写真:浅井 みら野
地図を見るポーラ美術館があるのは箱根のなかでも仙石原といわれるエリア。箱根湯本の北西に位置し、高原リゾート地として美術館が充実している一方、秋には一面が黄金色に輝くすすき草原や1,700種の植物が見られる箱根湿生花園が広がっています。
ポーラ美術館は「箱根の自然と美術の共生」というコンセプトが示すように、周囲は緑豊かな森林に囲まれ、建物自体もその景色に溶け込むよう木々の高さにあわせて建設されました。
写真:浅井 みら野
地図を見るモネ、ピカソなど西洋絵画を中心に所蔵する作品数は約1万点を誇り、絵画だけでなく化粧道具も展示されているのは、所蔵品の多くがポーラ化粧品で知られるポーラ創業家2代目が個人で収集したものによる由縁。
作品が美しく展示されるよう「7月のパリの夕暮れ」という絶妙な光加減を光ファイバーによって再現しているため、建物の多くが地下に配されていながらも開放感があります。
写真:浅井 みら野
地図を見る「モネとマティス−もうひとつの楽園」展は、クロード・モネとアンリ・マティスのふたりが、どのように自身にとっての楽園を創り上げ、それをどう作品の制作につなげていったのかを章仕立てで展開していきます。最初の部屋では、この企画展に関する映像が流れ、モネとマティスを知らない人でも作品を鑑賞する前に概要を把握できます。
次の部屋では、モネが近代化するパリを離れ、楽園を求めるようにフランスを周遊して描いた作品が並びます。青磁色に塗られた壁が、作品の穏やかさをより引き立たせますが、次のマティスの部屋では視界が一転し、壁がワインレッド色に。イスラム美術に影響を受けたマティスが描く、異国風の装束を着た女性の作品などが展示され、エキゾチックな空間となっています。この時点ではモネ、マティスともに楽園は模索中のようです。
提供元:ポーラ美術館
地図を見るそして、次のモネの部屋、マティスの部屋ではそれぞれが築き上げた楽園に関する作品が並びます。モネはパリから70km離れたジヴェルニーの村に定住し、自ら庭造りに専念します。植物を育て、池や橋を作り、自らが理想とする空間に身を置き、作品を描き続けていくのです。
写真:クロード・モネ 《ジヴェルニーの積みわら》 1884年 油彩/カンヴァス ポーラ美術館
提供元:鹿児島市立美術館
地図を見るマティスも南仏のニースを拠点に活動します。「私が一番ひかれるのは静物でも風景でもなくて、人物像である」という言葉の通り、人物画を多く描くなかで、モデルに特定のポーズを指示したり、お気に入りのテキスタイルを壁や床に敷き詰めたりと、自らが描きたくなる空間を演出し、創り上げていきます。
「楽園」とは何も砂漠のオアシスや輝かしいビーチを示すのではなく、手が届く範囲の世界に存在するんだ、とそんな言葉が交互に登場するモネとマティス2名の作品から聞こえてきそうです。また企画展のタイトルも「モネ・マティスの楽園」や「巨匠が創り上げた楽園」ではなく、「もうひとつの楽園」としたことで、楽園はひとつだけじゃなく、たくさんあって良いものと教えてくれます。
写真:アンリ・マティス 《窓辺の婦人》1919年 油彩/カンヴァス 鹿児島市立美術館
提供元:(C)Ken KATO
地図を見る企画展はいよいよ、珠玉の作品が待つクライマックスへ。2020年はモネの生誕180周年を記念し、「睡蓮」の連作が展示されています。その数は圧巻の約8点。パリのオランジュリー美術館を模した楕円型の空間にすることで、睡蓮に包み込まれているような感覚です。
モネは晩年になると視力を失い、その状態が絵にも反映されます。同じ睡蓮という題材でも、緻密な描写から一転、大胆な色の渦へと変わる流れは、ひとりの画家として最後まで楽園を描き続ける意気込みが伝わってきます。
写真:「モネとマティス−もうひとつの楽園」展 《睡蓮の間》 展示風景 (C)Ken KATO
