長宗我部氏は鎌倉時代に土佐国の長岡郡に定住した豪族で、15世紀に岡豊城を築いて居城としました。当初の長宗我部氏は土佐七雄と呼ばれる有力国人の中では力が弱く、元親の父親である国親(くにちか)は幼少期に親を殺され岡豊城を追われています。その後の永正15年(1518年)に岡豊城を奪還し、国親の跡を継いだ元親はこの城を拠点に土佐を平定、そして天正13年(1585年)に四国統一を成し遂げました。
四国の覇者として武名を馳せた元親でしたが、既により強大な力を我が物としていた羽柴(豊臣)秀吉には敵わず降伏、土佐一国に封じられます。その後、天正19年(1591年)に浦戸城を築いて居城を移したことで、岡豊城は廃城となりました。
近世に再利用されることのなかった岡豊城は中世山城の遺構が保存されており、四国における戦国期城郭の代表例として位置付けられています。その縄張(城の設計)は標高97mの岡豊山頂に位置する「詰(つめ)」を中心に、「二ノ段」「三ノ段」「四ノ段」などの曲輪(くるわ、城の区画)を連郭式に配しています。
現在、岡豊山の中腹には高知県立歴史民俗資料館が建っていますので、ここを散策の拠点とするのが良いでしょう。資料館からの階段を上ると「二ノ段」に出ることができますが、まずは駐車場の奥から伸びる散策路をたどって「四ノ段」から上がることをおすすめします。四の段には折れを持たせて防御性を高めた食い違いの「虎口(曲輪の入口)」が設けられており、城の中心部へと足を踏み入れる気分を盛り上げてくれるでしょう。
「四ノ段」の虎口から上がった「三ノ段」には、曲輪を縁取るように石積が連なっています。これは土塁(土で築いた城壁)の内側に割石を1mほど積んで補強したもので、特に北半分は良好な状態で残っており目を見張ります。
石積の内側には柱を立てるための礎石が等間隔に据えられており、かつては三ノ段の平場をギリギリまで利用して建物が築かれていました。ここからは鉄鍋や石臼などの道具が出土しており、生活が営まれていた建物であることが分かります。
また建物跡の南側には岩盤を削り石を積んで築かれた階段が残っており、ここから山頂の「詰」へと登ることができました。
岡豊城の主郭(本丸)にあたる「詰」は、1辺約40mの三角形状の平場です。国分川を見下ろす南側には規模の大きな建物の礎石が残っており、特にその南端には割石を敷き詰めた「石敷遺構」が16mもの長さに渡って続いています。これはより強固な建物の基礎として築かれたもので、城の外側に面した南側は土壁など頑丈な外壁を備えていたことが分かります。
最も目立つ位置に建てられており、礎石や石敷遺構から建物の規模を考えると、近世城郭における天守のような重層の建造物だったのではないかと推測されています。往時はさぞ立派な建物がそびえており、城下に長宗我部氏の権威を誇示していたことでしょう。
詰から一段下がった「詰下段」にも土塁と礎石が残っています。「三ノ段」と同様に平場をギリギリまで利用して築かれており、詰への出入口を守る役目があったと考えられています。
詰の東側に続く「二ノ段」からは建物の跡が発見されていませんが、瓦や土師質土器、陶磁器など数多くの遺物が発掘されています。土塁に囲まれた広い空間となっており、兵溜まりの役目を担う曲輪であったと推測されます。
ここで注目して頂きたいのは、二ノ段と詰の間を断ち切っている「堀切」です。敵の侵入を防ぐため尾根を横堀で分断しており、その幅は3〜4m、深さは2m前後もあります。
また堀切の内部には方形の「井戸」が存在します。岩盤を3.6mほど掘り込んだもので、井戸とはいっても底が岩盤なので湧き水はなく、雨水を溜めていたと考えられています。
岡豊城の中心部から少し離れた西側には「伝厩跡(でんうまやあと)曲輪」が残っています。西側からの攻撃に備える出城として重要な役目を担っていたと考えられる曲輪ですので、時間に余裕があれば足を伸ばしてみてください。
伝厩跡曲輪には高知市方面を一望できる展望台が設置されており、また坂本龍馬の伝記小説『汗血千里駒』で名を轟かせた坂崎紫瀾(さかざきしらん)が明治28年(1895年)に建立した「岡豊公園征清凱旋碑」も存在します。
このように、岡豊城は主要な曲輪に土塁や横堀を巡らしており、また斜面には侵入者の横移動を防ぐための竪堀が幾筋も残っているなど、岡豊山の全域を利用した非常に堅固な作りとなっています。まさに四国の覇者・長宗我部元親の居城として相応しい威容を誇っていたことでしょう。
住所:高知県南国市岡豊町1099-1
電話番号:088-862-2211(高知県立歴史民俗資料館)
アクセス:高知駅バスターミナルからとさでん交通バス「南国オフィスパーク、領石、田井方面」行きで約30分「学校分岐」バス停下車、徒歩約15分
2020年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
木村 岳人
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