京都一条・路地裏歩きで探し当てる極上の時

京都一条・路地裏歩きで探し当てる極上の時

更新日:2014/06/24 14:15

一条戻橋から西陣織会館を経て北野天満宮までの今出川通を縫う町並みは、大通りを避けてのんびり路地裏歩きをするのにもってこいのところ。観光都市京都を内側から見つめ直す旅は、あなたにとってきっと一服の清涼剤となるでしょう。

京都町中の異界・一条戻橋

京都町中の異界・一条戻橋
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堀川通りに沿って南北に流れる堀川は、近世までは京都でも鴨川に匹敵する大川でした。
その昔、堀川にかかる一条戻橋は、渡辺綱が妖艶な女性に変化した鬼の腕を切り落としたところ。江戸時代には、この橋のたもとに柳風呂やさくら風呂、常盤風呂といった娼家もありました。

羽織着て綱も聞く夜や河千鳥  蕪村

池大雅、伊藤若冲、円山応挙と並ぶ当代きっての絵師にして俳諧師の蕪村は、渡辺綱に因んだ源氏名をもつ柳風呂の娼伎・綱に恋して小舟に乗って通い詰めたと言います。河千鳥が夜通し群れ鳴く往時の川辺の風情はありませんが、むくの巨樹や青柳のなびく橋のたもとに佇むと、たちまち江戸時代にタイムスリップする土地独特のオーラを今も保っています。
写真は堀川第一橋より戻橋を遠望したもの。

一条戻橋 
上京区堀川通一条下ル東側
JR京都駅からは9系統のバスに乗り一条戻橋・清明神社前で下車

陰陽師グッズで有名な清明神社

陰陽師グッズで有名な清明神社
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一条戻橋といえば、近年では、渡辺綱よりも式神(陰陽師に従って神技を行う聖霊)を駆使して数々の秘術を行う陰陽師・安倍清明のほうが有名でしょう。その土御門家の祖とされる安倍清明を祀った神社は、この橋の50mほど北の堀川通りに面していて、鳥居が見えるのですぐ分かります。
熱狂的なブームは去ったとはいえ、今でも桔梗紋の神社の境内には、お参りしてまず、陰陽師グッズを買い求める若い男女の姿が絶えません。境内の桔梗屋さんという土産物店の女主人は、生粋の京都っ子。京都に関することなら何でも親切に教えてくれます。

西陣織会館から北野天満宮までの路地裏めぐり

西陣織会館から北野天満宮までの路地裏めぐり
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町家の旅のはじまりは、清明神社すぐ北の西陣織会館。入場無料ですので時間のゆるす限りゆっくりと過ごしましょう。
西陣織ショップにはじまり絹織工房でのさまざまな織物体験、歴史資料展示、きものショーなど、絢爛豪華な西陣織のすべてを愉しめます。
さて、ここからは今出川通を西へ取れば自然と北野天満宮の門前に出ますので、車の往来の激しい大通りを避けてその脇の小路を縫いながら、観光客の稀な京都本来の町家風情を存分に楽しみましょう。

どの小路をとるにしても、地元では西陣聖天さんと呼ばれ愛されている雨宝院を途中に入れて路地歩きをプランしましょう。
軒先の釣忍や鉢植えの花を辿り路地から路地へと歩いて行くと、突然本隆寺の瓦を埋め込んだ古式豊かな土塀の連なる細道に出会います。この本隆寺の北隣が雨宝院。ごく狭い境内には弘法大師が刻んだと言われる大聖歓喜天像はじめ、観音堂の千手観音像、大師堂の阿吽汗かき弘法大師像などが安置されるお堂がピタリと収められています。また、歓喜桜で知られる八重桜、久邇宮朝彦親王がにわか雨をしのいだという時雨の松が配され、京洛の人達の粋が感じられるとともに、清閑さで満ち満ちています。

京町家の建物内部でくつろぎながら極上アートを鑑賞

京町家の建物内部でくつろぎながら極上アートを鑑賞
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雨宝院から千本通りを横切り、六軒町通に差し掛かったところには、昭和初期の西陣・京町家の情趣を可能な限り残して改修、靴を脱ぎ畳にあがって作品が鑑賞できる町家画廊SELF-SO GALLERYがあります。
丁度、ミズタニカエコさんのペン画作品展『黒の孤独』が開催中で、モノクロ細密画の作品が町家の雰囲気と響き合い、とりすました個展というより自宅でくつろぎながらコレクションを鑑賞といった感じがたまりません。
写真は、SELF-SO ART GALLERY階上。裏庭からの外光に浮かびあがるモノクロ作品たち。

豆腐・ゆば料理のとようけ茶屋

豆腐・ゆば料理のとようけ茶屋
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方々寄り道をしたあとは、北野天満宮鳥居前の「とようけ茶屋」をのぞきましょう。いつも行列が絶えない店ですが、天満宮にお参りするなど、少し時間をずらせば滑り込めます。メニューには盛りだくさんのごちそうが並んでいますが、ここでの一押しは生ゆば丼です。
たっぷりゆばのあんかけ丼で、お吸い物、すくい豆腐、小鉢、お漬物がついて860円(税別)。
舌のよろこびをすませたら、西へ徒歩5分ほどのところにある北野白梅町駅から京都方面へもどることができます。

おわりに

京都の町はどこへいっても隙がなく、いささか息苦しい感じさえしますが、今回おすすめする町家探訪は、そうしたわざとらしさがいささかも感じられない隙間だらけの京都がたのしめます。
名所旧跡の点と点をつなぐあわただしい観光の旅にはない、ゆったりとした時間そのものを愉しみたいと考える人には、このさりげない町の風情を味わう旅こそがおすすめです。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/06/14 訪問

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