提供元:(C)Ken KATO
地図を見る睡蓮の規模に負けないほど、マティスの集大成にも圧倒されます。重い病を患ったマティスは自由に歩けないほどの状態でありながらも、はさみで色紙を切り抜く切り紙絵で、芸術活動を続けます。高さ160cm・幅355cmを超すシルクスクリーンの作品「オセアニア」には、マティスがデザインした空と海の生きものや植物がのびやかに配され、たおやかな作品となっています。
写真:アンリ・マティス 《オセアニア 空および海》 展示風景(C)Ken KATO
最後の部屋では、ポーラ美術館が所蔵するコレクションの中でも有名なマティス作「リュート」の油彩画・タペストリー・モデルが着用したドレスが勢揃い。ドレスがフランスから届いたことで実現した、今回の試み。絵と実物を見比べるという貴重な体験ができます。
またタペストリー復興の一環として制作された「リュートを持つ女性」。高さ170cm・幅213cmの作品が悠々と壁に掲げられています。タペストリーと油彩画を見比べると床の模様もそれぞれ違うので、ぜひ見比べてみてください。
写真:アンリ・マティス 《リュート》 1943年 油彩/カンヴァス ポーラ美術館
写真:浅井 みら野
地図を見る「モネとマティス−もうひとつの楽園」では、作品を撮影することはできませんが、この企画展にぴったりな撮影ポイントを2か所に設置。ひとつはモネが情熱を注いだ庭園。満開のバラが背景を綾なし、さらに奥にはモネも静かに佇んでいます。
写真:浅井 みら野
地図を見る2か所目は、マティスの部屋。正面を真っすぐ見据えたマティスの強い視線からは威厳が感じられます。
両方の撮影スポットでは、ワイドに写真を撮ると、それぞれの楽園にお邪魔しているような旅気分が伝わる写真が撮れます。また、マティスの撮影ポイントでは撮り方次第で巨匠と2ショットというファンにはたまらない出来上がりに。
写真:浅井 みら野
地図を見るモネとマティスの作品、約90点が展示されている今回の企画展。実は半数以上が海外と国内から借用したもの。コロナ禍で運送が制限されたり、休館を余儀なくされた時期があったりしたにも関わらず、実現させたことからポーラ美術館の展示会に対する意気込みが感じられます。
その熱い取り組みは、ショップやレストランでも。モネが表現した優美な色合いでデザインされたTシャツは、ショップの人気商品。キャラクターさながらに加工されたモネの似顔絵にも注目です。
写真:浅井 みら野
地図を見るマティス関連のグッズでは、岩手県大槌町のお母さんたちがマティスの切り紙絵に刺し子を施したものがあります。こちらは東日本大震災で被害を受けた大槌町を刺し子を通して、たくましい町にしていきたいという想いから始まったプロジェクトの一環です。
提供元:ポーラ美術館
地図を見るそして、美術館に併設しているレストラン「アレイ」では、「楽園のハーモニー」という企画展ならではの特別コースメニューをいただけます。モネが描いたジヴェルニーの積みわらをイメージしたオードブルや、マティスが暮らしたプロヴァンス風のメインディッシュなど、ふたりの作品を彷彿させるカラフルなメニューです。
楽園をひた向きに創り上げたモネとマティス。マティスは絵画だけでなく、多岐にわたる芸術作品を生み出しますが、切り紙絵を始めたきっかけはとても些細なものでした。実は、部屋の壁のシミを何かで隠そうと思い、そこで紙を切って貼ったのです。大きな成果とは、意外と小さなきっかけが発端なのかもしれません。ぜひ訪れた際は、この展覧会をきっかけに自分の大切なもの・楽園について想いをはせてみてはいかがでしょうか。
2020年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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