写真:スズキ ミズエ
地図を見るグアテマラ北部には多くの先住民族の村があり、その一つにキチェ族の村「チチカステナンゴ」があります。場所はグアテマラ最大の湖、アティトラン湖があるパナハチェルから38キロと日帰りでも可能な距離。
チチカステナンゴはスペイン軍が征服する以前はマヤ時代から神聖な村として発展していました。今は静かな田舎町ですが、村にある4つの聖地「サントトーマス教会」「パスカル・アバフ」「カルバリオ教会」「墓地」では、今でも儀式が行われ大切に守られています。
写真はパスカル・アバフ。
写真:スズキ ミズエ
地図を見る祭りが行われるサントトーマス教会には、元々神様を祀る神殿が建てられ、当時から聖地として崇められていました。その後スペイン軍はその神殿を完全に破壊しようと試みましたが、土台だけは破壊することがでませんでした。教会はその土台の上に建てられたのです。
18段の階段でできている土台は、マヤ暦の1年を表しているとされています。彼らにとってこの土台は単なる教会への階段ではなく、スペイン軍でも破壊できなかった、祖先の誇りでもあるのです。
写真:スズキ ミズエ
地図を見るカトリックに強制的に改宗させられた彼らでしたが、カトリック信者の体をしながら自分たちの信仰や風習を守り続けてきました。それは今日まで続いています。この村の守護聖人サントトーマスを盛大に祝うのもそのためです。キリストや聖人を祝うのは、つまり彼らの神様たちを祝うのと同じことなのです。
祭りではその片鱗を見ることができます。例えば、聖人が乗る神輿は彼らの生命の色である赤で塗られ、カラフルな羽と魔除けの鏡を装飾しています。パレードには縦笛と太鼓で伝統的な神に捧げる音楽で行進していきます。
写真:スズキ ミズエ
地図を見る祭りはサントトーマスの記念日である12月21日を挟んで行われますが、教会ではなくマシェニョが主体となって執り行われます。マシェニョとは昔から村の取決めなどを行う組織で、特に祭りでは大事な役割を果たします。彼らの衣装にも注目!刺繍のついた黒いジャケットに黒い半ズボン。頭には伝統の織物の布を巻いて、伝統のサンダルを履いています。彼らだけが着ることが許される特別な衣装なのです。
「サントトーマス祭」のメインパレードでは一気に村が華やぎます。サントトーマス、サンホセ、サンセバスチャンの三体の聖人がそれぞれ乗ったド派手な神輿は高さ2メートル以上。紙吹雪が舞う中、笛と太鼓の演奏、伝統衣装を身にまとったマシェニョや踊り手たち、振りまかれるお香や打ち上げ花火、そして最後は楽団。長い長い列が村を練り歩きます。
写真:スズキ ミズエ
地図を見るサントトーマス教会に面した中央広場には、普段は露天市場が並ぶのですが、祭りの日には2つの特設ステージが設けられます。祭りの期間中、途切れることなく大音量でコンサートが行われ、時には2つのステージで同時に演奏ということも。空の上にいる神様に聞こえるためなので、誰もうるさいとは思いません。しかし神様に捧げる楽曲は完全に流行りの音楽!民族衣装を着たシャイな女性たちが静かに聞いている姿は、とてもグアテマラらしい光景です。
写真:スズキ ミズエ
地図を見る「サントトーマス祭」では実は、サントトーマスの他にもう一人の主役がいます。彼の名前は“ツィホラーハ”。この村の領主で、みんなから愛され慕われていた人物でした。彼の死後その姿を模った像を作り、マシェニョたちが交代で今でも大切に保管しています。祭りの時にはみんなの前に開帳されるのです。ぱっちりお目めと赤いベレー帽に青いシャツ、首から銀貨を下げて、シンボルの白馬に乗っている姿はなんとも愛嬌のある姿です。
写真:スズキ ミズエ
地図を見るサントトーマスのパレードが終わると、今度はツィホラーハが教会の屋根から中央広場へと降りてきます。チチカステナンゴの人たちはご利益にあずかろうと像の周りに集まり、彼の鞄はすぐにお布施でいっぱに!ツィホラーハの降臨は2回行われるので、1回目を見逃しても大丈夫です。
また彼は別名“火薬氏”とも呼ばれていました。昔は火薬は裕福の象徴だったため、彼の像に括られた丸いカゴに花火をつけて、教会の階段を降りていきます。
写真:スズキ ミズエ
地図を見るマシェニョの家で保管されているツィホラーハは、他のマシェニョの家々を周って教会に向かいます。家を訪れる度に、アトルと呼ばれるトウモロコシの粉をお湯でといだものが振る舞われます。味はかなり重いお粥といった感じ。メキシコやグアテマラでは普段から朝食に飲む人も多く、チョコレート味やバナナ味などがあります。お試しあれ。
写真:スズキ ミズエ
地図を見る祭りの期間中、通りでは「仔牛の踊り」が行われています。3人の白人の王様たちと1人の黒いお面をつけた秘書と牛、そして20人以上の白人の領主たちの踊りで、最後に牛と秘書とで王様たちを殺して終わる、というもの。これは支配するスペイン人と自由を奪われた先住民の構図を描いたものでもあります。
踊りは太陽が昇るのと同時に始まり、沈むまで続けられるので、村を歩いているとどこかの通りで遭遇するはずです。重い衣装に、小さいマスク、踊っている最中は決してマスクを外すことは許されない、かなり過酷な踊りです。
写真:スズキ ミズエ
地図を見る踊りを際立たせている羽飾りの衣装は一着6,000ケツアール(約80,000円)とかなり高額。祭りの後はこの衣装を奉納し、翌年には新しいものを再び作り直します。それだけこの踊りが神聖なものであることを表しています。
写真:スズキ ミズエ
地図を見る中央広場には長さ30メートル近いポールが祭りのために立てられます。「パロ・ボラドール」とはこのポールの最上位からロープ一本で下に降りながら踊る踊りです。踊り手は先住民の神話「ポポル・ブフ」に書かれている、猿に変えられた兄弟の格好をして、おどけながら降りてきます。
有料で一般の人でも30メートルのポールから降りることは可能です。ただし男性のみ。記念にチャレンジしてみてはいかがですか?
写真:スズキ ミズエ
地図を見る夜になると広場には巨大仕掛け花火がお目見え。高さ10メートル近い櫓に仕掛けられた花火は、火の粉がかかる臨場感に溢れた花火です。飛行機やボラドールの形をした回転式の花火や、花火の中からキリストの絵が現れたりと、なかなか凝った演出。最後は漆黒の夜空に打ち上げ花火!
祭りの期間中、この花火大会は毎晩行われます。一夜にしてこの仕掛け花火は消え、また次の日朝から仕掛け花火を作るといった気合の入れよう。しかも毎日違う仕掛けを施しているので飽きません!
写真:スズキ ミズエ
地図を見る普段は静かな町ですが、祭の期間は夜遅くまでコンサートや花火で賑やか。シャイな女性たちも音楽に合わせて踊ったりと大人も子供も祭を存分に謳歌しています。
強制的にカトリックに改宗させられたチチカステナンゴの人たちは、カトリックの風習に織り交ぜて、自分たちの信仰を続けてきました。「サントトーマス祭」ではヨーロッパの祭りとは違う、先住民の風習が垣間見ることのできる祭りです。カトリックと土着宗教、過去と現代の全てが融合した祭りと言えます。是非、日帰りではなく宿泊して肌で感じてください!
2020年11月現在の情報です。最新の情報などは公式サイトなどでご確認ください。
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