能登の至宝ここにアリ!石川・能登で行くべき名刹「妙成寺」

能登の至宝ここにアリ!石川・能登で行くべき名刹「妙成寺」

更新日:2020/11/24 14:46

藤井 麻未のプロフィール写真 藤井 麻未 元秘境系海外旅行添乗員
日本海の潮風をほのかに感じる能登半島・羽咋(はくい)の里。田園が点在する松林の中に美しい五重塔を覗かせるのが、北陸における日蓮宗唯一の本山「金栄山 妙成寺(みょうじょうじ)」だ。驚くべきは境内に並ぶ国指定重要文化財の多さと建築的価値の高さ。それはさながら能登の至宝と言って良い。今回は、見る者を圧倒する重厚感、雄渾華麗な建築美を存分に味わえる妙成寺の魅力に迫ってみよう。

妙成寺とは

妙成寺とは

写真:藤井 麻未

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妙成寺が位置するのは日本海に突き出した能登半島の付け根部分。金沢からアクセスする場合は日本海の外浦に面して海岸線が続く「千里浜なぎさドライブウェイ」を走るのもオススメだ。まずは、遠方より五重塔の美しいシルエットを眺めつつ山内へと入ってみよう。

妙成寺とは

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妙成寺は日蓮聖人の孫弟子、日像聖人(にちぞうしょうにん)により建立された。その歴史は700余年にも及び、現在見られる建物は加賀前田家初代から5代に渡って造営されたものだ。創建以来火災などで焼失したものは無く、全ての建物が現存する。前田利常公の生母寿福院(じゅふくいん)の墓所があることでも知られ、加賀百万石前田家ゆかりの寺院としてトップクラスの威容を誇る。

魅力はその古さにアリ!

魅力はその古さにアリ!

写真:藤井 麻未

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境内に入って右手奥に位置する庫裏(くり)は妙成寺の中では最古の建築物(国指定重要文化財)。前田家以前の当地大工の手によるもので、長押、鴨居、地下倉庫など、その技法や間取りは建築上極めて古式で地方色豊かである。僧侶の居室として今でも現役だというのだから驚きだ。

魅力はその古さにアリ!

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正面にどっしりとそびえるのは境内を守護する二王門(国指定重要文化財)。約400年もの時を刻む楼門は、ところどころ色褪せ朽ちかけているにも関わらず、今なお当時の壮麗さを失っていない。その厳格な姿、圧倒的な存在感は、訪れた者を荘厳な思いにさせる。

両脇の透連子(すかしれんじ)窓には阿形・吽形の仁王像が安置されているが、正面を向くのではなく2体が向かい合うように配置されている例は珍しい。古びた石段を上っていよいよ楼門を潜る際、ひっそりと佇む仁王像に挟まれて思わずドキッとしてしまう。

魅力はその古さにアリ!

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二王門と並ぶようにして建っているのは、同時期に建立された鐘楼(国指定重要文化財)だ。下部は袴腰(はかまごし)と呼ばれる板囲いで覆われる。袴腰とは、その名の通りまるで袴を履いたように下に向かって広がる装飾で、これが無いものと比べると一段と優美な印象を受ける。純和様の入母屋屋根と見事に調和して、簡素でありながらも美しい伝統建築の粋を見てとることができる。

圧巻の五重塔へ

圧巻の五重塔へ

写真:藤井 麻未

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二王門を潜ると目の前に聳え立つのは、高さ34.18メートル、妙成寺の象徴ともいうべき五重塔(国指定重要文化財)だ。約400年もの間風雪に耐え抜いた木造大塔には凄みさえ感じられ、目の前に立てばその迫力に言葉を失うこと間違いない。

圧巻の五重塔へ

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五重塔を下から見上げれば、全国唯一とされる栩葺き(とちぶき)の屋根と、屋根を支える複雑な三手先組物とが重層的に重なり合い、その計算された美しさ、精緻さに思わず唸ってしまう。木造五重塔としては北陸唯一とされ、建材には能登地方を中心に分布するアテの木(ヒノキアスナロ)を用いているのも特徴だ。

圧巻の五重塔へ

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五重塔に向かって右手に並ぶのが、御本尊である釈迦牟尼仏などを祀り礼拝の中心となる本堂(国指定重要文化財)、そして宗祖日蓮聖人、開山日像聖人などを祀る祖師堂(国指定重要文化財)だ。

壁面や屋根は時の経過による風化を免れないものの、それすらもひとつの魅力と感じさせられる。特に、中国由来の唐様をもとに桃山建築の華やかさを伝える天女の彩色彫刻や、屋根のユニークな破風装飾、巧妙な組物などには一見の価値がある。

