アルジェリア「セティフ」古代ローマ、フランス、アラブの溶けあった町

アルジェリア「セティフ」古代ローマ、フランス、アラブの溶けあった町

更新日:2020/09/10 15:51

大竹 進のプロフィール写真 大竹 進 元旅行会社勤務、元旅行専門学校講師
アルジェリア北部、標高1096mの高原にある町セティフ。紀元前古代ヌミディア人たちが築いたエリアに、ローマ帝国の退役軍人たちの町が築かれました。
7世紀後半にはイスラム帝国の支配下に入り、19世紀半ばにはフランスの植民地となったため、市内にはフランス統治時代の建物が多く残り、ここが北アフリカである事を忘れてしまいます。
今回はこの様な様々な民族や文化が混ざり合った町セティフについてご紹介致します。

フランスの香り漂う街角

フランスの香り漂う街角

写真:大竹 進

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市内にはフランス統治時代の雰囲気を残した建物が多く見られ、レース模様の綺麗なベランダは、フランスで見掛けるものとあまり変わりません。アルジェリア国旗に似た旗が掲げられていなければ、ここがアルジェリアの町だとは思えません。

フランスの香り漂う街角

写真:大竹 進

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市内にはフランスと同じ様な洒落たデザインのトラムも走っています。駅名表示がアラビア語で表示されている事で、ここがアラブの町である事に気付かされます。

フランスの香り漂う街角

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パリジャンと呼んでもおかしくない、フランスの街角で見掛けそうなお洒落な人がいるのもこの町の特徴です。

新劇場とイブン・バディス・モスク

新劇場とイブン・バディス・モスク

写真:大竹 進

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フランス統治時代に造られたアールデコ様式の新劇場。正面入り口の柱はイオニア式の柱頭で飾られ、女神がランプを掲げ、建物最上部には竪琴をかたどった彫刻が置かれています。

新劇場とイブン・バディス・モスク

写真:大竹 進

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二つの塔が美しいイブン・バディス・モスク。現在はイスラム寺院ですが、フランス統治時代は教会として使われていました。アンダルシア様式の建物で、窓は化粧漆喰の華麗な装飾が施されています。

新劇場とイブン・バディス・モスク

写真:大竹 進

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セティフの公園で民族衣装ジェラバを着て談笑する老人たち。多くの老人がこの服装をしていますが、町なかで集まっているのは男性ばかりで、女性はいません。

このフード付きの茶色のコートはアルジェリアなどマグレブ諸国で見られるもので、ちょっと「ゲゲゲの鬼太郎」に出て来るねずみ男みたいですが、スターウォーズのルーク・スカイウォーカーの衣装にも取り入れられています。

訳アリのアイン・エル・フォウアラの噴水

訳アリのアイン・エル・フォウアラの噴水

写真:大竹 進

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アイン・エル・フォウアラの噴水。一見ごく普通の噴水ですが、この噴水が造られたのには実はある理由があり、それを解決するために造られました。

訳アリのアイン・エル・フォウアラの噴水

写真:大竹 進

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この写真を見て頂くとお判りの通り、この噴水は元は後方にあるエル・アティク・モスクにお祈りに行く人々が身を清める水場でした。しかし夜明け前からここに人々が集まっておしゃべりをしながらお清めをしていたので、その声がうるさいと感じたフランス人が、それを抑えるために1897年にルーブル美術館から裸体の女性像を運びここに置きました。

肌を露出する事や偶像崇拝は厳禁のイスラムの人々にとって、裸体の彫刻などとんでもない事ですから、かなり効果があったのではないでしょうか。

訳アリのアイン・エル・フォウアラの噴水

写真:大竹 進

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この像は1997年に破壊されましたが、その後再建され現在に至っています。裸体を美と評価する西欧文化と、拒否するイスラム文化の狭間で、彼女は今も静かに佇んでいます。

セティフの市場

セティフの市場

写真:大竹 進

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これはセティフの市場の入口ですが、あまり市場らしくない雰囲気の建物の中に市場があります。

セティフの市場

写真:大竹 進

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市場に一歩入ると、通路には少し前に撮殺されたばかりの羊の頭が無造作に置かれ、その横の肉屋さんは解体の真っ最中、市場の他の場所ではその羊の皮をなめしているという、日本では見られない光景に出くわし驚かされます。

セティフの市場

写真:大竹 進

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市場には肉屋の他、魚屋、八百屋、果物屋など様々な食料品を扱っていますが、アラブ世界で家の外の仕事をするのは男性の役目なので、売っている人は全て男性です。

セティフ国立考古学博物館

セティフ国立考古学博物館

写真:大竹 進

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セティフ国立考古学博物館です。先史時代からの発掘品やヌミディア王国、ローマ帝国のコインなど、多様な品々が展示されていますが、中でもローマ帝国時代のモザイクは見事です。モザイクは神話や当時の生活風景を描いたものが多く見られます。

これらのモザイクは当時の豪邸の床を飾っていたもので、多くの博物館では壁に展示されていますが、ここでは当時と同じ形で見る事が出来ます。豪邸に招かれた来訪者はその見事なモザイクの床を歩みながら、宴席へと向かって行った事でしょう。

セティフ国立考古学博物館

写真:大竹 進

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これはディオニソス(バッカス)の凱旋の場面を描いたモザイクです。ディオニソスがインドへ遠征して勝利し、凱旋している様子で、ベンガルタイガーに車を引かせ、勝利の女神ヴィクトリーがディオニソスの頭に冠を載せようとしているところですが、一見すると絵画の様に繊細で、とてもモザイクとは思えない程の見事な出来栄えに感心します。

セティフ国立考古学博物館

写真:大竹 進

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このモザイクはライオンと戦うケンタウロス(半人半馬)ですが、実に細かく鮮やかに描かれています。現代のもっと粗いサイズのモザイクでも1日に20cm四方程度しか出来ないと言われますから、この細かなモザイクは果たしてどの位の時間と労力を掛けて制作されたのかと思います。

他にもヴィーナスやゾウ、ラクダ、ライオン、キリンなど多くの動物も描かれていますが、ローマのモザイクでキリンが表されているのは、このセティフにあるものが唯一のものです。

紀元前に古代ヌミディア人が築き、その後ローマ帝国、ビザンチン、オスマントルコ、そしてフランスと多くの国々や民族の支配を受け、それぞれの文化の影響が溶け合った町セティフ。ローマ帝国時代の素晴らしいモザイクが残り、フランスとアラブの香りが混ざり合って漂うエキゾチックな町セティフにあなたも訪れてみては如何でしょうか。

セティフの基本情報

所在地:アルジェの東200km
アクセス:アルジェから車で3時間半

2020年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/03/09 訪問

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