「生きた心地がしなかった」という、作中の長英の台詞にはリアリティがあります。

近世の交通行政の象徴的存在

近世の交通行政の象徴的存在

写真:池口 英司

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場内には、明治初期の箱根関所跡の姿を記録した写真も掲げられています。文明開花によって社会が大きな変貌を遂げた明治時代も、まだ初期の段階では江戸時代の生活様式が色濃く留められたままでした。

武力によるクーデターを恐れた江戸幕府は、主要街道であっても、必要最低限にしか道を整備することをせず、大きな貨物、つまり武器などの運搬を不可能にしていました。箱根関所が「入り鉄砲と出女」を厳しく取り締まったことも有名です。明治初期の箱根の道は、表通りであっても広くはなく、街道の整備がなされていなかったことが、写真からも解ります。

場内には茶屋も

場内には茶屋も

写真:池口 英司

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場内には「箱根歴史資料館」も併設されていて、箱根関所の近世における役割や、当時の社会情勢について、知識を深めることができます。また、写真のように、湖畔には茶屋も設けられていますので、休憩はこちらでどうぞ。お団子なども用意されています。「うっかり八兵衛」の気分を味わって下さい。

箱根の自然に触れ、長い歴史に思いを馳せよう

箱根の自然に触れ、長い歴史に思いを馳せよう

写真:池口 英司

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写真は、関所内の「遠見番所」からの眺め。急な石段を登った先にある小高い丘の上から、芦ノ湖の美しい眺めを楽しむことができます。「遠見番所」は、もちろん警備のための施設でしたが、ここに関所があった時代も、この眺めは今と変わりなかったことでしょう。

数ある歴史遺産と共に

箱根関所のある一帯には、他にも旧街道の石畳や杉並木、あるいは箱根神社など数多くの史跡があり、この地の歴史に思いを巡らせることができます。箱根を訪れたなら、ちょっと寄り道をする気分で、関所跡を訪ねてみて下さい。きっと、東海道への認識を新たにすることができるはずです。

箱根関所は、1870(明治2)年に、明治政府の施策によって廃止されました。そして、同じ年に明治政府が、日本の新しい交通機関として、新橋と横浜の間に鉄道の建設を決定したことも、象徴的なできごとです。箱根関所跡には、近世から近代へと続く、日本の歴史のエッセンスが凝縮されています。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2014/06/02 訪問

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