鬱蒼とした最奥部へ

鬱蒼とした最奥部へ

写真:藤井 麻未

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本堂の奥には、内部に日本の国神30体が祀られる三十番神堂(国指定重要文化財)が。神像を祀るため、この建物のみ神社形式をとっている。周囲にはよく手入れされた苔の絨毯が広がり、均整のとれた神社建築が苔むす緑の風景と調和する様は、日本人の感性に訴えかける。

鬱蒼とした最奥部へ

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これより更に奥へ進むと、静けさに包まれた墓所を通って丈六堂(石川県指定文化財)へと至る。両脇には墓石が並び、木々が生い茂る鬱蒼とした最奥部だが、密林の間に覗く丈六堂の姿は古色蒼然としていて趣深い。

鬱蒼とした最奥部へ

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入母屋造杮葺き(こけらぶき)の丈六堂内部には、高さ約5メートル(1丈6尺)もの釈迦牟尼仏像が堂々たる姿で立っている。両脇に四天王のうち2体を従えた釈迦牟尼仏立像はどっしりとおおらかで、自然と手を合わせたくなる。

非常に見応えがある妙成寺。石段やアップダウンもあるため、境内をじっくり周り終えた頃には少し休憩したくなるに違いない。受付の手前、駐車場に面して並ぶ休憩処で一息つくと良いだろう。珈琲をはじめ甘酒やぜんざい、あめ湯などはどれも優しい地元の味。特に、羽咋の山間で営業する自家焙煎珈琲店「神音カフェ」から取り寄せる珈琲はコクと深みのある逸品だ。レトロな店内で、境内散策の余韻を味わってみては。

ランチには石臼手挽き「そば処浄楽」がオススメ

ランチには石臼手挽き「そば処浄楽」がオススメ

写真:藤井 麻未

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ランチをするなら、妙成寺から徒歩すぐの場所にある「そば処 浄楽」がオススメだ。古民家風の店舗はオーナーである森田夫妻の自宅。ガラリと戸を開けると、玄関の上がり框には畑仕事で使っていたという農具や季節の花々がお洒落にディスプレイされている。更にガラスの引き戸を開けると、畳敷きの店内は囲炉裏が置かれた居心地の良い空間。まるで田舎のおばあちゃん家に遊びにきたかのような趣に、おもわず心が緩んでしまう。

ランチには石臼手挽き「そば処浄楽」がオススメ

写真:藤井 麻未

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森田さんは蕎麦の石臼手挽きを始めて22年。福井県大野より取り寄せた在来種の蕎麦の実を、毎日殻ごと手挽きしている。石臼による粗挽きのため、弾力のある麺には蕎麦本来の芳ばしい香りと僅かな粒感が感じられ、その豊かな食感と味わいには驚かされる。

ランチには石臼手挽き「そば処浄楽」がオススメ

写真:藤井 麻未

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地元の野菜類をカラッと揚げたかき揚げ、むっちりとした蕎麦豆腐、蕎麦の実と一緒に炊きあげた自家栽培のコシヒカリなどがセットになった「浄楽蕎麦づくしランチ」がイチオシ。特に、能登塩を付けて食べるデザートの蕎麦ようかんはここでしか味わえない。抹茶と2層になった、さっぱりとした甘さのようかんには、まろみのある能登塩がよく合っている。

<そば処浄楽の基本情報>
住所:石川県羽咋市滝谷町ロ51
電話番号:0767-27-1433
営業時間:11:30〜15:00(蕎麦がなくなり次第終了)
定休日:水曜日(他不定休あり)
※2020年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

さて、石川県・能登半島の日蓮宗寺院「妙成寺」はいかがだっただろうか。建築的価値を認められた重要文化財の数は上記以外に三光堂、経堂、書院を含めるとなんと10棟。これほど文化財の多い寺院は珍しく、まさに至宝づくしの名刹だ。加賀百万石前田家ゆかりの寺院として歴史的価値も高く、なにより朽ちかけ風化しつつある木造建築群が不思議とその輝きを失っていないことに驚きを隠せない。新緑や紅葉、雪景色など季節ごとに魅力も変化する。春夏秋冬日本人の心に響く名刹へ、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

妙成寺の基本情報

住所:石川県羽咋市滝谷町ヨ−1 妙成寺
電話番号:0767-27-1226
拝観時間:年中無休
・4月〜10月 8時00分〜17時00分
・11月〜3月 8時00分〜16時30分

2020年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/11/06 訪問

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